青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-2 夜行快速「ムーンライトえちご」で北上(2)
新宿駅の発車案内板
■上越線を走り、夜汽車は新潟へ

 23時9分、「ムーンライトえちご」は新宿駅7番線ホームを離れる。乱雑なネオンがきらめく歌舞伎町を後に、列車は"湘南新宿ライン"を7分ほど走って池袋に停車。

 上野発の夜汽車ほどの高揚感はないが、盛り場ネオンの中を走り抜け、北へ向かうのも悪くない。東京初心者の私には、正式にはどこの線路を走っているのかは分からないが、昼間は埼京線や湘南新宿ラインの電車が通る所なのだろう。通勤電車から見たような街並みが続く。

 行き交う山手線や京浜東北線には会社帰りのビジネスマンがひしめいているが、仕事納めの日ゆえか、赤い顔をした人々が多い。

 こちらは北へ向かう夜汽車。負けずに酒を飲まなければ旅は始まらない、などと言い訳めいたことを考えながら、都内を抜ける前にお酒が底をついてしまった。


大宮駅に停車するムーンライトえちご
 ▲ 大宮駅で3分停車。次は高崎駅。

 その昔、新宿と車内で飲み過ぎてこの列車に乗ったことがあり、二日酔いの朝、新潟で見た幻想的な夜明け前の空が忘れられない。今回は幻想的な朝よりも、冬の日本海の方が待ち遠しい。静かに夜汽車の夜を過ごすことにした。

 今回のダイヤ改正(2002年12月)から停車しなくなった赤羽を列車はスピードを落として通過。23時40分、大宮に到着。3分間の停車中に首都圏最後の乗客を少し乗せ、列車は高崎線に入った。

 やっかいなもので、お酒がなくなると煙草が吸いたくなった。まだ幼い頃、父の姿を見て「この二つだけは絶対にやらない」と宣言したのは遠い過去の記憶。今や父でさえ煙草を絶ったのに、私は未だにその気が起きない。

 隣の喫煙車デッキを借りようと思ったら、まだ高校生とおぼしき茶髪の少年少女が地べたに座り込んでいた。吸殻とマクドナルドの食べ殻が散乱しており、何やら荒れた学校の校舎裏の雰囲気である。18きっぷの利用者も多彩になったものだと感じつつ、どんより曇った喫煙車両の空席で煙草をいただく。ヘビースモーカーとはいえ、このよどんだ空気の中で一夜を明かすのは御免だ。こういう身勝手な人間ゆえに禁煙車を愛用している。



車内のいたる所で見かける「警告」ステッカー
 ▲車内のいたる所で見かける「警告」
 各車両のデッキ部には「全車指定席で指定席券が必要。定期券では利用できない」との警告めいたステッカーがドアの外も含め、いたる所に張ってある。かっては帰宅のビジネスマンが間違ったり、あるいは確信犯的に指定券を持たず乗っていたことが多かったのだろう。

車内での検札風景
 ▲ 減灯後0時過ぎて来た検札
 大宮を出てしばらくすると車内が減灯された。
 0時を過ぎ、そろそろ寝ようかとリクライニングを倒したと同時に、車掌が検札にやってきた。

 何もこんな時間に来なくても、と思いつつ、都内から高崎までの乗車券を差し出し、青春18きっぷに翌日の日付を入れてもらう。この「ムーンライトえちご」の日付が変わるのは0時48分着の高崎からである。都内から高崎までの普通運賃は1900円弱。18きっぷ1枚よりは安い。

 深夜の薄暗い車内での検札には車掌も気を使ってか、寝ている乗客を素通りしている。9両編成の乗客を一人で対応するのも大変なのだろうが、指定券を持たず乗ってくるビジネスマンではないが、確信犯的に寝ている乗客も中にはいそうな気もする。やたらと「警告」が多いのは、「ムーンライトながら」のように複数の車掌を乗せる余裕がないからなのかもしれない。


