ヨーロッパ鉄道紀行
page-3 衛兵交代式を眺めて思う

  翌日からすぐにでも鉄道に乗りたいが、初めて来た国で観光をしない訳にもいかず、朝からロンドンの街へと繰り出す。「トーマスクック時刻表」ばかり眺めている私をよそに、前夜からロンドン市内地図を熟読していた妻について行くだけである。

 ピリリと引き締まった寒さの中、ハイドパークという都市の中の巨大な公園を縦断すると、朝の光で輝きを増した「ロイヤル・アルバートホール」が見えた。1870年に建てられた歴史ある音楽ホール。その方面には明るくない。
 無感動な私とは対照的に騒いでいる妻を見て、アメリカからのおじさん観光客が笑顔でカメラのシャッターを押してくれた。

 次なる目的地は、英国王室も御用達というロンドン一の高級デパート「ハロッズ」。
 開店前の店先に並んでいる人々の服装もどこか華美だ。買物嫌いでお金を持たない我々とはまるで別世界なのだが、場違いなればこそ行ってみたくなる。入口のドア−には「バックパッカースタイルでは入場禁止」なる表示もある。
 中に入ると、日本で言うところの伊勢丹や高島屋といった雰囲気。それほど目新しいものもないはずなのだが、海外ゆえか、見ているだけで楽しく感じてしまう。

 フロア全体に絨毯が敷き詰められたゴージャスな書籍コーナーで時間をつぶし、王室御用達のデパートから、今度は実際に王家のお住まいであるパッキンガム宮殿へ向かって歩く。あのエリザベス女王やチャールズ皇太子らご一家の宮殿である。

 宮殿行く目的はただ1つ、衛兵交代式を見るためである。
 ありきたりの観光だが、ロンドンへ行ったからには見ない訳にはいかない。夏は毎日、冬の間は2日に1回行われている。観光シーズンでもないのに、付近には1000人近い観光客であふれている。ほとんどが海外観光客。欧米系と中国・台湾系が多く、日本人はほとんど見かけない。

衛兵交代式の様子
 ▲パッキンガム宮殿で行われる衛兵交代式の様子。

 時間になると、高らかに行進曲を演奏しながら数十名の列隊が行進してきた。背筋を伸ばし腕を高く振り上げ一糸乱れぬ行進。軍隊のように偉そうな感じはぜず、どこか上品だ。テレビや観光ガイドでよく見る赤い制服に細長い毛皮の帽子ではなく、今日はグレーの冬服を着用。

 我々日本人からすると、いちいちこんな仰々しい交代式を毎日本気でやっているのかと思うと馬鹿馬鹿しく思ったりもする。観光的要素が大きいとはいえ、このかたくなな仰々しさこそがイギリス王室の権威や伝統を支えているのかもしれない。

 明日、パリまで乗る予定の「ユーロスター」のチケットを買うため、歩いてウォータールー駅に向かう。日本で買うと通信費やら何やらで高いので、今まで放っておいた。

 通りを歩くと、宮殿に隣接するように兵舎があり、鉄条網の向こうでは機関銃を持った数人の兵士と、屈強そうな犬が通行人に向かって睨みを効かせている。一瞬、観光客気分が抜ける。

 昼過ぎにウォータールー駅までたどり着いたものの、空腹には耐え切れず「フィッシュ&チップス」と大きな看板が上げられたセルフレストランに入る。

 英国庶民の伝統料理である「フィッシュ&チップス」を注文。信じられない位大量のフライドポテトと巨大な白身魚のフライが出てきた。隣の席の老婦人方がいとも平気に平らげている姿を見て、私もビールとともに平らげてみたが、激しい胸焼けにさいなまれた。こんな物を毎日食べている国には戦争でかなうはずがない、などと意味もなく感じた。

 クラッシックな趣のあるウォータールー駅舎をくぐると、地下1階に近代的な「ウォータールー・インターナショナル」駅がある。イギリス側のユーロスター発着駅。

 切符売場は広いのだが、前売り窓口が2つしかなく、長い列が成されている。20分ほどでやっと番が回ってきた。時刻表の目的の列車に印をつけ、「トゥモロー、ファーストクラス2枚プリーズ」などといい加減な英単語を呟きながら「ユーロパス」を出してみた。欧州鉄道旅行には完全無欠、乗り放題の「ユーレールパス」や「ユーロパス」も、鉄道発祥の国、誇り高きイギリスではまったく使えない。しかし国際列車であるユーロスターには割引特典がある。

 数分間のやりとりの後、切符が2枚発券された。1等車で1人90ポンド。約15000円。日本で買うと手数料も含め定価28000円程度するので、苦労した甲斐があった。

 映画「哀愁」の舞台であり、原題でもある「ウォータルー・ブリッジ」を渡る。橋へ上る歩行者用道路が異常に狭く、映画のラストシーンの如く車に轢かれかねない。

 テムズ川から吹くからっ風を浴びながら、次なる目的地「ロンドン交通博物館」へ行く。
 遠足で来ていたかわいらしい幼稚園児の歓声に包まれながら見学。日本の交通博物館と似たような雰囲気。

 主に地下鉄とバス関係の車両展示が多い。今はなき路面電車もある。バスと同じ赤色で2階建てだ。国土がそれほど広くないせいか、とにかく多くの人を運ぶために苦心した結果なのだろう。

 帰り口には博物館ショップがある。ロンドン地下鉄マーク入りのグッズに心動かされるが、荷物が重くなるので断念。ミニ駅名板など持って帰るのも大変そうだが欲しくなる。

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