安  庵  雑  感

2018.01.17


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ただいま冬眠中 

 全国的に昨年の11月後半からめっきり寒くなり、今年に入ってより強い寒波が押し寄せ、日本海側だけでなく滅多に雪など降らない四国や南九州地方の山沿いでも大雪に見舞われ、平地でも積雪するなどの一方で、私が住む神奈川は厳しい寒さこそ続きますが、連日冬晴れで陽光に恵まれているだけでも有難いと思っています。

 さて、この時期の蘭の管理は一年中で一番暇で、春蘭やエビネは冬囲いした戸外のフレーム内で冬眠中で、凍結に弱い寒蘭だけは室内に取り込んでおり、日々取り立ててやる事もなく水遣りも二十日に一度ほどで、陽当りの良い窓辺で、小欄掲載のテーマに思いを巡らせながら蘭関連の書籍を読んだりして過ごしています。

 私が蘭を始めた頃、蘭はもともと野生種なので、寒さには強いものだと聞いており、蘭を戸外の吹きっ晒しに置いていた冬に、友人らと二泊で雪見旅行した時の事、朝から天気も良く暖かかったので、たっぷりと蘭に灌水した夜に、関東地方が何年来と言う大寒波に襲われ、我家の蘭が大被害を被った苦い経験をした事がありました。

 冬の気温は暖かいと言っても、やはり低いものだから、灌水した水分が日中になくなると言うものではなく、たっぷりと鉢内は水分を含んだまま夜になり、そんな夜の不意を突く氷点下に及ぶ寒風には、如何に野生種と言っても、何の防御もない露天に晒さらされた寒蘭はもちろん、エビネや春蘭も過酷な凍害に泣かされたのでした。

 しかし、のんびりと湯に浸かり、温かい部屋で鍋をつついている私は、自宅の蘭が急激な寒さに襲われて悲鳴を上げている事など露知らず、異変に気付いたのは数日後の事で、寒蘭の葉はどれもこれも紫色の凍傷班が出ており、数か月経って春になり温かくなる頃には、次々に葉が枯れ上がって殆ど全滅になってしまったのでした。

 エビネもコオズ等の暖地系の葉は無惨にも真っ黒に、後になってバルブから芽を吹いたものの開花まで数年かかり、中国春蘭・日本春蘭は葉が少し傷んだ程度で大した影響が見られませんでしたが、それから何年間は
思うように生育せず、中には枯れてしまったものもあり、やはりこの時の凍傷のためだったかも知れません。

 それ以降は「黒﨑陽人」先生の教えに従って、冬場は万が一に備えて寒蘭は家の中に取り込み、春蘭は自作の屋根付き簡易フレームの開口部を内外二重に冬囲いする事で対策し、エビネも寒風除けのシートを張るなどの処置で以降はこんな失敗はありませんが、考えてみると冬季は冬眠栽培が如何に都合が良いという事です。

 つまり、冬の間の12月半ばから2月は、春蘭・エビネの作場はブルーシートで覆い、風と光を断ち、蘭の活動を抑える事をもう十年以上実施しており、こうする事で夜の厳しい寒気を防ぎ、温度が零下にならない一定の低温下で蘭を冬眠状態にする事で、色花の発色も良くなる一方、春以降の作にそれ程悪影響を与えないようです。

 好都合だというのは、蘭の栽培上、この2ヶ月間は数度の水遣り程度で、他には何もしなくても良いという事で、
私の場合は、展示会見学の計画や、花後の植替え時の用土・鉢・ラベル・肥料・消毒薬等々の不足品の補充など、その時になってバタバタしないように、この暇な時期にやる事にしていますが、それもまた楽しいものです。

 一方、寒蘭は家の中に取り込み、冬眠させずに朝の陽光の良く当たる窓際に置き、私と一緒に日向ぼっこさせており、昨年出た新芽の成長が一旦止まった晩秋以降も、この冬季の陽光で、わずかながら伸長もし、バルブも太らせるようで、それに初夏に新芽の出具合が早くなる事が確認されているので、この十年来続けています。

 何はともあれ、今年の厳しかった大寒波も今週には一旦治まりそうで、数日後の大寒が過ぎると来月4日には立春と、ゆっくりながら確実に春の足音が聞こえ出し、三寒四温を経て春を待ちわびていた春蘭も徐々に目覚めて、我ら愛蘭家共々躍動する季節になるのです。
  

 作場の状況
 

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