隊員報告書

第3号(12ヶ月目)

1994年12月5日提出

業務進捗状況

まずは統計業務に関して。

統計業務はこの一年間の間で自分が予想していた以上の進展があった。これは

ひとえに統計オフィスのチーフであるチャンター (Mr. Tith Chantha) の努力の賜物である。

以前の報告書でも書いたとおり、私が着任した当初観光省には統計専門の部署は 無く、まともな統計も皆無に等しい状態だった。三月の中旬に Planning & PromotionDpt. に新たに Statistics Office が開設され、チャンターがここのチーフとなって本格的な観光統計業務がスタートした。

しかしこの時点では統計オフィス用のコンピュータはもちろんのこと、統計業務用に自由に使えるコンピュータが無く、六月までは私の持ってきたコンピュータの 表計算ソフトを使って観光統計のレポート(別添1)作成を行なっていた。

観光統計作成の基になるデータは主に二つあり、一つは内務省 (Ministry of Interior) からの月別の出入国統計レポート(別添2)、もう一つが Transport Officeがまとめた月別の航空会社の乗客数レポート(別添3)である。このレポートにはカンボディアに乗り入れている各航空会社の路線別乗客数などと、国内線各線の乗客数が示されている。

内務省からのレポートには各月の国籍別・渡航目的別出入国者数が示されているのであるが、観光統計を作成するうえでの問題はここで示されている入国者数がTransport Office からのデータに比べて常にかなり低い数字になっていることである。出国者の数と比べても平均して二割から三割少ない数になっている。

このような違いが生まれる原因について、前回の報告書では空港の係官がビザの料金を着服してしまい、その結果申告される数が実際よりも少なくなってしまうのではないかと書いたのであるが、その後チャンターが調べたところによるとどうも原因はそれだけではないようであった。

当時の出入国データの流れは、まず空港の係官がEDカードを基にその日一日の出入国者の国籍や渡航目的などを手書きで集計する。その結果は内務省内でカンボディアの全ての出入国地点を統括する Office No5 に送られ、各チェックポイント毎に集計される。そして最終的なデータは同じく内務省内の Control Foreigner Department で処理され、ここで毎月の国籍別出入国統計が作成されるとのことであった。

問題はこれらの作業が全て手作業で行われているということである。国籍別の出入国データを手作業で集計するとかなり手間のかかる作業である。当然ミスも発生しやすいであろう。加えて、これらの作業は空港の係官にとっては何のメリットも無い仕事なので、勢い仕事は雑になりがちなのだそうである。ビザの発給を行なう部署とパスポートコントロールを行なう部署は別々なので、ビザ代の着服だけがデータの誤差の原因とは言えないだろうとのことだったが、入国者数が出国者数を常に下回ることから考えて、着服が多少の影響を与えていることは間違いないだろう。

もともと信頼性の薄いデータではあるが、観光省としては観光統計作成のためにはこのデータ以外に頼る物が無いために、毎月の観光統計レポートを作成するに当たってはかなり強引な手法をとらざるをえなかった。その方法とは Transport Office からのデータと内務省からのデータを比較し、入国者が明らかに少ない場合入国者の合計として Transport Office らのデータを国籍別入国者の合計として採用し、二つの数字を割って得られる係数をそれぞれの国籍別のデータにかけるという方法である。つまりTransport Office からのータが1万人で内務省からのデータが7千人だとすると二つを割った1.43を係数とし、日本人なりフランス人なりのそれぞれのデータに一律1.43をかけるのである。

これはもはや統計とは言えない代物ではあるが、UNDP からの専門家に何か他に方法は無いかと尋ねたところ、彼もこの方法でやるよりしかたがないと話していたのでこういう方法でこれまでの統計レポートは作成してきたのである。

六月に入り UNDP から観光統計の専門家である Mr.Henry がやって来て、彼が統計業務のサポートを行なうことになった。彼は観光統計作成にかかわる様々なアドバイスを与えてくれ、またチャンターにコンピュータのトレーニングをしてくれたおかげで、チャンターは七月から自分で統計レポートを作成できるようになった。観光統計に関する情報を盛り込んだ新しいEDカードの作成は、彼無しではできないことだったと思う。しかし、彼は多忙なこともありスタッフレベルのトレーニングは行なうことができなかった。

