隊員報告書

第5号(24ヶ月目

1995年 12月 5日提出

  業務内容

(A)延長後の活動

a)現在までの業務の流れ

1)観光統計関係の業務

 まず初めに、四号報告書提出以降の業務内容について。

 最初に統計関係の業務に関してであるが、現在は日常業務として統計オフィスのスタッフが毎月の観光統計レポートなどを作成しており、私は主にこの業務の技術面でのサポートを中心に行っている。具体的には、表計算ソフト(Excel 5)でのグラフや新しい表を作成する場合の問題解決の手伝い、クメール語での観光統計レポートを作成する場合のアドバイスなど、主にコンピュータを使用する場面でのサポートが中心になっている。これらの業務は観光省の業務として、統計オフィスの若手スタッフとカウンターパートのチャンター (Mr. Tith Chantha) が行っており、私は彼らの業務で問題が起こった場合のサポート、問題が起こりそうな状況のトラブル回避など、バックアップを中心に行っている。 以前は統計オフィス専用のコンピュータが無く、一階にあるUNDPのオフィスのコンピュータを使わせてもらったり、JOCVの支援経費にて購入したノートパソコンを使ってデータの処理などを行っていたのだが、七月の上旬よりUNDPのコンピュータの一台をほぼ統計オフィス専用のコンピュータとして使用できることになり、現在統計オフィスの業務はすべてこのコンピュータを使って処理されている。

 以前からずっと問題として提起している統計データの信頼性についてであるが、今年の初め頃にあった、内務省の出入国統計における出国者の数と入国者の数が極端に違うという事は現在ではあまりなくなってきている。しかし、データは相変わらず紙の上に処理されたオフィシャルのレターの形で内務省から送られてきている。このレターは今でも手書きのままである。また、95年上半期のデータについては、内務省からの出入国統計レポートの入国者数と出国者数が、常に入国者のほうが少ない状態で偏っている上、内務省発表による入国者の数が民間航空協会からのレポートによるポチェントン空港での入国者の数よりも少ない(飛行機で到着した乗客のうちのかなりの数がそのまま入国していないことになる)という状態であったため、数字に信頼性が低いと判断して民間航空協会の出入国者数のデータと照らし合わせて補正を行なっていたのであるが、五月ぐらいから出国者数と入国者数の極端な食い違いが無くなった事から、現在では補正を行なわないで内務省の数字だけを元にレポートを作成している。

 この件に関しては、裏話として、内務省側から自分達で提供している報告書の数字と、観光省で作成したレポートの数字に食い違いがあるのはどういう訳かというクレームがつき、カウンターパートのチャンターが内務省側に、婉曲にではあるが、出国者と入国者の数字に大きな食い違いがあるのは問題ではないかと提起した結果、数字の食い違いが少なくなったので内務省側の主張を受け入れる事にしたという経緯がある。また、間接的にではあるが内務省側からの圧力もあり(データを受け取るまで非常に時間がかかるようになった)観光省側としては受け入れざるを得なかったという背景もある。

 観光省の統計オフィスとしては、一日も早く信頼できるデータを生に近い形で入手したいといろいろと努力しているのであるが、役所同士の力関係としてはどうしても内務省のほうが観光省よりも強く、また出入国統計の唯一の入手先である内務省にたいして強い事が言えないという事情があるようである。役所同士の仲違いというか、強調がとれないという事は何もカンボディアに限った事ではないにせよ、こうすればもっと仕事が楽になる、あるいはもっと良いものが作れると思っていても、上のほうの事情によってそれがうまくいかないというのは歯がゆいものである。

 後述するUNDPのMISデータベースが完成すれば夢も現実となるのであるが、この話しは昨年以来続いているにもかかわらず、様々な障害によって未だ達成されていない。今年度のプロジェクトでは昨年よりも具体的に動いてはいるものの、今一つ観光省とのコンセンサスが得られておらず、また内務省側の壁は相変わらず高いようで、予定の六月までに完成できるかどうかは何とも言えない状態である。

 

2)旅行者にたいするアンケート調査

 観光統計レポート作成以外の業務としては、旅行者にたいするアンケート調査があげられる。この調査は昨年、UNDPの専門家としてやって来たヘンリーが中心にポチェントン空港で行なった調査を引き継ぐもので、観光客の動向や旅行産業収支の概算を算出する上で欠かせないものである。本来であれば、毎月、あるいは四半期毎に定期的に調査を行うべきなのであるが、まだ統計オフィス独自で調査を行なった実績も無く、観光省の上層部の理解がなかなか得られないために、当初11月にポチェントン空港での調査を予定していたものの、未だに実施できない状態にある。

