YAMAHA
GX-1 '86

  
 これは80年代中頃に各社から発売されたスタインバーガーのパクリギターのYAMAHA版である。とはいえ完全なヘッドレスではなくプラスチックのカバーがつけられた小さなヘッドがあり、ナット部でロックした弦の余りを収納するようになっている。スタインバーガーのように専用弦を使用しなくても良い点はいかにもYAMAHA的であり安心できる。

 メイプル+マホガニーの3ピース24フレット仕様のスルー・ネックにマホガニーのボディ材がつけられている。太目のフレットが打たれた指板はエボニーでフラットなタイプ。2.8kgの超軽量ボディ。スタインバーガーと違いいたって普通のウッドマテリアルが使われているので木材の質感を消す為か分厚い塗装がされている。

 最大の特徴はクイックチューニング・アジャスタブル・テールエレベーターと長い名前が付けられた、チューニング・マシンを一体化した新開発のトレモロ・システム(簡単に言えばFRTのファインチューナーを大型化したものであり全く新しいコンセプトの機構のものではない)である。ブリッジ下を大きくザグッてアーム・アップも可能であるがブリッジ後部に取り付けられたブロックを上下させることによりフローティングとフィッティングが選択できる(フローティング嫌いの私には最高のシステムである。ザグリのあるすべてのFRTシステムにぜひ採用してもらいたい)。スタインバーガーはダブル・ボール・エンドの専用弦を使ってヘッドレスを実現したがGX−1は普通の弦が使えるように6弦それぞれ独立してロックできるナットを採用している。

 PUはスピネックスのSGX−ICで外から見えるPUカバーは単なるフタであり、PU自体とは一体化していない。一部広告にはフルカバードPUなんて表記していたものも見かけたがこれは全くのデタラメで、カバーを外して見るとバーポールピースタイプのPUがボディに固定もされていない。PUの下にスポンジを入れてPUカバーに下から押し付けてあるだけのかなり安っぽい設計である。経年変化でスポンジが縮んでしまうとPUの高さ調整はできなくなる(小学生の夏休み工作レベルの設計だ)。
 コントロール部は3WAYセレクター、1ボリューム、1トーンとシンプルだがトーン・ノブはプッシュ&プッシュのヤマハお得意のバイサウンドスイッチとなっている。

 サウンドはSG−2000同様のスピネックスPU+スルーネックの常道で平坦な味気ないもの。よく言えばクセのないジャンルを選ばないと言うか・・・まあこのギターのコンセプトには合っているのであろうが・・・。

 このギターの最悪なところはヘッドが無いのでハンガーにかけられない上にボディ形状によりスタンドでも安定せず、ましてやまっすぐ立てかけることもできないこと。うっかり倒してネックを損傷してもスルーネックなので交換もできないのである。まあ軽量コンパクトなので玄関の傘立てにでも放り込んでおいてください(ウソ)。