ハワイ 路線バス紀行
page-1 長い夢に浸れる南の島へ
朝のオアフ島上空
 ▲朝のオアフ島上空を飛ぶ
 名古屋空港を19時30分に飛び立った全日空1056便。機内食のワインをあおると、とたんに睡魔が襲ってきた。

 国際線に乗るのは初めてだが、夜汽車で慣らしたお陰か6月の空いた機内の椅子は快適に眠れる。

 地に足が着いていない不安感はあるが、飛行機の揺れも鉄道のレールの響きもあまり変わらない気がする。乗り物の中で寝るのを苦痛と思わないありがたい身体に出来てしまっているようだ。

 翼に日の丸を抱いた我が飛行機は、果てなく広がる蒼い大西洋上を飛び続けること8時間、日本時間では真夜中3時頃にあたるのだろうか、浅い眠りから覚めると、すでに夜はすっかり明け切っており、眼下には、日本では一度も見たことがない粗野で広大な大地が、薄く透き通る青い空の下に開けた。

 実のところ、初めての海外。どう見ても日本ではないと感じる風景に、考えれば考える程、自分の中に緊張感が走った。

 日本から約6200キロ、北緯21度20分、西経157度55分、アメリカ合衆国50番目の州。8時間飛び続けた飛行機は、ハワイ州オアフ島・ホノルル国際空港に滑りこむように着陸した。

 空港のロビーに降り立つと、黒人、白人、日系人などあらゆる人種がおり、CNNテレビの中の世界に迷い込んだような気分にさえなった。日本ではあらゆる場所に行き尽くし、怖い所などはなくとも、ここはアメリカ合衆国。未知なる国の人々に生まれて初めて接し、言葉も出ないほど驚き緊張する。ブラウン管の中の世界が目の前にある。

 白人の入国管理官は手馴れたように「ナンノモクテキデスカ?」と聞いてくる。「観光です」と答えた後、聞こえないような小さな声で「サイトシーイン…」と呟いた。
カメハメハ王銅像
 ▲ホノルルにあるカメハメハ王の銅像

 空港の外に出た瞬間、身体全体を熱風に包み込まれた。脳細胞の活動をすべて停止されそうな熱気。一瞬で、何もかもすべての訳がわからなくなった。今まで見たこともないコルゲート板に覆われた銀色のバスに乗せられ、車線が幾つもある道路の右側を走る頃には、私は長い夢の中にいた。
 
 夢は長かった。透き通る永遠の蒼い海、白い砂浜、何もなかったようにただ陽気に笑う様々な人種の人々、それらをすべて包み込むこの島独特の温かく穏やかな空気と静かに交じり合っていた。私はすべての時に身をゆだね、最初の頃の緊張感などすでになく、何も考えることなく夢遊病のような時を過ごした。

 幻と現実が交錯するような、何も考えずただ時が流れるまま過ごす日々、これまでの旅は一体、何だったのかとふと思い返してみたりもした。しかし、素直にこれだけ楽しかったのもこれまでの旅の中で初めてかもしれない。

 ただ、黙って海を眺めているだけでも楽しい所なのだが、少しは旅らしい旅をしたいと思い、重い腰を上げた。

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