ハワイ 路線バス紀行
page-2 たった1ドルの島一周バス
マウイ島のサトウキビ列車
 ▲マウイ島内を走る観光用サトウキビ列車
 ハワイ州には人々の住む8つの島々があるが、どこにも鉄道がない。
 いや、ない、と言えば嘘になる。
 首都ホノルルがあるオアフ島から南東118キロ、飛行機でわずか20分足らずの大西洋上に浮かぶマウイ島には、観光用としてかわいらしいSLのサトウキビ列車も走っているが、昨日、すでに乗ってしまった。オアフ島でも廃線跡にリバイバルで観光列車を走らせている。

 所詮は観光用である。人々の生活感を感じるためには、やはり最低でも路線バスが良い。

 オアフ島内には「The Bus」という路線バスが走っていて、1日約26万人が利用している。

 1回の乗車につき1ドル(2003年10月現在では2ドルになっている)、オアフ島内ほぼ全域に路線を延ばしており、約4時間もかけて島内を循環するバスもある。「わずか1ドルで島内を一周してくれる路線バス」という観光ガイドの記述に強く心が惹かれ、朝早く起きて小さな旅に出かけた。

 ホノルルの大ホテル街の南外れに位置する安ホテル前から、早朝のバスに乗り込み、バスターミナルへ向かう。乗車口では「ヒッカムエアポート!!」と珍しく自動放送が流れる。ハワイのバスには案内放送などないはずなのだが、日本人観光客が多い地区だからであろうか、自動放送には驚いた。

 このバスの終点、ヒッカム空軍基地で働いていると思われる中年の女性は、毎日、このバスに乗るのか、隣り合った初老の男性と運転手まで交え楽しそうに喋っている。英語がまったく理解できないので会話の内容は意味不明だが、相変わらずの陽気な顔を見ているとなぜかほっとさせられる。

オアフ島内地図 この島最大のバスターミナルであるアラモアナショッピングセンターにはわずか10分で着く。買物大好きな日本人観光客には必須のスポットだ。昼間は人々であふれるこの施設も、今はどこの店もシャッターが閉じられ、嘘のように静まり返っている。

 バスを待っていると浮浪者らしき老人が「ワンダラー、ワンダラー」と呟きながら近づいてきた。聞こえないふりをしていたら、今度は「シガレット、シガレット」とせがむ。煙草を1本手渡すと、再び、「ワンダラー」の連呼が始まった。大観光施設も人気のない早朝の雰囲気はよろしくない。

 「The Bus」はステンレスの車体に白色を塗り、オレンジ色のラインがひときわ目立つ。ホノルルの町にいると一度は目にするおなじみの車だ。

 3本ほど見送った後、行先表示板に「CIRCLE ISLAND」と示された島内をぐるり1周する52番系統のバスに乗り込む。半分ほどの乗車率。路線バスだから仕方ないとはいえ、全行程の約150キロを4時間かけて走破するとは思えない簡素な設備で、駅のベンチのようにイスは堅く、日本のように布製のクッションなどは存在しない。

 これでもか、と言わんばかりクーラーが効いて寒いとさえ感じる。強化プラスティックの窓には直射日光を遮るスモークが貼られており、外の景色は見づらい。たった1ドルで島内一周ができるのだからあまり文句ばかりも言えない。元々は短距離を地元の人が乗るものだから、これ位の簡素さが良いのだろう。

 アラモアナ(ホノルル)を出たバスはハワイ州の中心部であるダウンタウンで多少の乗降を繰り返しながら、カメハメハ・ハイウエイに入った。路線バスが高速道路を走ること自体、日本では珍しいが、料金所もなく、ここでは生活道路として使われているようだ。

 パールハーバーを遠くに眺めながら、バスは片側3車線もある高速道路を走る。時折、遅いトラックにクラクションを打ち鳴らしながら軽快に飛ばす姿は、日本では考えらえれないような粗い運転だ。

 あまりにも軽快に走るので高速バスに乗っているのかと勘違いしそうだが、時折、右側車線に停留所が現れ、ローカルな人々の乗り降りが行われる。

 私は後ろの席からその光景をじっと眺め、「ここで降りて何の用事があるんだろう」「この付近には住宅街があるのだろうか」「どんな生活をしているのだろうか」などと想像し、路線バスの旅の楽しさをかみしめる。


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