Yadokari-XGの特徴

世の中にX線結晶構造解析のソフトは,商用・非商用のものを含めて数多くが出回っていますが,これらはみな「結晶屋さん」が作ったソフトです。しかしYadokari-XGは,世の中でおそらく唯一の「有機化学屋が作ったX線結晶構造解析ソフト」です。実際に「現場」での必要に迫られて作られたソフトだからこそ,他にはない数々の特徴があります(当然,他にはあってYadokari-XGにないものもたくさんある)。
 

基本的な考え方

 Yadokari-XGにやどかりという名前がついているゆえんは,
基本的に,自分では何もせず,他のソフトの機能を借りて動いている
ということです。よって,ここで述べる特徴はほとんど他の優秀なソフトの機能であることが多いです。その点をよく考慮の上,以下の説明をお読みください。
 

SHELXL-97を用いた最小二乗法構造精密化

 Yadokari-XGはSHELXL-97を用いて構造の精密化を行います。すでに結晶解析においては世界標準であり,その優秀性は僕が述べるまでもありませんが,念のため書いておきますと,作者の理解している範囲では, などなど。
 で,Yadokari-XGはこのSHELXLの機能をできるだけ活用できるように作られています。よって,LSQに関しては世界最高性能を誇ります(あたりまえ)。
 注意:SHELXL(およびSHELXS)を使うには登録が必要です。また論文のreferenceに忘れず引用してください。詳しくはSHELXのホームページへ。
 

優れたdisorderの取り扱い

 SHELXLはdisorderを非常にうまく扱えますが,Yadokari-XGはdisorderの扱いではこのSHELXLの機能を使いこなせるよう,優れた画面表示機能および操作性を有しています。具体的には, など。例えば以下のようなdisorderの場合

(K. Wakita, N. Tokitoh, and R. Okazaki, Bull. Chem. Soc. Jpn., 73, 2157-2158 (2000).),Yadokari-XGを用いることで,初めてdisorderの様子が明らかになり,適切に構造精密化を行うことができました。
 多くの有機分子の結晶にはdisorderが見られます。「R値が下がらない」といってdifabsをかけたり,結晶のせいにしたり,あきらめたりする前にdisorderを考えてみる価値は十二分にあります。これまであきらめていたような複雑なdisorderでも,SHELXLとYadokari-XGを用いれば何とかなるかもしれません。
 ちなみに上の絵は,Yadokari-XGから絵をコピーして,若干加工して作ったものです。
 

直接法はSHELXS-97,SIR97に対応

 初期構造を求めるには現在ではほとんど直接法が使われると思いますが,Yadokari-XGには現在代表的な直接法のプログラムであるSHELXS-97とSIR97の両方に対応しています。SHELXS-97は高速で,たいていの分子において正しい構造を求めてくれます。しかし作者の経験では,SIR97はより強力で,SHELXSでだめな系(某社のCCDで測定したデータ等)でも初期構造が求まり,解析可能になることが多くあります。SIR97のホームページから入手して使ってください。
 注意:SIR97を使う際も必ず登録してください。またreferenceに入れるのを忘れないように
 

DIRDIF 99.2インターフェースを搭載

 重原子パターソン法のプログラムとして有名なDIRDIF 99.2のWindows版用のインターフェースを搭載しています。重原子のある構造を解いたり,また現在の部分構造を拡張するのにDIRDIFを用いることができます。
 

独自の空間群判定プログラムYadokari-SGを搭載

 独自のアルゴリズムに基づき,消滅則その他から空間群の判定が行えるプログラムYadokari-SGを搭載しています。データが悪い場合には,条件を少しずつゆるくしていって可能性のある空間群を探すことができます。しかも計算はきわめて高速です。
 Yadokari-SGのアルゴリズムは,秋根茂久氏(現筑波大学助手)の考案によるものです。作者は彼の言うとおりにプログラムを組んだだけです。
 

ORTEP図が描ける

 Yadokari-XGには,Oak RidgeのORTEP-IIIプログラムとのインターフェースが搭載されているので,ORTEP図が描けます(解析ソフトとしては当たり前なんですが,これが大変だったんです)。さらに,PostScriptプリンタでなくてもORTEP図が出力できたり,カラーのORTEP図をそのままクリップボード経由で他のソフトに貼り付けたり,BMPファイルに保存したりできます。ORTEP図の入ったOHP作成が格段にスピードアップします。
 

POV-Rayインターフェースにより超リアルな分子モデルが作成可能

 いい結晶が取れたら,やっぱりきれいな分子モデルを作ってOHPにしたくなるのが人情です。たいていの解析ソフトにはSpaceFillingモデルを作る機能がついていますが,かなり手抜きして作られていて,筆者から見たらあまりリアルとはいえないものでした。
 Yadokari-XGは,POV-Rayというレイトレーシングプログラムを用いることで,従来のモデルとは比較にならないほどリアルで美しい分子モデルを作成することができます。POV-Rayはレイトレーシングのソフトとして世界中で広く使われているフリーソフトで,非常に豊富な機能を持っています。Yadokari-XGは分子の座標をPOV-Rayの入力ファイル形式で出力し,あとはPOV-Rayに計算してもらうことで,

例えばこんな分子モデルが簡単に作れます。
 結局ここでもYadokari-XG自体は何もしてなくて,他のソフトの力を借りているだけなんですが,せっかくこんな優秀なレンダラーがあるのだから使わない手はありません。
 ちなみに上の絵は,Mes2S2(空間群P21/a)のパッキング図です(データ提供:東京大学大学院理学系研究科化学専攻 川島研究室)。
 

軽快な操作性と表示

 Windowsプログラムらしく,メニューやツールバー,右クリックといった軽快な操作ができます。原子の割り当ては右クリックすると可能な原子が表示され,いちいち周期表から選ぶ必要はありません(分子式に設定されている原子しか出てきません)。またキーボードに操作を割り当てることで,"C"を押すと炭素原子を割り当てるといったより簡単な操作も可能です。さらにChemDraw風の投げ縄選択機能も搭載しています。また選択中でもシフトキーを押しながらドラックすることで簡単にモデルを回転できます。
 一方表示に関しても,水素原子の表示/非表示が簡単に切り替えられたり,不要な部分を一時的に隠したり,必要なフラグメントのみ表示したりといった柔軟性を有しています。大分子の操作には非常に便利です(この辺の機能はChem3Dを参考にしています)。
 

特殊位置の表示が可能

単位格子が表示できるのはもちろんですが,対称要素から特殊位置を計算して画面上に表示できます。例えば下図は((Me3Si)2CH)3C6H3,hexagonal,空間群P63/mの格子ですが,

分子の中心に対称軸があり,またベンゼン環が対称面上に乗っていることがよく分かります。このように,対称心・対称軸・対称面の計算・表示ができます。特殊位置のそばにある原子を判断したり,空間群の学習にも大変便利です。
 上の絵はYadokari-XG動作中の画面です。この状態で分子を自由に回転させることもできます。
 注:現在のバージョンでは,軸に平行でない対称要素は扱えません(P23の3回軸等)。あしからず。
 

Gaussian Outputファイル表示機能を搭載


Yadokari-XGの「G」は,Gaussianインターフェースの意味です。Gaussian 98の出力ファイルを読み込んで構造を表示したり,NMRシフト値を標準ファイルから引き算して表示したりできます。



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