彼はまたプノンペン市内のホテルに関する調査(別添4)を行ない、七月から八月にかけてはポチェントン空港での旅行者にたいするアンケート調査(別添5)を行なった。この調査は7月27日から8月9日にかけて行なわれ、六人から十人のスタッフが英語、フランス語、日本語、中国語の四種類の質問紙を用いて、面接法にて調査された。日本語の質問紙(別添6)は英語の質問紙を基にして私達が作成したものである。この調査は当初サンプルを1200人に設定していたのであるが、十分な数のサンプルが得られなかったために500サンプルが得られた時点で打ちきりとなった。

この調査自体は彼もレポートの中で述べている通りサンプルが十分でなかったため不十分な結果に終わったが、このような調査は今までに無かったものなのでその意味では貴重な資料である。また、調査を行なったスタッフにとっても観光客の生の声を聞くことができ、このような調査の流れを作ったという意味では大きな意味がある。

そして11月8日にポチェントン空港が改修工事を終え、設備を一新してソフトオープンした。以前のポチェントン空港はまるで日本の地方駅のような設備だったが、今では小さな普通の空港である。

空港のパスポートコントロールには、改修工事に伴い出入国管理用のコンピュータがインストールされた。このコンピュータも普通のIBM互換機である。しかし、空港の係官はまだコンピュータが扱えず、現在トレーニングの最中である。ここで出入国管理用に使われているソフトウェアは MS-ACCESS で近いうちに出入国管理データはすべてこのデータベースで一元管理される予定とのことである。

これまでが今までの統計業務の流れである。はっきり言ってこの一年間は試行錯誤の連続であった。まったく未経験の分野だけにわからないことが多く、十分なアドバイスができなかったことを歯がゆく思う点も多い。

同様に来年も試行錯誤が続くことが予想される。来年はデータベースのデータとして出入国情報が送られて来る予定なので、まずはこのデータを観光統計のレポートとしてまとめるための方法を確立する必要がある。また今年は全て国籍別のデータで集計をしていたが、来年からは居住国別を基本にして統計を作成する必要がある。国籍別では、例えば中国人がどこの中国人なのかがわからず、カンボディア人についても海外に移住した者かそうでないのかがわからないからである。

また TOURIST の範疇にどこまで入るのかを改めて検討し直す必要もある。観光統計における TOURIST の定義がいわゆる HOLYDAY だけなのか、それとも BUSINESS なども含まれるのかあやふやになっているからである。データがEDカードを反映した状態で来るようになれば、平均滞在日数や年齢層など、今まで得られなかった様々な情報を活用できるようになり、仕事が倍増することが予想される。

そして更にこのような統計業務と平行して、現在スタッフにたいして行なっているコンピュータのトレーニングがある。コンピュータトレーニングは10月24日から始まり、今は統計オフィスとプラニングオフィスのスタッフ10人にたいして、毎日8時から10時まで行なっている。生徒10人にたいしてコンピュータは隊員支援経費で購入したノートパソコン一台しか無く、現状でも一人一人が十分にコンピュータを触れる状態に無い。その上新しく四人のスタッフが入って来たので、これからどうしたものかと頭を抱えているところである。

これまでの一ヶ月半の期間で、コンピュータのあらまし、基本的なDOSの概念やファイルネームの付け方、マウスやフロッピーディスクの扱い方、ウェインドウズの基本的な使い方とプログラムマネージャー・ファイルマネージャーの使い方などをやり、現在はブラインド・タイピングの練習をしている。

私はこの分野のクメール語が堪能ではないので、授業はチャンターに助けてもらいながら行なっている。しかし、コンピュータは実際に使っていないとなかなか覚えられないのが実情である。一通り説明し、理解したと思っても実際には使えないことが多い。もっと自由にコンピュータに触れれば上達も早いのだが、それができないのが辛いところである。

しかし、スタッフはおおむね熱心で、ブラインドタッチの練習も予想に反して上達が非常に早い。今は一人一日あたり十五分ほどしか実際に練習する時間は無いのだが、二週間ほどでほとんどのスタッフが一通りキーを見ないでタイピングができるようになったのは驚きである。どうやら暇な時間にキーボードをコピーした紙を使って練習しているようである。教えたことをどんどんマスターしてくれると率直にうれしい。

