CASIO
PG-380 / PG-300  GUITAR SYNTH

  
 PG−380がFRTタイプのトレモロを搭載して88年に発売されていたがより一層ギターとしてのサウンドの向上と、また価格的にも受け入れやすくする為、数年後にビンテージ・トレモロタイプのPG−300が発売された。PG−380の発売当時の定価は238,000円。

 ROLANDのGRと最も異なる点は、カシオが独自に開発したデジタルiPD音源を搭載しギター本体から直接シールドコード1本でシンセ音をアウトプットできることである。だからワイヤレス化だって簡単にできてしまう。プリセット音は64種類、ROMカードを使用すると最大192種類のサウンドが呼び出し可能。もちろんMIDI OUTも装備されており、よりハイレベルな音源を使用したりシーケンサーへの打ち込みも可能である。

 シンセ部のコントロールパネルにはLEDディスプレイと12個のプッシュ・スイッチが装備されプログラム・チェンジ、クロマチック・チューナー、オクターブ出力切り替えなどに対応し、単三乾電池6本またはACアダプターによって動作する。乾電池をつんでの重量はかなりのもので70年代ギブソンLP程はあるだろう。(カタログ上はPG−380で4.5kgであったが後継機のPG−300では3.8kgと軽量化された。)

 どこのファクトリーで製造されたかについての資料は持たないが、以前PG−300のネックを調整しようとした際にはボルトを全て抜いても簡単に外れないほどきっちり作られていた。メーカー自身も広告でギター本来のクオリティを重視して設計し材質も厳選しているとうたっている(上のボディ裏の写真を見ても判るようにボディ自体が穴だらけなのでいいかげんにつくったらまともな音にならないはず)。

 PG−380ではボディはアルダー、ネックはメイプルそして指板にはエボニーが奢られている(シンセのトラッキング精度を高めるのにローズより有利なエボニーを使用していると思われる)。 ブリッジはFRTタイプでシンセサウンドにアーミングを掛けられるのは魅力的。PUはEMGタイプの外観だがパッシブタイプ。シングルPUはヴィンテージぽいのに対しリアのHBはFRTとあいまってかなりのパワフルなサウンドでサスティンもある。22フレットまできちんと鳴ってくれる。またトーン・ノブを引っぱるとリアPUがシングルに切り替わる小技も効かせている。
 PG−300はボディはメイプル+バスウッド、ネックは1ピースメイプル、ブリッジはヴィンテージタイプのトレモロに替わっている。

 肝心のシンセサウンドはプラス、ストリングス、ピアノはもちろん管楽器、打楽器なども出力可能だが当然サウンドはそれなりのもので決してシンセ音だけで聞かせられるレベルではない。またギター・シンセの宿命として出音の遅れ、トラッキング・ミス(弾き手の能力に大きく左右されるが)は避けられず、ギター音とミックスして使うのが正解。

 問題は発売からすでに長い時間が経ってしまったこと。おそらくメーカーの修理対応に多くは望めないであろう(全くダメかも)。電子部品の塊だけに故障したら終わりになってしまう。それが影響してか中古価格は結構安いので気に入った方は部品取り用にスペアの確保も考慮して欲しい。とにかく購入の際はシンセ部のチェックを入念にすることをお勧めする。

 そういえば昔PG−380を使って流しをしているおっちゃんの記事をなんかのギター誌で読んだ気がする。

 新し物好きの渡辺香津美が使用して広告にも登場し彼の音色を登録したROMカードも発売されていた。