青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-8 北海道三大都市を結ぶ函館本線420キロの旅(2)
長万部駅舎
 ▲それほど大きくない長万部駅

■函館本線「山線」の豪雪地帯を行く


 長万部は鉄道交通の要所にあるため、大きな町のように感じてしまうが、米原や塩尻のように小ぢんまりとした町である。狭い駅舎の中に10分もいれば飽きてくる。

 楽しみといえば、名物駅弁の「かにめし」を買うこと位であろうか。かにめしの製造工場は駅前の道路を渡るとすぐにある。

 同じように考える旅行者とともに行くと、車でやってくる観光客を中心に賑わっていた。中には10個以上も買って行く人もおり、その都度、作っているので時間がかかる。
長万部の「かにめし」と「もりそば」
 ▲長万部名物の2駅弁「かにめし」と
 「もりそば」は駅前で製造販売している

 さらに駅前の食堂ではもう1つの名物「もりそば弁当」も製造販売している。この2つを巡ればいい時間つぶしになる。
 それでも時間が余っていれば、近くの寂れた商店街のコンビニエンスストアか海でも見に行くのが良いだろうか。

 このように昔から乗換え時間をつぶす客が多かったから、駅弁が人気となったのだろう。
 もっとも今では車で買いに来る人が大半のようであるし、特急列車では長万部は単なる通過駅である。


長万部−小樽間を走る普通列車の行先表示板(サボ)

 函館本線は函館−長万部−小樽−札幌−旭川と走っているが、特急列車はすべてが海沿いの室蘭本線を通る。
 そのため、函館本線の長万部−小樽間は、今や指で数られるほどの本数の普通列車が走るだけで、函館から札幌へ輸送路としての役割はほとんど担っていない。
 深い山の中を通るため"山線"と呼ばれ、地元客を除いてはこの時期、スキー目的か鉄道好き位しか乗らないと思われる。

小樽行(山線)の普通列車
 ▲"山線"は軽快ディーゼルカーが走る

 長万部12時20分発の小樽行普通列車は、古いディーゼルカーと新型の軽快気動車の2両編成。

 平常は1両だけのことが多いが、今日は年末なので増結しているのだろう。ドアが開くと同時にほぼ満員となった。乗客の半分は私と同じ青春18きっぷ旅行者と見られる。
 室蘭本線は特急こそ多いが普通列車は極端に少なく、接続も悪い。18きっぷ旅行者にとっては"山線"のほうが利用しやすい。

 列車が発車するのを見計らって、駅弁の包みを開く。個人的には長万部の「かにめし」よりも鳥取の「かにずし」の方が旨く感じる。同じく「もりそば」も大したことはないと思うが、鈍行列車の中で車窓を楽しみながら名物駅弁で昼食をとれるのは、ありがたいことだ。


長万部−二股間の車窓
 ▲長万部を出ると山深い原野を走る

 実は昔からこの「かにめし」に沿えられている佃煮が好きで、それも目的の一つで弁当を買っている。この話を人にすると不思議がられ、味覚が変なのではなどと言われる始末だが、最近ではかにめし製造工場で佃煮だけの販売もしている。私と同じように“佃煮ファン”の人も多いようである。

 長万部を出た列車は内浦湾とは正反対に、ニセコの山々へ向かって突き進む。車窓から人の気配が消えていく。
 8分走って二股に着く。「ラジウム温泉」で有名だが、温泉は駅から遠い。

 二股を出た列車は、深い雪に埋もれた山林の中を上る。7分かけて蕨岱(わらびたい)に停車。車窓もそうだが、駅にも人の気配がない。黒松内トンネルを越え、12時42分、黒松内に到着。ここは人口3千5百のちょっとした町。数人の乗降がある。ようやく人の気配を感じた。


