FENDER U.S.A.
FLOYD ROSE CLASSIC HSS STRATOCASTER

with EMG SL-20



3トーンサンバーストのはずだがセンターのイエローがかなり少ないので雰囲気は台無し。

EMG/SL20のポットのトルクが低く、演奏中に触って動いてしまうのでボリュームノブは外してある。

これが本来のアッセンブリ、リアのHBはダンカン製でトーン・ノブを引っぱるとタップされる。

こちらはEMG/SL20にセットされているピックガード。薄手で頼りない。
 
う〜ん惜しい
これで3TSのフィニッシュさえ完璧なら・・・
  
 80年代前半にスティーブ・ルカサーの使用したEMG/SA×3、FRTの装備されたストラトタイプのギターは2種類存在する。先にこのセットアップが施されたのは64年製のフェンダー・ストラトキャスターであった。この改造ストラトは82年発売の「TOTO 4」では'59レスポールとともにメインとして使用されている。そしてこのEMGサウンドを非常に気に入ったルークはヴァレイアーツのマイク・マクガイアによってつくられたマホガニーボディのコンポーネントギターにもEMGをセットすることになるのである。これ以後メインギターはこのマホガニーSTへと移行してしまうが、この'64STは84年にVAのキルトメイプルを使用したチェリーサンバースト機が完成するまで常にステージに用意されていた。派手なキルト杢を身に纏ったチェリーサンバースト機はその後ルカサーモデルとして市販されヴァレイアーツギターの象徴となった。その意味ではこの64STはVA社とエンドース契約していたルークのメインギターとしては短命に終わることは至極当然のことであったのかもしれない。
 ルークはMUSICMANのヴィンテージタイプのトレモロをセットしたいわゆるMM LUKE2が開発される97年までEMG+FRT仕様のギターを使用しつづけることになるのだが、この最初の改造フェンダー・ストラトの存在なくしてはルカサーサウンドの確立は成し得なかっただろう。ルカサーファンの間でもあまり語られることのないこの64STであるが非常に重要なギターであることは間違いない。


 来年で20年選手となるマホボディのフェルナンデスFST−145SLの老朽化(ボディ割れなど)にともない代替機を以前から探していた。しかしながらストラトモデルのマホボディなど市販品ではルカサーコピーモデル以外には殆ど存在しない(そういえば高崎晃氏所有のヴィンテージマホSTがイケベにあったけど)。中古市場で数本フェルのルカサーモデルは見かけていたが当然21フレットでそれだと結局出番が少なくなってしまう。PGMあたりにオーダーすることも考えたがそれなりの予算が必要となることから今回はマホボディをあきらめ、22フレットを最優先にして探すこととした。そこで浮上してきた目標はマホSTと同時期にルークが使用していたEMG+FRT仕様に改造された'64 FENDER STRATOである。これならアルダーボディなのでどこにでも転がっているから22F仕様もザラにあるがどうせなら本家FENDER U.S.A.でというのが人情というものだろう。(笑)

 しかしヴィンテージタイプのストラトにFRTの後付けはいかにストラトと言えどもなかなか良いセットアップは難しい。ネックの差し角やRのきつい指板が特に問題となるのである。ところがさすがご本家フェンダー、FRT専用に設計したモデルがちゃんと用意されていた。その名も「FLOYD ROSE CLASSIC」である。FRTはザクリ無しにフィッティングでセットされているし、フラットなローズ指板で弦高を低くしてもチョーキングでの音詰まりが無い、しかもミディアム・ジャンボのフレットが22個打たれているのである。目標が決まれば早速ネットにて出物探しとなったわけだが国内楽器店HPでは見つからなかったがたまたま1週間後に訪れる予定のハワイの楽器店(有名和食店・和さびの近く)HPに掲載されていたので(しかもチョ〜格安)、直接見に行くこととなった。

