青春18きっぷで北海道へ 鈍行列車に揺られて東京−旭川1400キロの旅
page-7 北海道三大都市を結ぶ函館本線420キロの旅(1)
函館駅駅舎
 ▲函館本線の旅は函館駅から始まる

■北海道の旅は函館駅から函館本線で


 北海道を離れて1年。旭川在住時には幾度も函館の街へ車で来たが、道内から車で来るのと、本州からはるばる鉄道でやって来るのでは景色や雰囲気まで違って見える。

 旅は苦労して目的地に到達するから感動があるのだろう。

 函館と札幌を3時間で結ぶ特急「スーパー北斗」や、札幌−旭川間を80分で結ぶ特急「スーパーホワイトアロー」で冬の大地をかっ飛ばして行くのも悪くはないが、今回は北海道の動脈「函館本線」をじっくり味わいたい。旭川までの全線約420キロをゆっくり1泊2日かけて鈍行列車に揺られて行こうと思う。


函館−長万部間の普通列車の行先表示板(サボ)
イカのイラストが描かれたディーゼルカー(函館駅で)
 ▲イカのイラストが描かれた気動車
 函館駅を8時14分に出る長万部行の普通列車は、イカのイラストが描かれた気動車も連結した3両編成。

 久しぶりに北海道の玄関口から鈍行列車で北上できると思うと、わくわくする。奥羽本線や東北本線のように、無粋なロングシートにも乗らなくて済む。北海道にはまだまだ古い気動車や電車が多い。

イカのイラスト気動車車内
 ▲車内にはスキー用具置場も
 列車はスキーやスノーボードへ行く若者でほぼ一杯になって函館を出発。イカのイラスト車両にはスキーやボード置場まで設置されおり、所狭しと道具類が立てかけられている。

 左手に函館運転所を見ながら列車は市街地を走る。かってここには大量の客車や機関車が置いてあったものだが、今はほとんど見ない。

 5分程で五稜郭に着く。津軽海峡線との乗換え駅ということもあり、今では一部の特急列車も停車する。史跡の五稜郭はここから少し離れている。


七飯駅5分停車。反対列車と交換
 ▲七飯駅で5分停車。反対列車と交換
 市街地を離れ、国道5号線と併走しながら函館郊外の桔梗、大中山を過ぎる。8時39分、七飯(ななえ)に到着。亀田郡七飯町、人口は約2万8千余。函館のベッドタウンとして人口が増え続けている町。

 5分程の停車中に反対列車と交換。発車と同時に隣のホームを特急「スーパー北斗」が猛スピードで通過していった。この先、特急列車は藤城廻りと呼ばれる別線を通る。勾配がきついため、優等列車用に作ったルートだ。

 次の渡島大野を出ると、我が普通列車は、通称「仁山廻り」の激しい上り坂を苦しそうに走る。眼下には大野町の小さな街並みが見える。


大沼駅に停車する気動車
 ▲大沼駅でスキー客の多くが下車した
 15分ほどかけて仁山に着く。雪に埋まった山深い小さな無人駅だが、近くにスキー場があるためか、今日は臨時駅員もいる。スキーヤー数人が下車して発車。今度は下り坂をトンネルで降り、左手に凍った小沼が見え始めると大沼駅に到着。

 ここでは列車切り離し作業と反対列車交換のため、8分間の停車。ほとんどのスキーヤーが下車し、残ったのは18きっぷ旅行者が多い。

 大沼から先、函館本線は大沼公園を経由する"駒ヶ岳(大沼公園)廻り"と、海辺の鹿部、渡島砂原を経由する"砂原廻り"に分かれる。先ほどの仁山経由と藤城廻りも含めて「8の字」状に路線が形成されている。

大沼駅での車両切り離し風景
 ▲大沼駅で砂原経由便の
 1両を切り離す。

 3両編成のうち、最後尾の1両は砂原経由で運転され、森駅で再びこの列車に連絡する。

 どちらを経由しても風景は悪くない。大沼や小沼を見たいなら大沼経由、海が見たいなら砂原廻りがいい。今はすべての特急列車が大沼経由なので大沼公園廻りが本線的な存在。砂原廻りのほうが"希少価値"もあるが、今日は素直に"本線"大沼経由で行くことにした。

