Last Update 06-FEB-2002
キヤノン キヤノネット
初代です
Canon Canonet

おことわり
以下はあくまでも聞きかじりの素人仕事です。
はっきり言って、たまたま動いてラッキーだったというレベルです。
間違っても高価なお手持ちのカメラで真似などしないように...

ある日、手元に初代キヤノネットがやってくる。 <-- キャノネットじゃなくてキヤノネットね
いや別にカメラが店から歩いてくる訳ないから、買ったんだけどね。
フィルムを買いにカメラ屋に行った際、ふと覗いたジャンクコーナーにあったのよキヤノネットが、
先客のおじさんが興味深げにこいつを触ってるのを見ていたら猛烈に欲しくなってくる。
そこで、しぶとくキヤノネットを触り続けるおじさんの背中を凝視し呪いをかける! (笑)

「買うな〜、そいつは壊れてるぞ〜」

呪いのお陰か、おじさんがキヤノネットをカゴに戻したのを見計らって即レジへダッシュ!
「チ〜ン、500円です」


ここで初代キヤノネットの紹介などを
発売 :1961 年 1 月 <-- 産まれる前ですね
レンズ:SE 45mm/F1.9(4郡5枚構成)
露出 :シャッタースピード優先式AUTO(EE)、マニュアル露出可能
シャッター:コパルSLV B・1秒〜1/500秒
サイズ:141×83×64mm
重量 :約700g

高級機一筋だったキヤノンが出した初の大衆向けカメラ。
2万円を切る低価格で爆発的に売れる。
その価格は非常識とされ、社会現象にもなる。
この後、キヤノネット QL 17 や G-III 17 へとシリーズは続いていきます。

早速状態をチェック
外観では、鏡胴の下部に当たりがあり若干歪んでいる。
トップカバーを固定しているネジ3本のうち1本が欠損。
底部トリガーによる巻き上げはできる。
シャッターも切れる。
セルフも問題なさそう。
下から見た図
この頃の機種は意外と、底部巻上げタイプが多い
ファインダーを覗いてみる、距離計は動作する。
露出の指針も光量に応じて振れる、やったーセレンと露出計は健在です。
で、ここからが問題。
  • ファインダー距離計二重像の上下にズレあり。
  • オート、マニュアルに関わらずシャッター速度が一定のまま。 恐らく最速
  • フィルム室側から覗いてみると AUTO, MANUAL に関わらず絞り羽根が全く動かない。


    バラしてみよう
    最初は違和感があった底部トリガー等の操作、触れば触るほど妙にしっくりくる。
    う〜んこれは何とか復活させたい。
    という訳で、まずトップカバーを開けてみる。
    これはネジ3本(今回は2本ですが)を外すだけなので簡単。
    露出計指針は光量に応じて振れるし、機械的な連携も問題なさそう。
    ちなみに、このタイミングで二重像のズレが修正できます。
    バラして見た図
    左丸が左右方向調整、右丸が上下方向調整
    底を外してみる。
    巻戻しクランクは、フィルム室に伸びた部分をドライバ等で固定し手で回して外します。
    ここを外すと現れるネジ、更に三脚取付け部の円周形の皮を剥がすと出てくるネジ、
    巻戻しロックレバー部のネジ、そしてトリガー部のカニ目(順ネジ)を外すと底が外れます。
    中は問題なさそうです。

    いよいよ鏡胴に手を入れてみます。
    セレン回りのカニ目を外し(リード線有)、続いて前玉レンズ群を外します。
    ここでバルブを利用すれば絞り羽根に対面できます。
    放射状のイボイボリング(説明が難しいなー)を回して外します。
    ちなみにこいつのロックネジは外れませんので 1/2 回転させロック解除すればOKです。
    いよいよシャッター速度リングが外れます
    が、実はここが曲者で、リード線に沿って細い金属棒が延びておりこいつが干渉します。
    この棒の先がボディーに連動してシャッター速度、フィルム感度を伝えます。
    このせいで、シャッターに素直に対面できません。
    今回は隙間から綿棒で汚れを落とし、爪楊枝の先に付けたオイルを極少量注油しました。
    絞り羽根はジッポオイルを少量注してブロワーで飛ばしますが粘りは取れません。

