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page-10 リージョナル
(ニューヨーク・ペンシルバニア駅〜ボルチモア・ペンシルバニア駅)
ニューヨークペンシルバニア駅の上はオフィスビル(7番街側)
 ▲ペンシルバニア駅上は
 オフィスビル(7番街側)

 ニューヨークに着いた翌日の6月8日木曜日、今日は途中のボルティモア(Baltimore)に立ち寄り、米国鉄道発祥の地を見学しながら、ワシントンDC(Washington,DC)まで移動。この鉄道旅を終える予定である。

 32番街のペンシルバニア(Pennsylvania)駅(通常「ペンステーション」と呼ばれる)は、アムトラックの全列車とニュージャージー、ロングアイランドへの近郊電車が発着する。コンコースとホームはすべて地下に埋もれている。
ペンシルバニア駅のチケットカウンタ
 ▲チケットカウンタも地下にある

 1960年代初頭までは石造の壮大な駅舎が残っていたのだが、赤字に苦しんでいた当時のペンシルベニア鉄道会社が土地の地上権を売却。その結果、今は同じ場所にスポーツアリーナの「マディソン・スクエア・ガーデン」と高層ビルが建っている。
 ゆえにターミナル駅としての存在感はあまり見えてこないが、乗降客数は米国一だという。
ペンシルバニア駅の発着案内板
 ▲乗客はまず発着掲示板に注目

 7番街側からバスケットボールのオブジェの下をくぐって地下へ下りる。NBA観戦に訪れたかのようで、これから中・長距離列車に乗る高揚感はあまり沸かない。

 地下街のダンキンドーナッツで朝食。大きな発着案内板を立って眺めながら列車を待つ。アムトラックの乗客の大半がここを注視しており、乗車ホームが表示されると同時に慌しく人が階下へと呑まれてゆく。アムトラックでは列車の予約は必要だが、座席指定はない。

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ペンシルバニア駅で発車を待つリージョナル号
 ▲ペン駅で発車を待つリージョナル号

 ワシントンDC行の『リージョナル』183列車は発車10分前になって、ようやく番号が点灯した。
 地下2階の埃っぽいプラットホームに、飛行機の胴体のような形をした銀色のアムフリート車が停まっている。アムトラックの最も標準的な客車で、窓が小さいことを除けば、大きな二人掛けのリクライニングシートを備えていて車内の設備は悪くない。

 薄暗いホームの先まで行って急いで編成を眺めた。少しやつれたAEM7型電気機関車を先頭に、客車を6両連ねている。
 半室ビュッフェのビジネスクラス車両のほかは、全てが普通座席車(コーチクラス=Coach Class)。今の時点で半分くらいの客が乗っていて、多くはビジネスマンのようであった。
ニューヨーク〜ワシントンDC 地図

 7時5分、列車は定刻通りにペンステーションを離れた。目的地のボルティモアまでは約300キロ、2時間半を要する。

 駅を出てすぐ一瞬空が見える掘割状の場所がある。しかし、ハドソン川(Hudson River)を越えるノースリバートンネルに入ってしまうと、ニュージャージー州の北ベルゲン郊外に出るまで8分ほど暗闇が続く。
トンネルを抜けるとニュージャージーの草原に
 ▲ニュージャージーを走る

 地上に出て初めて見えたのは、広大な荒れ地であった。大都会からこうも一瞬で車窓が変わるのは面白くもある。

 出発前からガムをかみ続けている巨漢の白人車掌が検札に来て、半券を回収すると同時に荷物棚に行先票を差し込んで行く。駅に改札口がないので、こうして乗客の管理を厳格に行っているのである。

ニューアーク駅に停車
 ▲ニューアーク駅に停車

 ニュージャージー・トランジットの近郊各線が集まってくる巨大高架駅のセコーカス・ジャンクション(Secaucus Junction)を通過した列車は、7時22分にニューアーク(Newark)に停車。

 州の最大都市らしく、日本の私鉄を思わせる長い高架ホームがあり、ニューヨークへの通勤客の多さが伺える。
メトロパーク駅
 ▲9分遅れでメトロパークを出発

 左手にニューアーク国際空港を望みながら、列車はエアポート駅を通過。エリザベス(Elizabeth)、リンデン(Linden)と郊外の住宅地を走っていくが、どうもスピードが上がらず、近郊列車にまで追い抜かれた。
 次の停車駅、メトロパーク(Metro Park)を出発した時は定刻より9分遅れであった。