深夜の高崎駅ホーム
 ▲ 高崎駅で日付が変わり21分停車

 列車は、行田、熊谷、深谷、本庄など埼玉県南部の主要都市をすべて通過し、群馬県に入る。大宮から1時間ほどで高崎に到着した。

 深夜の高崎駅では1時9分まで21分間の停車。ツンと冷たい空気のホームに降り立つ。私と同じく夜更かし気味の乗客達が自動販売機に集まってきた。列車の窓はすべて水蒸気で曇っている。少しづつ、寒い地域へ近づいていることを実感する。

 しばらくすると、向かいのホームには上野から来た本日最終の0時55分発新前橋行普通列車が到着。無人に近い状態の列車が出ると、続いて1時1分、金沢行の夜行急行「能登」が到着。日本で数少なくなった夜行の座席急行列車。赤と肌色の国鉄型ボンネット特急電車から薄明かりが漏れている。
高崎駅で夜行急行「能登」に追い抜かれる
 ▲ 高崎で夜行急行「能登」に抜かれる

 深夜の駅で夜汽車の出合い。お互い寝苦しい座席車で、寝られない乗客同士の目が合う。明日の朝、向こうは金沢、こちらは新潟。途中まで同じ上越線を走るが、こちらは快速列車。赤い特急車両の優等列車に敬意を表して道を譲る。闇夜に向かって赤いテールライトが消えていく。夜汽車急行の浪漫や憂愁を感じつつ、古い特急電車の格好良さに見惚れてしまった。

 最近、JR各社では国鉄時代の車両色に戻す傾向がある。国鉄時代末期に幼少期を過ごした私のような"ブルートレインブーム世代"を喜ばせるための戦略だとは分かっていても、単純に格好良さを感じてしまう。我々よりさらに上の世代がSLに目の色を変えるのと同じことであろう。

 1時9分「ムーンライトえちご」は高崎駅のホームを離れる。ここから先は冬の上越線。水上から清水トンネルを抜けて越後へと向かう。長いトンネルを抜けるとそこは雪国…かどうかは夢の中なので分からない。目が覚めてからの楽しみということにしよう。


長岡駅に停車中のムーンライトえちご
 ▲長岡駅到着は早朝3時39分。

■起きてすぐの2分接続は辛い…

 気がつくと列車は長岡駅に止まっていた。越後に入って初めての停車駅。3時39分から24分間の停車。寝ぼけ気味にホームに出て見ると、雨のような雪が降っており、辺りは白くもなっていない。少々、興醒めになり車内へ戻って再び浅い眠りにつく。

 列車は信越本線に入り見附、東三条、加茂に停車しながら、新潟平野を走り抜ける。
 4時43分に新津到着。平野部ゆえか列車のスピードは100km/hを超えている。

 さらに10分少々高速で走って終着駅の新潟駅に到着した。
 ここで夜行快速の旅はあっけなく終る。

 新潟はまだ朝の4時56分。これまでならば、この先も羽越本線の村上まで乗り入れていたため、多少、ゆっくりも寝ていられた。
 今回のダイヤ改正から下り列車のみ新潟止まりになってしまった。何の理由かは分からないが、朝早くに叩き起こされるのは辛い。


新設された村上行の快速列車
 ▲新設の村上行快速列車は2分接続

 すぐ隣のホームでは4両編成の白と緑色の電車が待ち構えている。4時56分発、村上行の快速列車。
 「ムーンライトえちご」が新潟で打ち切りになったため、今回の改正から新設された列車だ。

 車内は窓に背を向けて座るロングシート。朝早くからこれではたまらない。9両編成から4両編成に減ったが、多くは新潟で下車したのだろう。全員が上手い具合に座れた。

 発車の時刻になっても列車は一向に動く様子はなく、乗客が次々とドアに走り込んでくる。

 どうやら駅員と乗務員が、まだ「ムーンライトえちご」の車内で寝ている乗客を起こして廻っているらしい。新潟止めになったことを知らなかったのか、それとも寝起きが悪いのかは分からないが、早朝からわずか2分という接続時間での乗り換えは誰もが大変だ。

 以前のように村上までの直通運転復活を願いたい。


→次ページにつづく「冬の羽越本線の旅(1)」
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