車窓を眺める乗客
 ▲今日は曇気味で羊蹄山は見えず
 右に急カーブした列車は、10分ほどかけて熱郛(ねっぷ)に着く。この辺りは勾配が激しい。ここが"山線"と呼ばれ、特急列車がなくなったのも理解できる。北海道新幹線のルートはこの山線沿いに計画されているが、これらの深い山々は莫大なお金を使ってトンネルで掘り抜く気だろうか。

 国道5号線が寄り添い、目名を過ぎてそろそろ羊蹄山やニセコアンヌプリの山々が車窓に現れる頃だが、今日は残念ながら曇天。深い雲に覆われ見えない。"山線"を象徴する車窓だけに、残念でならない。
 13時15分、蘭越に到着。磯谷郡蘭越町、人口は6千強。次の昆布駅も蘭越町内である。

 上り勾配を10分ほど走るとニセコに着く。カタカナの駅名・町名も珍しいが、最近では、若い町長がざん新なアイデアで町を運営していることでも有名となっている。著名なスキー場もあるためか、スキーヤーが幾人か乗り込んで来た。シーズンには札幌からのリゾート特急もニセコまで乗り入れている。


雪に埋もれた比羅夫駅名板
 ▲雪に埋もれた比羅夫駅名板
 列車は尻別川に沿って走る。ようやく晴れ間も覗いてきた。ずっと雪ばかり見てきたせいか目がチカチカする。
 駅舎がペンションになっていることで有名な比羅夫(ひらふ)に停車。駅名板は1メートル以上の雪で埋もれている。

 この付近はそもそも豪雪地帯なので特別雪が多いとも思えないが、いつの間にか列車は10分以上の遅れが出ていた。次の倶知安(くっちゃん)では8分の停車時間がある予定なのだが、このままではすぐの発車となりそうだ。雪に強い北海道の鉄道でも遅れることはよくある。


倶知安駅
 ▲倶知安へは12分遅れで到着

 倶知安には12分程度遅れて到着。こちらの列車が着くと同時に交換の反対列車が急いでホームを離れた。まるで少し怒っているかのようだ。こちらも1分ほどで発車。乗りっぱなしで疲れてきたので、そろそろ外に出てゆっくり背伸びでもしたかったのだが、残念である。

 日本で有数の難読町名・倶知安(くっちゃん)町は北海道有数の豪雪地帯である。人口は1万6千人程度だが、"山線"沿線の小樽までの間では最も大きな部類の町に入る。
 臨時特急の「ニセコスキーエクスプレス」や臨時寝台特急「北斗星ニセコスキー号」も停車する。2000年の有珠山噴火の際には、函館−札幌間の特急列車が"山線"経由になったが、その時も全特急列車が停車していた。もちろん、かっては"山線"の伝統特急「北海」(1986年廃止)や急行「ニセコ」(同)も完全停車であった。


山線は勾配が激しい
 倶知安から峠を下り、倶知安トンネルを抜けると小沢に着く。「おざわ」ではなく「こざわ」と読む。岩内郡共和町にある。かっては岩内線の分岐駅、はたまたSL撮影のメッカとしても有名だった。

 駅前の小さな食堂では「トンネル餅」という甘い餅を売っている。SL撮影に来た人に向けて売り出したら、いつの間にか名物になったという。包装紙には今もSLの絵が描かれている。奥羽本線峠駅の「峠の力餅」みたいなものだろう。
 トンネル餅もかっては駅のホームで売っていたというが、今はひっそりと駅前食堂の片隅に置いてある。
 実はそんな餅の存在すら知らなかった。6年ほど前、たまたまこの食堂に入った。話好きそうな女主人が長々と思い出話をしてくれたのを思い出す。近年ではSL「ニセコ号」の運転などで人気が復活気味だと風の噂に聞く。


蘭島−塩谷間の車窓
 ▲蘭島から先で海が少し見える
 列車は再び上り勾配に差しかかり、仁木町とのサミット・稲穂峠をトンネルで越えると銀山に着く。付近の山で銀鉱石が取れたからこの駅名だという。次の然別(しかりべつ)までは15分以上を要する。山線の沿線は人口が少なく駅間が長い。
 然別から7分走って仁木に到着。道民には、さくらんぼなどのフルーツ園がある所として有名かもしれない。ここは果樹栽培がさかんな町である。