  昨年の調査はあくまでもUNDPが主導であり、質問紙の作成からレポートの作成までほとんど専門家の独力で行われてしまったため、実務のカウンターパートへの移転が十分行われなかったという問題があった。今回はこの調査に関してUNDPは基本的にノータッチという事なので、私とチャンターを中心にして質問紙に必要な項目を抽出し、最終的にはA4の紙一枚でまとめる事になった。これは昨年の場合、調査項目がかなりあり、答えるのが繁雑であったために十分な数のサンプルが得られなかったという経緯を踏まえての事である。

 質問紙は、英語、フランス語、日本語、中国語の四種類で、空港にスタッフを配置して基本的に面接法で調査を行う予定である。この調査に関してはなかなか観光省の上層部の理解が得られないために、予算獲得の目処がたたず、空港での調査は諦めてホテルや旅行代理店に依頼する形で実行しようと話しを進めていた。しかし、最近になってUNDPのプロジェクトマネージャーがこのプロジェクトに理解を示し、最低限必要な予算の援助と、現在統計オフィスのスタッフが参加しているコンピュータトレーニングの一時延期が可能になりそうで、順調に進めば十二月の中旬から約二週間、ポチェントン空港でのアンケート調査が実現しそうである。

 最終決定ではないが、現時点での予定では調査は12月18日から12月30日の約二週間にわたって行ない、日曜日も含めた毎日、原則的に朝の始発便から夜の最終便までの間、空港の出発ロビーに待機している乗客にたいしてアンケート調査を依頼する予定である。予定サンプル数はまだ確定していないが、二週間しっかりと調査が行えれば、有効回答で千件は望めるのではないかと考えている。

 

3)コンピュータトレーニング

 次にコンピュータのトレーニング関係であるが、統計オフィスのスタッフにたいする基本的なトレーニングは前回の報告書を提出した時点で一応終了しており、それ以降はしばらくの間、それぞれの自主的な練習のサポートを行なった。今回のトレーニングではたった一台のノートパソコンを使い、十人近いスタッフにウィンドウズの基本からワードプロセッサーの使い方、表計算ソフトの使い方を教えたのだが、練習時間が少なかったのと取組姿勢に非常に個人差があるため、ある程度使いこなせるようになったのはそのうちの半分くらいであった。やはり積極的に知識を吸収しようとするスタッフは飲み込みも早く、自分でいろいろと課題を探してくるので上達が早い。

 職場でのコンピュータの使われ方で一番多いのはやはりワードプロセッサによる文書の作成で、自主的な練習ではクメール語の公文書の作成、表のある文書の作成などを中心に行なっていた。英文ワープロでクメール語の文書を作成するのは若干使いづらい面があるのだが、それにもかかわらず日々地道に練習したおかげで、今ではほとんどの文書は自分達で作成できるようになっている。また、三名ほどのスタッフはカウンターパートのチャンターに代わってExcelで統計レポートを作成するようになり、こちらも今ではすっかり業務の中心的役割を担うようになっている。ソフトウェアが全て英語で、カンボディア語で書かれた入門書などがほとんど皆無に近い状態なので、独学で全てをマスターするのはかなり難しいと思われるのであるが、試行錯誤を繰り返しながら、時には私のところに助けてくれと駆け込みつつ、どうにか基本的な事は彼らだけで処理できるようになったようである。

 また、8月15日から10月下旬にかけて、週に二回、午後の時間を使って統計オフィスの五人のスタッフにデータベースソフトであるAccessの授業を行なった。これは、今後の業務を考える上でデータベースの操作方法をマスターする事は必ず必要になってくる事なので、まずは基本的な概念と簡単な操作方法の習得を目的にして行なった。データベースというのは表計算ソフトと似ている部分も多いのであるが、目で見ただけではわからない概念的な部分が非常に多く、それを理解しない事には使いこなす事ができないので教えるのは非常に大変であった。クメール語を使って説明しようにもうまく言い表す表現が無かったり、どうしてわざわざデータベースを使うのかその必要性が理解してもらえなかったりで、自分の力不足を痛感させられる事が多かった。

