添付資料

データソースの問題点

内務省からのレポートには各月の国籍別・渡航目的別出入国者数が示されているのであるが、観光統計を作成するうえでの問題は、ここで示されている入国者数が民間航空協会からのデータに比べて常にかなり低い数字になっていることである。出国者の数と比べても入国者の数が平均して二割から三割少ない数になっていた。

当時の出入国データの流れは、まず空港の係官がEDカード(出入国カード)を基にその日一日の出入国者の国籍や渡航目的などを手書きで集計する。その結果は内務省内でカンボディアの全ての出入国地点を統括する Office No5 に送られ、各チェックポイント毎に集計される。そして最終的なデータは同じく内務省内の Control Foreigner Department で処理され、ここで毎月の国籍別出入国統計が作成されるとのことであった。

問題はこれらの作業が全て手作業で行われているということである。国籍別の出入国データを手作業で集計するとかなり手間のかかる作業である。当然ミスも発生しやすい。加えて、これらの作業は空港の係官にとっては何のメリットも無い仕事なので、勢い仕事は雑になりがちである。ビザの発給を行なう部署とパスポートコントロールを行なう部署は別々なので、ビザ代の着服だけがデータの誤差の原因とは言えないだろうとのことであったが、入国者数が出国者数を常に下回ることから考えて、集計作業において何らかの圧力がかかっていたものと思われる。

もともと信頼性の薄いデータではあるが、観光省としては観光統計作成のためにはこのデータ以外に頼る物が無いために、毎月の観光統計レポートを作成するに当たってはかなり強引な手法をとらざるをえなかった。その方法とは民間航空協会 (Civil Aviation Authority) からのデータと内務省からのデータを比較し、入国者が明らかに少ない場合は入国者数の合計として民間航空協会からのデータを採用し、内務省による総入国者数と民間航空協会による総入国者数を割って得られる係数を、それぞれの国籍別のデータにかけるという方法である。つまり民間航空協会からのデータが1万人で内務省からのデータが7千人だとすると二つを割った1.43を係数とし、日本人なりフランス人なりのそれぞれのデータに一律1.43をかけたのである。

これはもはや統計とは言えない代物ではあったが、UNDP からの専門家に何か他に方法は無いかと尋ねたところ、彼もこの方法でやるよりしかたがないと話していた。そのため内務省からの数字に意図的な差が見られなくなる95年2月頃まで、このような方法で観光統計レポートの作成が続けられた。