 このリージョナル(Regional)は、地域間急行に該当する一般列車である。各便を千鳥状に停める形で全てのアムトラック駅を結んでいるので、特急の「アセラ」に比べると停車駅が多い。退屈はしなくて済むが、さすがに各駅停車に抜かれて走るのは面白くない。

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直線区間でスピードも出てきたが

 小都会のニューブランズウイック(New Brunswick)を過ぎると、段々と家が少なくなってきた。列車は森の中の直線を飛ばし、8時7分、州端にあるトレントン(Trenton)に到着。

 ここトレントンはニュージャージーの州都だが、人口はニューアークの3分の1程度しかない。経済と政治の中心を分けるという意味合いがあるのか、米国の州都は最大都市に置かれていないことが多い。
トレントン駅から乗り込むビジネスマンら
 ▲トレントンでもビジネスマンが
 乗り込んできた

 20人ほどを乗せて出発したリージョナルは、まもなくデラウェア川の鉄橋を渡り、ペンシルバニア州(Pennsylvania)に入った。車窓には州立公園のVan Sciver湖が現れたが、すぐに家々が立ち並ぶ都市近郊の街並みに変わった。

 いつの間にか左手にインターステート(高速道路)95号線が近づいていた。ちょうど朝の通勤時間帯でフィラデルフィア中心部へ向かう車が車線一杯に詰まっている。
線路沿いの建物には一杯の落書きが

 そこを過ぎると巨大なスラム街が待っていた。いずれの大都市でも、立派な高速道路と荒廃した住宅街は摩天楼の足元に必ず現れて、鉄道はその横を通り抜けてゆくのである。

フィラデルフィアのビル街
 ▲フィラデルフィアのビル街を望む
 崩れたレンガの家とその残骸、不自然な空き地に置かれた大量のゴミ、廃墟や壁へ埋め尽くされた落書き。通過していく北フィラデルフィア駅(North Philadelphia)を見ると、待合室は徹底的にガラスが叩き割られていた。

 ここぞ下車をし街を見なければならぬ、と頭の中では思うのだが、上っ面を塗り固めた観光地を巡ってこの国を知った気になっているため、実際に足が動いたためしがない。

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フィラデルフィア駅での乗降
 ▲地下駅のフィラデルフィア

 市街地を北から南へ縦断した列車は、高層ビル街の真下にもぐりこむように暗闇に入った。

 8時35分、定刻より8分遅れてフィラデルフィア「30th Street Station」に着く。地下ホームでの乗降が慌しく終わり、3分後に発車。
海のように広いデラウェア川
 ▲海のように広いデラウェア川

 今度は中産階級がいかにも住んでいそうな一戸建て住宅が並ぶ郊外の風景。突然、それが途切れると、プラントや石油タンクが幾つも現れ、列車はいつの間にかデラウェア州(Delaware)に入っていた。
 海のように広くなったデラウェア川と工場地帯、アムトラックの車両基地を車窓に見ながら、州の最大都市・ウィルミントン(Wilmington)に到着。欧州の古い豪邸のようなレンガ駅舎の先には、こぢんまりと整った街並みが広がっている。
ウィルミントン駅
 ▲デラウェア州の最大都市
 ウィルミントン駅に停車

 ニュージャージーの大都市と同名のニューアークなる小駅を通過すると、メリーランド州(Maryland)に入る。いつもの旅の方法として、必ず土地の境である州境を注視しているのだが、日本のように「ここから○○県」といった告知看板もなく、地形の大きな変化もないので分かりづらい。
 そもそも境界など気にしているのは、国が狭い日本人の特性なのかもしれないが。
左手にチェサピーク湾が広がる
 ▲左手にチェサピーク湾が広がる

 左手にチェサピーク湾(Chesapeake Bay)が近づき、目が休まるような海辺の車窓が少し続いたが、のっぺりとしたボルチモアの街が近づくにつれ、澱(よど)んだ色の荒れた住宅群が目に付いてきた。またもスラム街のようであった。

 列車は定刻より7分遅れて9時45分にボルティモア・ペンステーション(Baltimore Penn Station)に到着した。


>>B&O鉄道博物館/ワシントンへ
(ボルティモア・ペンシルバニア駅〜ワシントンDC・ユニオン駅)

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