図−A・図−BはTopics-2で取り上げたK邸の家族室の天井面にスポットをあてたイラストです。
全体の天井を全て高くしてしまう場合と、梁型を利用して下がり天井を組み合わせたものを比較したケースです。
下がり天井を作ることにより、それ以外の部分をより高く見せるという効果の他に、そこに出来たふところを利用して間接照明や埋め込み照明を配したり、低い部分と高い部分とで色彩を変えてみることなどで、限られた面積の部屋全体に変化を与えています。
『押入を増やしても、収納物の形に合わなければ無駄になる場合も』
物が多くなってきたとの理由については、当然のように持っている物の整理をする必要性があるわけですが、誰でも捨てきれずに持ち続けている物のひとつやふたつはあるはずです。 そのためにも限られた面積での収納計画が集合住宅での改装では重要になってきます。
一般的に集合住宅では、当初から納戸やタンス置場が設置されているのはまれで、収納が何間の押入があるかで、多い少ないと語られるケースが多いようです。
ただ冷静に考えてみると、押入の奥行き寸法は布団以外の物には合わないわけですから、押入ばかり多く造ったからといって、収納計画を解決したことにはなりません。
本来収納計画のポイントとは、物をしまい込む場所を多く確保するというのではなく、すぐ使い得る態勢で、それぞれに相応しい場所を確保することだと思います。 どちらにしても生活のスタイルがあって、それぞれが決定されるわけですから、自分の生活スタイルを発見し、上手に計画したいものです。
***(3)施工時の留意点***
『壁一枚隔てたところに第三者が住んでいることを忘れずに』
集合住宅の場合、そのほとんどに管理組合と称する、その建物で住まうことを管理運営し、維持管理していく組織があります。 そこでは改装に当たっての制約を設けているケースもみられますので、計画に際して事前に確認する必要があります。
具体的には、工事期間、工事内容、工事時間等々で、共同で生活を営んでいるがゆえの条件付けがなされます。 また、マンションによっては譲渡契約の際に、将来にわたって位置を変えてはいけないゾーン、例えば縦の配管スペースにからむ設備関係諸室などをうたっている場合もありますので、これもまた、事前に確認が必要となります。 この辺が全ての責任は自分で処理すればいい戸建住宅との大きな違いです。
工事期間中も壁ひとつ隔てたところで、第三者の生活が営まれているわけで、制約とは別に、工事する側の配慮が、スムーズに工事を進める上でも必要不可欠となります。
***(4)工事の出来る範囲と問題点***
『水回りの移動は上下階との関係から排水管の位置で決まる』
当然のように改装できる部分とは、契約上の専有部分とうたわれている部分のことで、主体構造(各スラブ・柱・梁)を除くその内側の部分ということになります。 外壁、バルコニー、外廊下、PS(配管用パイプスペース)などは共有部分となり、改装に当たって個人として手をつけることの出来ない範囲です。 また最近の傾向として窓サッシも共用部分に指定している管理組合も多くなってきており、事前の確認が必要です。
専有部分にあるけれども手をつけられないもが他にもあります。 それにはPSへの給排水接続口などがあげられます。 便所、厨房セット、浴室ユニットなどは位置を変えることは可能ですが、給水管はともかく排水管は最終的に既設の接続口に接続しなければなりません。
つまり、水回りを移動できる範囲とは、各排水管が自然流で、この接続口に流れる範囲ということになり、PSの位置と微妙にからみあい、改装に当たって配慮が必要です。
『給湯器を取り替える場合、共用部分を利用できるかがポイント』
また、それに伴って気をつけなければならないものに給湯計画があげられます。 これは改装に至る年月が購入後約10年程度の時期が多く、従って設備的に、ひと昔前のものが使われているからで、改装にあたり当然能力のバージョンアップが要求されるからです。
多く見られるケースとして、室内に設置されているバランス型の給湯器を、現在主流の屋外設置型に変更するというケースです。 この場合、専有部分(室内)にあった給湯器をバルコニー、共用廊下などの共用部分に設置することになるため、事前の確認が必要になります。 一般的には外壁などに、配管用スリーブ(配管用の壁穴)を新規に開けるのは不可、既設スリーブを利用できる場合は可、といったケースが多いようです。
『電気容量は建物全体で決まっているので、安易に増容量できない』
電気容量(戸別契約アンペア)の問題は共有部分というより建物全体とからみ合う重要な問題です。 現在、過剰設備といわれるぐらい家中の設備がオートメーション化されていますが、これらは全て電気と接点があります。 また、IT化に拍車がかかり、パソコンやインターネットも一家に一台ではなく、ひとりに一台の時代に入りつつあります。
そこで、それらを導入するにあたり現在の電気容量でまかないきれなくなるケースがよくみられます。 その時点で契約電気容量を上げればよいと安易に考えている方が多いようです。
しかし集合住宅の場合、建物全体で必要容量を設定して引き込んで、それから各住戸へ分配していますので、その容量に余裕がある場合は別ですが、それぞれの住戸で勝手に契約容量を上げると、当初考慮されたバランスを崩すことにつながるわけです。
最近建築された建物は割合余裕がある設定をしているようですが、建築年数が経てば経つほど各住戸の設定容量の余裕が少ないようです。 従って設定容量の小さい建物ほど、他の住戸におよぼす影響が大きくなると考えられます。
以上のように改装にあたっての設備的な変更は建物全体と大きな関わり合いをもっていますので、計画にあたって綿密な事前調査が必要になります。
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