ヨーロッパ鉄道紀行
page-6 パリ北・東駅の不思議な魅惑

パリ北(ノール)駅の駅舎
 ▲堂々とした造りのパリ北(ノール)駅
 16時00分、約4分ほど遅れてパリ北(ノール)駅に到着。イギリスと違ってホームがかなり低い。ここがヨーロッパ大陸であることを実感する。

 駅には改札口もなく、人種も目的もそれぞれ違う人々が駅構内に入り乱れている。イギリスの整然とした駅の雰囲気が嘘のように猥雑だ。歩き方が一定でなく、目つきがうつろで何を考えているか分からない人々を横目で睨みつつ、駅の外へ急ぐ。事前の学習通り、この駅の付近は治安がよろしくないようだ。

 駅の外は雨。どうにもついていない。ホテルへは徒歩5分の距離なのだが、この雨と目つきの鋭い通行人の視線に圧倒されたのか、道を誤ってしまい10分近くかけて到着。裏道にある安ホテルの雰囲気はどことなく怪しいものの、民宿の女将のようなフロントのマダムに心和まされ、思わず笑みがこぼれる。

 部屋でフランス語のテレビを見ながら、途切れない滑らかな語感に英語圏ではないことを実感する。

 本格的に降り出した雨の中、外へ出る。北駅の近くに小汚い中華料理店を発見。中国系店員は、私達の顔を見るなり「ライスもありますよ」と英語で語り掛けてきた。米に飢えているこちらの心情を見透かされたような勧誘に屈し店内に入る。

 フルコースのフランス料理ディナーなど、夢の夢といった感じの場末の店内でマーボー豆腐らしき物とチャーハンをいただく。3日ぶりの米は豪華フランス料理にも勝る。「米」文化のアジア人を認識する。

 中華料理に気分を良くしたためか、先ほど恐れを抱いた北駅を見学に行く。夜の駅構内は暗い。相変わらず挙動不審な人々もそこらにいるが、あいにく持ち合わせているのは僅かなフラン紙幣だけ。パタパタ変わる列車発着案内を見たり、列車の発着風景を見るのも楽しい。

パリ北駅で
 ▲ホームが低く列車に近づける。(北駅で)

 構内の本屋では、いかにもパリジェンヌといった感がある美しい女性が1人でレジをさばいていた。薄暗い駅構内、人種の坩堝の中ではひときわ目立つ存在だ。フランス語で何が書いてあるかさっぱり分からぬ本よりも、そちらばかり気になってしまう。

 ユーロスターやTGVはここ、パリ北駅から発着するが、南ドイツやスイス方面への列車はこの隣、東(エスタ)駅から発着している。

 3分ほど通り歩くと東駅に出る。北駅より規模も小さい。暗く閑散としている。静まったホームに横たわる巨大な機関車と客車。改札口などないのでいつでも自由に出入りが可能だ。終端部分まで機関車がそのまま乗り入れており、間近で眺められる。迫力がある。

パリ東(エスタ)駅
 ▲北駅のすぐ隣にあるパリ東(エスタ)駅
 北駅と東駅の付近には、安食堂や安ホテルに混じって正体不明の店もあり雑然としている。

 パリを目指す様々な国の人が、初めて着くのがどちらかの駅である。中には決死の覚悟で国を越えて来た人もいるだろう。それゆえに人種が入り乱れているのだろうし、目つきも鋭い。良からぬ人もいる。ただ、身の危険さえ回避できればこの雰囲気も悪くはない。

 私達も「外人」ゆえか、次第にこの場所に落ち着きのようなものを覚えた。

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