 大沼を出た列車は、左手に真っ白の小沼を見ながら2分ほど走って大沼公園駅に着く。特急も停車する観光駅。

車窓から見た大沼
 ▲白く凍りついた大沼が車窓に広がる
 今度は右手に大沼が見えてきた。この付近は右に左に忙しい。

 次の赤井川では10分の停車。単線の函館本線ならではの長停車が小刻みに続く。

 ホームに降り、雪の中で煙草を吸う時間に恵まれるのは有難い。反対列車の快速「アイリス」が粉雪を舞わせ猛スピードで通過していった。



駒ヶ岳駅でスーパー北斗と交換
 ▲駒ヶ岳駅でスーパー北斗と交換

 7分ほど走って次の駒ヶ岳駅でも6分停車。ここまで"鈍行"ぶりを発揮してくれると無性に嬉しくなる。

 上りの特急「スーパー北斗」があっという間に通過し、列車は駒ヶ岳の麓を走る。
 今日は曇天。駒ヶ岳が雲に隠れて見えないことだけが残念だ。冬晴れの駒ヶ岳は雄大で美しい。

 東山から山を下り、姫川を過ぎて"砂原廻り線"と合流する。先ほど大沼で切り離した砂原経由のディーゼルカーと併走しながら、森に到着。ホームに降りると、目の前に内浦湾が広がる。

いかめしを販売する森駅構内売店
 ▲いかめしは森駅構内売店で販売
 森駅では18分の停車。これほど徹底的にのんびりした鈍行列車が未だに残っているのは奇跡にも近い気がする。

 森といえば駅弁の「いかめし」があまりにも有名だ。今や森の代名詞のようになっている。駅舎内の売店に行くと、「今さっき作ったばかり」といういかめしが売っている。ビールとともについつい買い求めてしまう。
サッポロ缶ビールといかめし

 森を出ると、内浦湾が車窓の友となる。ビールのつまみに先ほどの「いかめし」を食す。

 いつも大して美味しいとも思わないのだが、まだ温かいことと車窓が素晴らしいためか、これまで幾度も食べた中で最も旨い。

 早起きの鈍行列車の旅には幸せがついてくる。


森を過ぎると車窓に内浦湾が広がる
 ▲森を過ぎると車窓に内浦湾が広がる

 列車は桂川、石谷、本石倉と内浦湾沿いの漁村の小駅を過ぎる。

 左に断崖が迫り、海に押し出されそうな雰囲気もある。日本海のように激しくはないが、冬の静かな内浦湾を眺めながら、心まで透き通りそうな美しい車窓を味わう。朝からビールを片手にこの車窓は贅沢だ。

 函館本線と並行するように国道5号線が走る。路面は圧雪アイスバーン状態。北海道に住む頃は冬の運転が嫌でたまらなかった。どこへ行っても楽しくない。
 坂道で車がクルクル回転したりガードレールに突っ込んだり、生きているから良いとしても、あまりいい思い出がない。JR北海道の宣伝コピーではないが"冬こそJR"である。


函館本線山越駅駅舎
 ▲関所を模した山越駅駅舎

 日本最北の関所があったという山越に停車。

 ここから先が蝦夷地であり、ここまでが松前藩の支配が及んでいたということだろう。山越駅舎は関所を模したような日本風な造りになっている。

 10時59分に八雲到着。山越郡八雲町は人口1万7千5百、特急の停車駅である。

 ほとんどの乗客が下車し、残ったのは旅行者だけだ。八雲より先では時折、牧場も見える。夏なら左手に牧草地、右手に海という風景が見られるのだろうが、今日は雪が深い。

 かっては瀬棚線が分岐していた国縫(くんぬい)には11時25分に着く。今では高速道路の北海道西端としても知られる。
長万部駅

 右に併走する国道5号線沿いに、派手なドライブインの看板が見えてくる頃、終点の長万部に到着した。

 次の函館本線の小樽行までは1時間以上の待ち時間がある。






→次ページにつづく「函館本線(2)“山線”(長万部−小樽−札幌)の旅」
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