    仕方がないので今度は後ろから攻めてみる事にします。
    ボディー張り皮を剥がして鏡胴を固定している4本のネジを外します。
    先述のシャッターから伸びる棒や鏡胴上部とボディーに連携があり少し苦労します。
    鏡胴をボディーから分離して後玉レンズ群を外すと絞り羽根に到達です。
    再度絞り羽根にジッポオイルを注しやっと粘りが取れました。

    絞り羽根の固着を除去し、シャッターもスローガバナへの注油により無事復活の様子。
    あとはボディーから剥がした皮を再度貼れば見事500円キヤノネットのレストア完了です。
    上から見た図
    ロゴが良いでしょ


    秘密のハナシ
    ここまで見てると結構スマートに作業してるように思えない?
    実は、ちっともそんな事ありません。

    まず底部トリガーのカニ目、ゴムを当てて回すけど緩まずケガキコンパスで開ける。
    その際ちょっと傷をつける。

    当たりがあるせいかセレン周りのカニ目が回らない。
    ディバイダ等の代用工具では歯が立たず、しかも傷を付ける。
    しょうが無いので専用のカニ目回しを通販で買う。 (待つ事2日)

    絞り羽根の粘りが取れない、後ろから前から攻めるもどうもすっきり取れない。
    一旦諦めて寝る。
    翌日見るとすっきり粘りが取れている。
    ブロワーで飛びきらないジッポオイルが羽根を引っ付けてたのか?

    スローシャッターが切れない原因が全然分からず、しばらく放っておく。
    が、ときどきシャッター速度がジーっと音を立てながら遅くなる事を発見。
    シャッター部に再度注油を行う事でやっと復活。

    極めつけは鏡胴を何度も組み直すが、その都度何等かの不具合がでる。
    シャッター速度がボディーに全く伝わっていない為 AUTO時も絞り値が変化しなくなる。
    これは前述シャッターリングから伸びた棒の先をボディー側連動レバーに引っ掛けて解決。

    ファインダーの絞り指針が動かなくなる。
    これはファインダーブロック下の連結が外れたため。
    この連結を直して組み直すと今度は絞る方向にのみ指針が動き元の位置へ戻らなくなる。
    これは随分悩みました、絶対バネを飛ばしてしまったんだと考えあちこち探すも見つからず。
    諦めて、仮組みして寝ようとすると途端に正常動作に…
    なんの事はない鏡胴上部とボディとの連結レバーが正しく組まれてないだけでした。

    そして、最も馬鹿だったのはヘリコイドを動かしてもある所から距離計が連動しなくなった事。
    これは、鏡胴裏の遮蔽用(?)の黒い輪を上下逆に取付けてたせいでした。

    判ってしまえば笑い話ですが、その時は必死です。
    本来の動作を想像しながら隙間からひたすら各部品の動作を覗き続けたり、
    何度も何度もバラしては組み立て直して……

    上記は結局1週間近くかかりっきりでやっと完了した血と汗と涙の作業の記録です (笑)


    おまけ
    初代キヤノネットですが、マイナーチェンジが何度か行われ3つの型が存在するようです。
  • ファインダー内の露出表示が矢印で、巻き上げ時にカチカチいう i型
  • ファインダー内に絞り値が見えて、フィルム感度がレンズ脇の小窓に出る ii型
  • ファインダー内に絞り値が見えて、フィルム感度は指標にレバーで合わせる iii型
    i型と ii型は ASA 200 まで iii型は ASA 400 までいけます。
    ii型
    ちなみに今回手に入れたキヤノネットはii型でした。


    続・おまけ
    お散歩に持ち出してみました。
    試写
    Konica PAN 100 D-76 (1:1)
    使ってるうちに、セルフが動かない事に気が付く。
    ああっ、また分解せねば。

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