青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-5 奥羽本線(秋田−青森)“ロングシート苦行”
秋田駅コンコース
 ▲木を多く使って柔らかい雰囲気の秋田駅

■4時間のロングシートはちょっと辛い


 秋田駅は1997年に秋田新幹線が開業以来、駅舎も建て替えられてずいぶん近代的になった。フル規格の新幹線ではないとはいえ、乗り換えなしで東京へ直結するというのは重要なことなのだろう。

 秋田から先、青森までは奥羽本線へ乗り換えることになる。次の列車までは1時間以上あるので、昼食は駅に直結した駅ビルの中で秋田名物のわっぱ飯ときりたんぽを食す。
 夜行と普通列車に乗りっぱなしの旅には、こういう休憩時間が必要だ。なにせ次は4時間の"ロングシート苦行"をこなさねばならない。


秋田駅に進入する青森行普通電車
 ▲青森行普通電車もまたロングシート電車
 奥羽本線下り、秋田発13時11分・青森行の普通列車を待つ乗客はすでにホームで長い列を成していた。青春18きっぷシーズンは、長距離普通列車はいつも混雑気味だ。

 列車は10分程前に入線。また紫帯のステンレス電車が3両でやってきた。車内は相変わらずのロングシート。

 ドアが開くと同時に立ち客も含めて満員となった。終着の青森までこの状態が続くとは思えないが、4時間185キロの"ロングシート苦行"はいきなり厳しい環境で始まる。

満員になった青森行電車内

 旅情のかけらもないが、18きっぷの安旅では、ここは諦めるしかない。発車直前にも次々と乗客が乗り込み、都会の満員電車並みの状態で秋田駅を出発した。

 右手に広いJR土崎工場の横を走り抜け、7分で土崎に着く。秋田港に近く、奥羽本線では海に一番近い場所だろうか。もちろん海は見えない。ここから先、奥羽本線は山の旅である。



一駅づつ青森まで全駅に停車する
 ▲青森まで38の駅に停車する
 追分で男鹿線と別れ、左手に八郎潟が見えてくる。昭和39年に日本第二位の湖を埋め立てて完成した干拓地。昨年、初めてこの巨大な土地の中に足を踏み入れたが、大地の中に延々と直線道路が続き、まるで北海道のような風景だった。

 列車はかっての湖である調整池に沿って走り、13時48分、八郎潟に到着。八郎潟干拓地の大潟村へは、1日わずか2本の村営バスしか交通手段はないが、人の手で築いた巨大な人口大地へ行って見る価値はあると思う。

 さらに走って14時20分、東能代に着く。五能線との乗り換え駅。ようやく車内も空いてきたが、座席はまだ完全に埋まっており、窮屈な状態が続く。窓も水蒸気で曇って何も見えない。外は深い雪。列車は東に方向を変え、秋田県北の山深い比内地方へと向かう。


奥羽本線沿線は雪が深い(車窓から)
 ▲雪が深い奥羽本線沿線を走る
 特急停車駅の二ツ井を過ぎ、10分ほどで鷹ノ巣に到着。角館へ抜ける秋田内陸縦貫鉄道の乗り換え駅だ。主要駅ごとに乗降が繰り返されるが、あまり乗客は減らない。

 車内を一巡すると、昨日から見た顔も多い。
 大阪弁を話す10歳くらいの男の子と父親の親子2人は、「ムーンライトえちご」からずっと一緒だ。他にも1組、父子旅行の姿を見かけた。父親と二人で鈍行列車の長い旅。
 列車に揺られ、どんな思い出を残すのだろうか。こんな二人旅が気軽にできてしまうのも18きっぷ良さかもしれない。普通列車ならどんなに遠くまで行ってもいいのだから。


大館駅に到着した青森行普通電車
 ▲大館駅に到着。27分間の停車。
 秋田−青森間の中間地点、大館には15時12分に到着。好摩・盛岡方面へ抜ける花輪線との乗換え駅。
 大館駅では27分の停車。ようやく気晴らしの時間に恵まれた。大館市は人口6万7千、秋田県最北の城下町だ。