授業の内容としては

1 データベースの基本概念

2 テーブルの設計、データの入力・修正、他のデータベースからのインポート

3 フィルター及びソート、クエリーによるレコードの抽出

4 リレーショナルデータベースの概念と操作方法

5 ウィザードによるレポートの作成

6 フォームの作成とプロパティ・オブジェクトについて

7 ピヴォットテーブルを使ったExcelによるデータの分析

などを行なった。

今回の授業ではごく基本的なデータベースの操作と簡単なアプリケーションの作成を目的に行なったのであるが、これで今すぐ自分達で業務用のアプリケーションを作成できるかというと、やはりまだまだそこまでは達していないのが現状である。ただ、彼らにはもっと学びたいという意欲はあるようなので、これからの残りの時間でアンケート調査用のアプリケーションの作成は何とかできるようにしていきたいと考えている。たとえ時間はかかるにせよ、必要に駆られて何種類かのデータベースを作成していく内に、段々とマスターしていくのではないかと考えている。

しっかりしたデータベースができてしまえば、日常的な運用に関してはデータベースの事を知らない人でも十分業務がこなせるのであるが、現状ではアプリケーションの作成・保守ができるスタッフがいないため、何か仕様の変更が必要になった場合には対処できないであろう。UNDPのMISデータベースが導入されたとして、それが高いお土産に終わらないためにも、データベースを運用できるスタッフの育成は急務であると考えているので、今後もこの点には重点をおいて活動を続けていきたいと考えている。

 

4)UNDPとの関係

 そして最後に現在一番頭を悩ませているUNDPとの仕事の関係についてである。観光省におけるUNDPによる援助は昨年から始まっており、昨年度は私の仕事に関係した分野では、統計の専門家による旅行者にたいするアンケート調査、プノンペンのホテル・レストランの調査などが行なわれた。これらによって得られた資料は貴重なものではあるのだが、基本的に問題なのは仕事が全てUNDPを中心に回っており、カウンターパートやスタッフへのノウハウの移転が十分に行なわれなかった事にある。たしかに限られた任期中にプロジェクトを完成させなければならないという事情は理解でき、そのためには観光省のスタッフに全てを任せる方法では時間がかかり過ぎるという事もわかるのだが、結果的に観光省の中に成果があまり残らないという事になってしまった。

 また、プロジェクトが一年契約であり、次の年のプロジェクトに前の年のプロジェクトがあまり引き継がれていないという事も問題である。UNDPのスタッフはプロジェクトマネージャーをはじめとしてほとんどの人が入れ代わってしまい、新しいプロジェクトはほとんど一から調査をやり直している内に半分近い時間が過ぎ去ってしまうのである。そのため、結果的にプロジェクトの実際の運用は短期決戦の様相を呈し、結果的に定着しないままに任期が終わってしまうという事になってしまう。

 今年のプロジェクトの中心的課題は観光省へのMISデータベース (Management Information System Database) の導入であり、概略としては観光省にデータベースサーバーを設置して各部署の情報を一元管理し、内務省や他の省庁などともネットワークを接続してデータ運用していこうという計画である。たしかにこれがそのまま実現すれば素晴らしい事ではあるが、現実には観光省内の業務の役割分担、実際の業務内容のフォーマットも未だにきちんと確立していない状態であり、午後などは開店休業状態にあるところが多いのが実情である。そのため実際の導入にはかなりの困難が伴う事が予想される。

 私が一番関心があるのは内務省の出入国管理部とのネットワークの確立であり、これは文字どおりのネットワークであればもちろんベストであるし、あるいは概念的な意味でのネットワークでも十分なのである。つまり、内務省側でも基本的なデータの管理にコンピュータを導入してもらい、そのデータをどういう形にせよこちらに供給してもらえれば今抱えている問題の多くはすぐにも解決できるのである。このためには内務省へのサポートとトレーニングが課題となるのであるが、どうもそれが非常に難しいようである。

 現実に、昨年末に空港に導入されたコンピュータは今でも使われていない様子であるし、内務省内での出入国者データの管理も相変わらず手書きの書類上で行なわれているようである。なぜ、内務省へのコンピュータの導入ができないのかはなかなか真相がつかめないのであるが、その原因には内務省の職員(警察官)がコンピュータを使いたがらない、あるいは使いこなせないという事が一つ、そして、これは憶測かもしれないがデータを操作する余地が無くなる事を嫌がる、あるいは、データが素通しになってしまう事を恐れているという事情があるようである。

 内務省へのサポートもUNDPが中心になって行なっているのであるが、今の状況から言って観光省内へのMISの導入よりも更に一層の困難が予想される。仮に内務省へのMISの導入が今回は失敗に終わったにせよ、観光省へのMISの導入はそれはそれでうまく機能すれば有効ではあるのだが、こちらも今の状況から見てこれからかなりの紆余曲折が予想される。

