STEINBERGER
GM 1T

通常トレモロアームが下がっている状態ではトランスポージング・アームがピンにロックされチューニングが狂わない(アップ・ダウンともできない)状態に保たれている。
トレモロアームを持ち上げるとトランスポージングアームがピンから外れ、アップ、ダウンとも可能になる。
 
 元インテリアデザイナーであったネッド・スタインバーガー氏のアイデアのかったまりがその名もまんまスタインバーガーである。
 ヘッドレス、グラファイト素材、ストレート・プル・チューナー、トランストレムどれもアイデア溢れた傑作である。レオ・フェンダー氏同様に彼もギタリストではないと言う点が実に興味深い。これが当然、あれが当たり前と固定観念に縛られていては革新的なものは生まれてこないと言うことだろう。


 GMシリーズはお弁当箱タイプのネック、ボディ一体成型のGLシリーズと違い、メイプルボディにグラファイトネックがボルトオンされているいわば廉価版である。しかしながらグラファイトネックだけでもスタインバーガーの良さは十分に味わえる。そのネックは基本的にメンテナンスフリーでストレートに安定しており、グラファイトならではのサステインの良さ、倍音の出具合、どれも他では味わい難い長所である。

 そして何よりも素晴らしいのはトランストレム。ハーモニーを保ったまま移調できることがエポックメイキングであることはもちろんであるが、一般人にとってありがたいのは次の2点。まずフローティングであるにもかかわらずチューニングがスピーディーにできること。最初にブリッジをロックしたままチューニングをし、そのあとロックを外し音程が狂った分をたった1個のツマミ(スプリングアジャストメントコントロール)で調整する(6弦同時にできる)だけで終了。FRTで何十回もペグを回す煩わしさから見事に開放されるのである。もう1点はフローティングにセッティングしたトレモロの最大の弱点であるチューニングの不安定さを完全に払拭している点である。演奏中に弦が切れてもロックされていれば全くチューニングが狂わない。もちろんチョーキング時に他弦がフラットするようなことも無いのである。


 このGM1TはGMシリーズ中もっともシンプルなPUレイアウトでリアにEMG1発のみ、コントロールも1V1Tである。ほかにSSH、HSH、HHなどがあるがこのGM1TのみリアPUが幾分ネックよりに付けられている点が特徴。若干のマイルドさをブレンドする為のセッティングである。1PUはそれはそれで使いやすいのだがせめてタップできるEMG89に交換してやりたいところ。
 STEINBERGERというと専用のダブル・ボール弦が必要という事で1セットが普通弦の約2倍、バラ弦の販売もなしということでランニングコストが心配されるため購入に二の足を踏む人も多いとおもうが、ヘッド部にアタッチメントを装着すれば自慢のトランスポーズ機能は使えなくなるが(ハーモニーを保たないアーミングは可能)普通弦を使用することができる。


 90年代前半にGIBSON傘下となってからも商品供給は非常に少ない状態が続いていたが、ごく最近は新星堂から積極的な販売がなされるようになってきた。ちなみに現在のGMシリーズのボディ構成はメイプル+マホガニーへと変更されている。