十数年前に、あるギター誌別冊のヨーロピアン・ギターの特集ページで小さな写真で掲載されたフランス製だというAPEXという名のギターを見てその特異なデザインとプリセット・サウンド・システムにとても興味をそそられていた。しかしながらその他に情報は全くなく実物はおろか雑誌でさえお目にかかることは無かった。きっとヨーロッパだけで売られていて日本にはないんだなと思い込んでいた。 ところがYオークションで「APEX スルーネック By 春日楽器」というタイトルを見つけ、フランス製だと思い込んでいたので???と思いながらもクリックするとまさにあのギターの画像が出てきた。どうやらパリのKamei Chenaouyという個人だかショップだかがデザインしたものを日本の春日楽器で生産していたらしい。 先ずはコントロールスイッチについて説明しよう 中段右の写真から― PUセレクターは常識的な3点式、フロント・リアのボリューム/トーンは2段式で外側がボリュームとなっている。6Pのロータリー・スイッチはコンプレッションの掛かり具合をコントロールするものでコンプレッションが強くなるに従い音が小さくなる。3つのミニスイッチは、@リアPUコイルタップ、AフロントPUコイルタップ、Bフェイズ・スイッチ(PUミックス時のみ機能する) 中段左のパネルの写真は― キャンセル・スイッチ・・・メモリー・スイッチを点灯させずに各コントロール・スイッチで好みのサウンドにセッティングできたら、プログラム・スイッチのカウンターを記憶させたい数字にした後、メモリー・スイッチを押して点灯させこのキャンセル・スイッチを押すことによりボリュームとトーン以外のセッティングがプリセットされる。 プログラム・スイッチ・・・0〜9のカウンターで10種類のプリセットサウンドを選べる。上下のプッシュスイッチによって数字を増減させる。 メモリー・スイッチ・・・これを押すとランプが点灯しプログラム・スイッチで選択されたセッティングになりボリュームとトーン以外のコントロールスイッチは利かなくなる。 普通プリセット・サウンドというと2〜3バンドのイコライザー・セッティングをミニスイッチでON/OFFするものが多いがこのAPEXはボリュームとトーン以外の全てのセッティング(PUセレクターやコイルタップまでも!)が10種類メモリーできるのである。裏面のパネルを開けると相当複雑そうな基盤が入っていた。 ボディ&ネック材は厚いラメ塗料に覆われ不明だが軽量。ボディデザインは裏から見ると海に泳ぐエイを横から見た感じでなかなか良い。当然この形ではフライングV同様に座って弾き難いが、写真で判るとおりバーが装備されているので膝の上で安定する。指板はローズでブラスナットと24のフレットが装備されている。 サウンドは見た目の印象ほど悪くない。ハムバッキング時には低音の効いた太い音が出る。PUを高めにセッティングしてディストーション系ではかなり使えるしクリーン系でもまずまず。スルーネックの為か特に低音弦のサステインは良い。 追記/94/06のGM誌「あなたのギター拝見!」コーナーにAPEXが掲載されている。所有者自身も質屋で購入した「フランス製の謎のギター」と呼び、スイッチの使い方もまるで判っていないようである。編集部でも色々手を尽くして調査したが全く判らなかったと書いている。(2001.01) |
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