香港・広州鉄道紀行 九広鉄道の旅
page-5 深セン川を徒歩で越えて香港へ
 14時36分発の深セン行き「准高速」T861列車は、予想していた客車列車ではなく、いかにも速そうな流線型の電車がやってきた。「藍箭(あいせん)」という最近導入されたばかりの新型高速電車。最高時速は200km/h。車体前面には「Arrow(アロー)」と書かれており、まさに「矢の如く」速い。中国自慢の国産車両だ。

 各入口には車掌が立っており、深センは入境制限のある経済特区ゆえか、切符とともにパスポートや証明書の提示が求められる。切符に指定された座席に行くと、すでに"先客"が無断占拠していた。私が切符を見せると、違う席に移動した。全車指定席ながら発車する頃には立ち客もいた。
深セン−広州間に走る「藍箭(あいせん)」号
 ▲深セン−広州間に走る「藍箭(あいせん)」
 最高時速は200km/h。自慢の中国国産車両。

 日本の新しい新幹線より少し豪華な座席が使われており、車内も美しい。広州と深センの間は、「広深鉄道公司」との特別な会社によって運営されている。そのせいか、列車本数も多く、車両も最新型が導入されている。

 広州駅での人の多さと、中国の人々のパワーに圧倒され疲れたのだろうか。時速200km/hを体験する暇もなく、気がついたら深セン駅に到着していた。ここから国境を越えるという大事な作業が残っている。

 眠い目をこすりながら、深セン駅前へ出る。赤い旗が揺らめく堂々とした建物。国境検問所が見えた。あれを越えると、香港に帰れる。深センの街を見るよりも、早くこの国を出たい気持ちが先立つ。
 「香港方面」という道標に沿っていくと、いつの間にか出国する人の流れの中に組み込まれていた。

 検問所の中は土産店やら免税品店が軒を連ねる。エスカレーターを幾度か登ると出国検問所があったが、身動きできないほどの大混雑。よく見ると、外国人は下のフロア、ということが書いてある。そこはさらに長蛇の列。日本のテーマパークに並ぶ人々の比ではない。香港への直通列車が売り切れていた訳が分かった。この並ぶ手間を考えると、列車での国境越えは楽だ。
深セン、駅周辺の様子
 ▲「経済特区」である深セン。駅周辺の様子。

 西欧人を除いては、アジア系の顔立ちをした人のほとんどが大きな荷物を持っている。薄暗いビルの中に並ばされた長蛇の多国籍行列は一向に進まない。列を乱すと、緑色の服の人民警察官が怒鳴り声を上げる。別の警察官が出国用紙を持って廻ると、奪い合いのようになった。

 1時間ほど並んでようやく出国カウンタにたどり着いた。また用紙記入。早く出たいので今回は丁寧に記入。出国審査官は、私の顔を覗きこみながら、パスポートを読み取り機のようなものに当てる。無事、出国。

 国を隔てる深セン川を徒歩で渡る。外国人は左側、中国・香港人は右側と完全に分けられている。それぞれの思い、目的を持って国を越える人の波。私のように荷物も持たない観光客は少ない。ほとんどが重い荷物を抱え込み、急ぎ足でこの橋を越える。
深セン川の国境を越える人々
 ▲“国境”を歩いて越える人々。右側は外国人用。


 香港側では再び入国用紙を記入。本日4回目。さすがに嫌になるが、入国拒否に遭っても困るので丁寧に記入。気のせいか香港側の審査官や警官は優しい目つきにも見える。特に被害に遭った訳でもないのに、"緑色の服"を着た警官や審査官には拒否反応を起こすらしい。

 香港に入国。そのまま九広鉄道の羅湖(ローウー)駅につながっている。九広鉄道の電車が見えた時、言いようのない安堵感が漂った。大袈裟にいえば、日本に戻ってきたような気持ちにさえなった。ようやく解放されたような気がした。

 九龍へ向かう九広鉄道のロングシート車に、うなだれるように座り込んだ。
 わずか半日余りの滞在なのに激しく疲れた。香港だと「外国人、日本人」ということで言葉が喋られなくても大目に見てくれるが、中国の場合は外国人であっても特別な配慮はない。13億ともいわれる自国民だけで精一杯なのだろう。中国での1日は香港の倍の疲れがあるような気がする。

 今度来る時は語学と体力をつけて、鉄道で大陸を走りまわってみたいと思った。
 その頃には、ビザも廃止され、香港のように旅をしても疲れない国になっているかもしれない。
 それも何か寂しい気がした。

(終)

(2001/11旅行、2002/2/20公開)

香港側から見た中国・深センのイミグレーション
 ▲香港側から見た中国・深センのイミグレーション

※参考リンク
KCRC(九広鉄道)
<英語/中国語>
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