 14時43分、ようやく余市までたどり着いた。かってはニシン漁で栄えた。今はニッカウイスキーの工場がある町、積丹半島への入口駅として観光客も多い。
 次の蘭島では日本海に近くなる。つい近年まで海水浴シーズンには臨時列車が走っていた。隣の塩谷までの間には高い位置から日本海を望むことができる。海が見えると小樽は近い。
小樽駅駅名板

 幾本かのトンネルでオタモイ峠を越え、列車は小樽の街に入る。
 15時14分、長万部から3時間近くをかけて終点の小樽に到着した。列車の後尾車両は原型が見えないほどの雪がこびり付く。"山線"における冬の自然環境の厳しさを物語っている。

 函館本線の山線区間は北海道の山岳自然風景を楽しみたい時には、特におすすめの路線である。


■小樽−札幌「通勤区間」の車窓美を楽しむ


快速「マリンライナー」
 ▲小樽から先は快速「マリンライナー」で
 今日は、あと札幌まで行くだけの楽なスケジュールなので、久しぶりに小樽観光でもしようと思ったが、駅を出た瞬間の寒さに恐れをなし、即座に札幌行の快速「マリンライナー」に乗換える。

 小樽と札幌の間は1時間に3本程度の快速列車が走っていて便利だ。ステンレスにコーポレイトカラーの黄緑帯を巻いた電車は、2人掛けの転換シートが並ぶ。窓も大きく見晴らしが良い。

 小樽を出た快速列車は、市街地を3分走って南小樽に停車。さらに3分走ると小樽築港に到着。大規模ショッピングモールの「マイカル小樽」が隣接する。
 ショッピングゾーンだけでなく、観光やレジャー目的の施設もあることから、道民からは大きな期待を寄せられていた。しかしテナント撤退が続くばかりか、本体のマイカルまで破綻した。現在は経営再建中とのこと。今年はエア・ドゥ(北海道国際航空)の破綻もあったが、最近の道内経済は相変わらず冷え切っているようだ。

電車の前面から撮影
 ▲小樽築港より先は海岸線に沿って走る

 小樽築港を出ると、快速は札幌近郊の手稲までノンストップで走る。この区間はただの電車通勤区間ではなく、車窓から間近に石狩湾を眺められる絶景区間である。

 次の朝里駅前後から左手には夕暮れの石狩湾が近寄ってくる。線路のすぐ横には低い防波ブロックを挟んで海。
 中にはブロックさえなく、そのまま砂浜につながっている場所もある。大きな波が来たら列車ごと飲まれてしまいそうなほど、海岸線ぎりぎりの場所を通っている。
 通勤電車からこれだけ美しい車窓を見られる所は、日本でも数少ない。
夕暮れの石狩湾
 ▲海岸線がぎりぎりまで迫ってくる

 夏は海水浴で賑わう臨時駅の張碓(はりうす)を過ぎ、列車は銭函(ぜにばこ)を通過。この駅は、倉本聰脚本、高倉健主演の映画「駅−STASION」(1981年東宝)の舞台になった。雪の駅と旧型客車のシーンが印象に残るが、今では札幌のベッドタウンとして市街地化も進んでいる。

 銭函より先は海岸線から離れ、通勤区間らしく平凡な市街地を走る。手稲と琴似で数多くの乗客を乗せ、小樽から30分余で満員のまま札幌に到着。
 函館から8時間近くかけて札幌までたどり着いた。

 本日の函館本線の旅は一旦終る。残る旭川までの140キロ弱は、明日へ持ち越しにした。
 久しぶりに北の都まで来たからには、今宵こそはゆっくりと飲まねばならない。


→次ページにつづく「函館本線(3)(札幌−旭川)の旅」
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