 電車を見ると銀色のステンレスが雪で白くなっている。厳しい冬の奥羽路を走り抜いてきた勲章のような姿。ロングシートはいただけないが、車両は格好良く見える。

 身が引き締まるような寒さの中、ホームを歩いたり、駅直結のコンビニエンスストアを冷やかしているうちに発車時間となった。再び、ロングシートの座席に戻る。

相変わらず混雑気味の車内

 私も含め、鉄道マニアの習性か先頭車両には"それらしい人"が多く、非常に混雑している。他の車両には空席が目立つので、席を移す。空いていればそれなりに快適だ。

 乗客の中には長旅の退屈さを紛らわすためか、缶ビールを飲んでいる人もいる。そういえば、このロングシート車両を導入した背景には、車内での飲食を封じて清掃を省略する意図もあったという。だったらいっそのこと、海外の地下鉄のように車内飲食禁止にすればいいのにと思う。


 大館を出発した列車は、北北東に向きを変え、羽州街道を行く。国境が近いためか、山も雪も一段と深くなってきた。白ヶ倉山をトンネルで越え、陣場という小さな無人駅を過ぎる。
 いよいよ秋田と青森の県境、矢立峠だ。線路は全長3180メートルの矢立トンネルで越える。

今回はワンマンではなく車掌も乗務
 ▲この電車には車掌も乗務
 新型電車は軽快に長いトンネル走り抜け、わずか6分で津軽湯の沢に着く。駅名の通り、ここから津軽。分かりやすい駅名で良い。もちろん"湯の沢"ということで、付近には温泉もあるが、そんな気配さえ感じさせない峠の小駅。

 16時1分、碇ケ関(いかりがせき)に停車。南津軽郡碇ケ関村、人口は3千6百人。安土桃山時代に設けられた津軽三関の一つ。今は温泉地として知られているためか「村」ではあるが、特急も停車する。ここへは一度、宿泊したことがあったが、いかにも津軽の温泉といった無骨な雰囲気で、小ぢんまりとした良い温泉場である。

 右手に東北自動車道、左には国道7号線と阿闍羅(あじゃら)山、大鰐(おおわに)のスキー場を見ながら、列車は大鰐温泉駅に着く。
 弘前まで並行する私鉄・弘南鉄道のホームも見える。大鰐町は人口1万3千。ここも温泉地だが、第3セクター方式でのリゾート開発に失敗し、スキー場などの破綻で一時は話題になった。付近には小さな温泉が多いので、リゾートで差別化を図りたかったのだろうか。


青森行電車の行先表示板
 16時20分、弘前に到着。ホームには列車を待つ長い列。車内は再びあっという間に満員となった。
 人口17万7千の城下町・弘前と、人口30万弱の県庁所在地・青森を結ぶ重要区間。常に混雑気味なのも仕方ない。
 身を細めてロングシートに座ると、景色を楽しむどころではなくなってしまう。これが一番、辛い。

 列車は撫牛子(ないじょうし)、川部、浪岡、大釈迦(だいしゃか)と過ぎる。
 学生時代に津軽や北海道へ幾度も旅したためか、なにやらこの辺の駅名を聞いただけで深い津軽旅情を感じてしまう。同時に北海道へ渡る気構えのようなものも心の中に出来てくる。不思議なものだ。かってはこの付近で青函連絡線の乗船名簿を配っていたのだろうか。

雪の青森駅に到着
 ▲秋田から4時間かかって青森駅に到着
 大釈迦トンネルを越え、鶴ケ坂、津軽新城を過ぎると、いよいよ終点の青森。

 新青森を発車すると、市街地で津軽海峡線、東北本線の線路と合流。17時12分、終点の青森に到着した。激しく吹き付ける雪が迎える。冬の太陽は短く、辺りはすでに暗い。

 人の多いロングシート電車での旅は疲れる。
 そろそろお酒でも飲んで休みたいところだが、今日の宿泊地は函館。

 まだこれから津軽海峡線に揺られて青函トンネルを越えなければならない。



→次ページにつづく「津軽海峡線(青森−青函トンネル−函館)の旅」
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