今後はタイピングの練習が終わりしだい、実際の業務に即した練習をしていく予定である。具体的には EXCEL を使ったスプレッドシートの作成やグラフの作成、 WORD を使った文書の作成、ACCESS によるデータベースの扱い方などを順次行なっていくつもりである。何しろコンピュータが一台しかないので簡単には終わらないと思うが、途中で投げ出されないように気長に進めていくつもりである。

 

支援体制

(A)支援経費

a)当面支出を必要しているもの

統計オフィスで今後行おうとしているプロジェクトに関する費用については、チーフのチャンターが既に業務計画とともに上層部に上げている。彼の試算ではその費用は約2300万リエル、約8800ドルである。なんとかこの予算を獲得できるように彼と思案中ではあるが、実際のところはどれだけ認められるか未知数である。

94年度の現地支援経費の枠の中からは、既に統計オフィスでの業務とスタッフへのトレーニング、同時に隊員の教材や報告書の作成のために、現地にてノートタイプのコンピュータを購入した。購入したコンピュータはAcerのAcer Note 735iという486SX 33MHz のモデルであり、購入費用は本体、4MBの増設ラム、プリンター(Canon BJ-230)マウス、フロッピーディスク50枚の合計で3250ドルであった。

あえて割高なノートタイプのコンピュータを購入した理由は、このコンピュータが統計オフィス専用のものではなく、統計オフィスの業務と隊員業務の両方に使えるようにするため、自由に移動できる必要性があったためである。現在のこのコンピュータの使われ方は、午前中に私が担当しているコンピュータトレーニングのために使い、それ以外の時間は日本語教師の山崎さんの教材作成や、チャンター達と一緒に統計業務関係のために使用している。

カンボディアでのコンピュータの価格は日本と比べても高い水準にある。コンピュータショップは現在急速に増えつつあるが、関税がなぜか30%と高いためなかなか価格が下げられないようである。ソフトウェアはオリジナルのものも売っているが、一般的にはオリジナルのディスクをコピーしたものが一枚当り約5ドルで売られている。コンピュータを購入するときに、必要なソフトウェアをすべてインストールした状態で販売するのが普通のようである。現在主に使われている機種は大手のメーカーではコンパックが圧倒的に多く、デスクトップ・ノートとも一番目にする機会が多い。アップルのマッキントッシュは主に外国人やジャーナリストが使用していて、シェアはあまり大きくないようである。ノートパソコンは選択肢が少なく、現在選べるのはコンパックのConturaシリーズ、東芝のTシリーズ、Acer Noteなど小数しかない。もっともこの国の状況を考慮すれば、これだけコンピュータが簡単に買えるのは驚異的ともいえるのだが。

来年度の支援経費については現在検討中である。統計オフィスとしては業務上の必要性からどうしても専用のコンピュータが欲しいとのことなのだが、95年度については観光省の予算から統計オフィス専用のコンピュータを導入することは難しいとのことである。もしも可能だとしても、Planning & Promotion Dpt.用に一台購入するのが精一杯とのことで、専用のコンピュータを確保するのは難しそうな状況である。

統計オフィスと同じ Department であるプロモーションオフィスでは、業務上の文書作成などのために既にフル稼動状態でコンピュータを使用しており、文書の作成に他のオフィスがコンピュータを使った場合、統計業務用に時間を配分するのはなかなか難しそうである。当面は一階の UNDP のオフィスにあるコンピュータを使用することができるようであるが、このコンピュータは今のところ UNDP の備品であり、自由に新しいソフトウェアをインストールしたりはできない。また、 UNDP のスタッフがコンピュータを使用している場合は、統計業務のためにコンピュータを使用することができない。

このためこの件に関しては今後も粘り強く交渉を続けていく考えであるが、場合によっては専用のコンピュータを確保するために支援経費で購入費用を補填することも検討する必要があるかもしれない。

今年までは、内務省からの月別の出入国統計レポートは書式で送られてきたため、手作業で観光統計を作成することも可能であったが、95年からはデータベースのファイルとしてフロッピーディスクで情報をやり取りすることになる予定で、こうなるとコンピュータが無いことには観光統計レポートを作成することが困難になってしまうからである。