 と言うのも、第一に観光省の Department(部)のチーフ(部長)クラスに当たる人達が、未だにMISがどういうもので、導入した場合にどのようなメリットがあるのか今一つ理解していないような節があるからである。これは、UNDPと観光省の中堅職員との間でのコンセンサスがうまく取れていないのが理由のようで、カウンターパートのチャンターも今回のプロジェクトはもしかしたらうまくいかないかもしれないと述べている。 UNDPの計画によれば、今後UNDPのSEを中心にしてデータベースの基本設計を行ない、来年から各部署のスタッフを集めてワークグループを組織し、各部署でデータベース化する必要のあるデータをピックアップしてデータベースを構築していく事になっている。しかし、どうもこのワークグループに選ばれているスタッフ達が実際の業務を担当している者ではなく、職場に入って日の浅い若手のスタッフが中心らしいとのことである。その場合、実務経験の少ないスタッフでは本当に必要な情報の選択や、普段の業務の流れの把握が困難であると予想され、担当部署、UNDP双方の要求に応えきれない可能性がある。 このような状況下で、私は一体これからどのように仕事を進めていけば良いのか少々途方に暮れているのが現実である。UNDPのプロジェクトマネージャーであるジョン (Jhon Engrith) からは以前、MISの導入にあたって、これからは統計オフィスの仕事ではなくMISの導入に専念して欲しいとの申し入れを受けたのであるが、残念ながら私はUNDPの職員でもローカルスタッフでもなく、観光省に日本からのボランティアとして派遣されているので、プロジェクトには観光省サイドとして協力はするが、それだけに専念するのは難しいという事を話してある。

これは、個人的にはこのプロジェクトを積極的に支援したいとは思っているのだが、観光省側との実際面での協力関係が成り立っていない限り、プロジェクトの成功は難しくなってしまうし、自分の今後の仕事もやりにくくなってしまう可能性があるからである。かと言って、計画が簡単に頓挫してしまったらせっかく多額の予算をつぎ込んだプロジェクトが水の泡になってしまい、観光省にはまたもやコンピュータが残るだけという事になってしまう。現在は何とか両者の間でうまい接点と解決策が無いものかと模索しているところであるが、今しばらくは悩み多き日々が続きそうである。

 また、MIS導入の一環として、現在UNDP主宰でスタッフにたいするコンピュータトレーニングが行なわれていて、私は三クラスあるうちの初心者向けの二クラスを受け持って授業を行なっている。授業は毎週月曜日から金曜日まで、朝の八時から九時までが上級者クラスで、オーストラリア人のSEであるスティーブが授業を担当している。授業内容はWordとExcelの応用とAccessについてがメインで、この他に若干ネットワークの管理についてが含まれる。私はその後の九時からと十時からで、生徒は基本的に各Department から選ばれて来ている。

 クラスは一クラス七人で、コンピュータは一人一台と豪勢である。期間は三ヶ月間で、その間にウィンドウズの基本、Word、Excelと、クメール語での文書作成を教える予定である。現在は最初の Introduction が終了し、Wordの練習に入っている。スタッフのレベルは、半分がすでに業務でコンピュータを使っていたりある程度コンピュータを使え、残りの半分が丸っきりの初心者なので授業の進め方が難しい。初心者に合わせるとできる者は退屈するし、できる者に合わせると初心者は付いてこれないので、その兼合いに苦労している。それでもまあ、それなりに熱心に授業を受けてくれるのが救いではある。今回の授業では前回のように行き当たりばったりではなく、最初に綿密な授業計画を作って、教材と練習問題を使いながら授業を行なっているので、後任の方がもしも同じ局面に立たされた場合教材の使い回しができるかもしれない。

現在授業では統計オフィスのスタッフであるロッター (Mr. Ek Rotha) にサポートをしてもらっており、できれば将来的には彼が他のスタッフの養成をできるようになってもらいたいと思っている。

この三ヶ月のコースが終わった後どうなるかは正直に言ってまだわからない。また、新たなクラスを受けもって欲しいとの要請を受けるかもしれないが、できればそれは断わり、観光省のスタッフの立場からMISの導入のサポートを続けていきたいと考えている。毎日が日々微妙な綱渡りである。