 入国3日目の午後にその楽器屋へ行くと日系人のおやじ(たぶんオーナー)が年増の白人女性のエレアコ選びに狭い店内で大きな声で対応していた。仕方ないので狭い店内(くどい)を勝手に歩き回り目的のFRT-STを探すとまだありましたよ、安物のギターたちと一緒に寂しそうに。やっぱハワイでもDon't Touchかなと思い、とりあえず待つこと5分、あいかわらず大声で話しつづける2人にいいかげん嫌になって「見せてくれよ」と立派な日本語(笑)で言い放ち返事も聞かずに手にとってびっくり、ボディはUSAだがネックはなんとF/Japanであった。なんでここまできてF/Jに出会わなきゃなんないんでしょうかね〜ホントに、しかもピックガードの削り方もチョ〜手抜きだし。気を取り直して「相手が日系人なら値切りまくって安くなったら買ってやろう、ディマジオPUにFRTなんで最悪部品取りにでもなるし」なんて思いつつ(でも今考えると部品取りギターをわざわざハワイで買うかよ〜)、生音で試奏を続けあっちの商談が終わるのを待っていた。しばらくすると白人女性との商談は不調に終わったようで渋い顔をしながらこっちにやってきた。普通は「音出しましょうか」くらいは言うもんだがまるでしらんぷり。しょうがないからこっちからさっそく値引交渉に入ろうとするがこの日系店員「NO」の一点張りでぜんぜん取り合ってくれない。まあこの値段でもいいかぁなんて思いながらケースはどんなヤツかと聞くと「ケースはない、要るなら新品がソフトケース$80、ハードケース$120だ」なんて言いやがる。あ〜ぁすっかり買う気は失せましたよ私ゃ、手当たり次第に英文カタログ(あたりまえ)ひっ掴んで帰って来ちゃいました。結局ホテルとの往復のタクシー代が無駄になっただけ、やられました。

 そんなハワイの悪夢でしばらくFRT-STのことはあきらめていたんですが、いや〜さっすがNIPPONJAPANESE見つけましたよat御茶ノ水。ほぼ新品が半額以下でもちろんケース付き(でもハードケースはじゃまなんで新品の厚手のソフトケースに交換してもらっちゃいましたけどね)。へん、ざまーみろハワイ(ってハワイに怒ってもしょうがない、でも4月のハワイってよかったですよ雨は少ないし、それほど暑くないしねホント)。

 FRTつきのベース機が手に入れば次はルカサー御用達のEMGをとなるわけですが、EMGの方はすでに手持ちがあった。プロフェッショナル・シリーズとしてピックガードにアッセンブリごとセットされているルカサー仕様のSL−20をYオークションで格安で入手していたのである。しかも現在は生産されていない初期タイプで、SAをベースにルカサー専用にカスタマイズしたSA57と85のセットである(現行品はSLV+85)。本来のルーク使用のフェンダーは3SA+SPCであるがリアPUはHBのほうが使い勝手が良い、なぜならSPCは確かにHBのサウンドをシミュレートはするものの効きは微妙(確か6dbくらいのブースト)でクラプトンモデルのミッド・ブーストに慣れた身には何とも頼りない、パワーが足りないのである。

 ピックアップの交換作業をしようとして問題が発生した。このFLOYD ROSE CLASSICにはHSS(*)とHHの2種類のPUレイアウトが用意されているのであるが、1種類のボディで賄う為にPUのキャビティを1個のでかい長方形ザクリで済ませてあるのである。しかもSL−20のピックガードは薄手の柔らかい素材でこれではソリッド感が一層失われてしまう。そこで通常の黒・白・黒3プライのフェンダー・パーツでなくより硬い素材(材は不明)でできたピックガードを使用することにした。  
*日本ではPUレイアウトはフロント・ミドル・リアの順番で表記しているがFENDERでは逆のようだ。というよりまちがってるのはこっちということになるのか・・・

 肝心のサウンドはと言うと、フェンダーのレギュラーものなんてたいして使えないと踏んでいたがなかなかどうして良い。リアのHBは豊かな倍音成分とロングサスティンを、フロントのSA57はクリアトーンではヴィンテージ臭さを残しながらもふくよかなサウンドを生み出す。よ〜しこいつは使える、よかった〜あせってあっちで買わなくて。
 

EMG+FRT仕様の2本のルーク所有器
左がマホガニーBODYのVAでコンポーネントされたストラトで
後にROBOTに姿を変え使いつづけられた。
右が3トーン・サンバーストの
'64のFENDER STRATOCASTERである。