「第三の男」(THE THIRDMAN)
アントン・カラス氏の奏でるシターの調べに乗ってはじまるオープニング。
大戦後間もない荒廃したウィーン。大観覧車。夜の大追跡。
そして、あまりに印象的なラストシーン。どこまでも続くイチョウ並木。
映画「第三の男」といえば、このような有名なシーンに彩られた名作であり
見所はというと、オーソン・ウェルズの演技やカメラワークの素晴らしさなどなど枚挙に暇がない。
しかし、主人公であるホリー・マーチンス(ジョセフ・コットン)の淡い恋心を描いたシーンが
特に僕の印象に残っているのだ。
〜亡き友ハリーの恋人だったアンナに、いつしか惹かれるホリー。別れを告げに訪れた彼女の部屋で〜
ホリー:
「初めて笑顔を見せたね。もう一度笑って」
アンナ:
「2度笑うほどおかしくないわ」
ホリー:
「おかしな顔で 逆立ちして 脚の間から笑いかけ 冗談いっても 笑ってくれないか」
アンナ:
「・・・・・」
ホリー:
「恋人でも見つけろといったね」
〜恋人ハリーへの想いをホリーに伝えるアンナ〜
アンナ:
「未練などないわ。でもまだ(彼は)私の一部なの」
もちろん、「第三の男」は第一級のサスペンス映画である。恋愛映画ではない。
しかし冒頭にも挙げたラストシーンの印象深さは、
この主人公たちの内面を見事に描ききったからなのではないだろうか?
さえない男の切ない想いを演じたジョセフ・コットンに拍手。