 

b)延長に伴う業務計画

 上に述べたような理由から、今後六ヶ月間の業務計画は状況次第でどのようにでも変わる可能性があり、はっきりとした計画は非常に立てにくい状況にあるが、大まかに言えば現在受け持っているUNDP主宰のコンピュータトレーニングを二月中旬まで行ない、それと平行して統計オフィスが予定している旅行者にたいするアンケート調査のサポート、具体的には日本語及び中国語の質問紙の作成、質問紙を集計するためのデータベースアプリケーションの作成の補助、分析とレポート作成のサポートを行なっていく予定である。 アンケート調査の詳細な仕様は現在のところ未確定であるが、大まかなアウトラインとしては、調査期間が12月18日から12月30日までの毎日。調査地点はポチェントン空港の出発ロビー内で、調査時間は始発便の出発前から最終便の出発直前まで。質問紙は英語、フランス語、日本語、中国語の四種類を用意し、統計オフィスのスタッフが調査員となって基本的に面接法にて旅行者に調査を依頼する。

 調査に必要な予算獲得については、カウンターパートのチャンターが引き続き観光省の上層部に働きかけるとは話しているのだが、それがだめな場合はUNDPの支援に頼る事になる。申請する予算は基本的に最低限のもので、空港へのスタッフの移動に伴う足(観光省にはバスがあるのだが、運転手への報酬は別になっている)、スタッフの食事代、超過労働と休日出勤の分の手当、及び調査に必要な消耗品などを申請する事になるであろう。昨年の調査ではUNDPがそれなりの額の手当を払っていたようであるが、今回はできるだけ不満が出ない最低限の基準に押さえていきたい。なにしろ観光省の予算ではなく、外国からの援助のお金であるから、それがあたりまえになってしまうのは避けなくてはならない。 チャンターの話しによれば、たとえ予算が無くとも、スタッフにたいして仕事を強制する事ももちろんできるのであるが、なにしろ給料が安い(月10$から20$)ので、みんななにがしかの生活防衛をしており、二週間にわたって毎日フルタイムで拘束するのは現実的に無理があるとの話しである。心情的には、援助機関の予算を使ってこのようなプロジェクトを進めていく事に若干の抵抗があるのだが、考えてみれば日本でも休日出勤には手当が付くものなので、まるっきりの手弁当で仕事をしなさいと要求するのは虫のいい話しなのかもしれない。

 調査開始までの間に質問紙の修正と最終版の作成、調査仕様書の作成、予算の見積もり、調査スタッフにたいするトレーニング、調査結果の入力用のデータベース作成と数多くの仕事をこなさないとならないのであるが、これらを私が行なってしまったら昨年の二の舞になってしまうので、基本的にはチャンターを中心に統計オフィスのスタッフが行ない、私はUNDPとの間を調整しながらサポートを行なっていきたいと考えている。

 調査終了後はUNDPのコンピュータトレーニングと平行して、調査結果の入力と分析、報告書の作成の補助を行なう予定である。私自身、アンケート調査をやっていたのは五年も前の話しになるので、もう一度始めから勉強し直さないとしっかりしたレポートを作成するのは難しいかもしれない。スタッフにとっては実地に勉強する初めての機会になるので、なるべく多くのスタッフが分析の現場に立ち会えるようにしたい。

 また、現在作成している観光統計レポートには若干項目の選定などで修正すべき点があり、このあたりはMISの仕様と相談しながら変更を加えていく必要がある。この点はデータソースである内務省次第の面がたぶんにあり、例えば現在は毎月のレポートを国籍別に作成している。この場合、フランスに住んでいるカンボディア人も全てカンボディア人になるのだが、通常は居住国ベースで統計をとるので、正確な観光統計の実態を把握するのは非常に難しいのである。これは観光省だけで何とかなる問題ではなく、内務省が居住国や出発地などのデータも一緒にこちらに提供してくれなければどうにもならないのであるが、たとえ、いつになるかはわからないにせよ、遠くない将来、生に近いデータを使える日がやってくるかもしれないので、そのような場合に対応できるような柔軟性のある項目の選定を考えていく必要がある。

 コンピュータトレーニング終了後は、MISにかかわる観光省の業務担当者との調整、導入のサポートなどを行なう予定である。場合によってはコンピュータを操作する業務担当者にたいする実務レベルでの簡単なコンピュータトレーニングも必要となるかもしれない。また、どうもJICAに申請してあったカウンターパート研修が実現する事になったようなので、そのための日本の関係機関との調整やカリキュラムの作成なども必要になってくるであろう。

 そして予定では四月の中旬に後任の人がカンボディア入りするとのことなので、五月に入って彼が職場に配属されてからは業務の引き継ぎを行ない、六月五日に任期終了の予定である。後任の人が配属されて途方に暮れることがないよう留意して、今後の業務を進めていきたいと思う。