新装オープンしたポチェントン空港のパスポートコントロールには、既に出入国管理用にIBM互換機のコンピュータが導入されており、空港スタッフのトレーニングが終了しだい、出入国データをコンピュータのデータベースソフト(MS-ACCESS)で一元管理する予定になっている。こうなると今までのように手作業に近い状態でデータを扱うことができず、データにアクセスするためにコンピュータを使用することが不可欠になってくる。

しかし、前述した理由からこの先統計オフィスのスタッフがどの程度コンピュータを使えるかは微妙な状態にある。現在スタッフのトレーニングに使用しているノートパソコンは、統計オフィスの業務が今以上に増えた場合、隊員の業務とスタッフのトレーニングと統計オフィスの業務用全てに使うには少々荷が重すぎると考えている。しかし、だからといって最初から器材供与の前例を作り過ぎるのは観光省の今後のことを考えても問題が多いので、基本的には多少不便でも観光省側が自主的にコンピュータの使用に対応して来ることを待ち、支援経費による予算の補填は、最後の切り札としてそっと忍ばせておきたいと思う。

これ以外に支出が必要な部分は、引き続きソフトウェアのマニュアルの購入や統計関係の資料の収集にかかる費用、また統計オフィスの来年度の業務に関連して、プノンペンやシェムリアップ、コンポンソムなどでのホテルの調査や旅行者にたいするアンケート調査にかかる費用のうち、私が同行する場合でその予算が観光省から獲得できなかった場合などに必要になるであろう。

 

b)プロジェクトとして取組む必要性のある業務の有無及び内容について

JOCVの規定するような大きなプロジェクトは無いが、統計オフィスでは来年度の業務として様々な調査を予定している。それらは次の通りである。

1)プノンペン、シェムリアップ、コンポンソムにおけるホテルの調査

狙いは主にホテルの稼働率などを把握することにあり、予定では各地点で一ヶ月に一回調査を行なうことになっている。本来ホテルに関する業務は観光省内の担当部署が行なうべきことなのだが、ホテルオフィスではこのような調査の実績が無いため、チャンターが統計オフィスで独自に調査を行なうことを計画している。観光政策を進めていく上でごく基本的なデータなので、関係機関と協力して早い内に実施できるようにする必要がある。

 

2)扱い旅行代理店の調査

カンボディアの各旅行代理店の実際の扱い客数を調査するのがその狙いである。しかし、この調査には旅行代理店の金銭的な問題(扱い客数をそのまま申告すると出費が増える)が伴い、簡単にはデータを得られないことが予想される。正確な数を申告しても一切不利益が生じないような確約作りが大前提になるであろう。この調査はプノンペンにて、毎月一回を予定している。

 

3)旅行者へのアンケート調査

この調査は UNDP の Mr. Henry (ヘンリー)の主導で行なったポチェントン空港における旅行者にたいするアンケート調査を引き継ぐもので、プノンペン、シェムリアップ、コンポンソムの各地点で、それぞれ一年に一回ずつを計画している。調査にかける期間はプノンペンで二十日、シェムリアップで十日、コンポンソムで五日を予定し、調査人員としてはプノンペンが十人、シェムリアップが五人、コンポンソムが三人となっている。

サンプルの設定、調査方法やスケジュールの策定、質問紙の作成など難しい問題が多いが、ヘンリーがすでにその基礎作りをしてくれているので、何とか観光省のスタッフの力でできるようにしたい。

 

(B)カウンターパート

a)カウンターパートの質的水準

カウンターパートを私の仕事と観光省の仕事との橋渡しとして規定した場合、現在のカウンターパートは統計オフィスの Mr. Tith Chantha になる。また、現在日本で研修プログラムを受けている Ms. Kong Pheakdey が帰国後も統計オフィスに残った場合、彼女も仕事の上でカウンターパートになるであろう。

チャンターは以前の報告書にも書いたとおり大学で経済学を専攻し、現在も副業として学生に数学を教えているため数学には非常に強い。統計を専門的に学んだことは無いものの、統計業務を行なううえで必要な基本的な数学の知識は十分あり、統計データに対する眼も厳しいものがある。

私が彼をすごいと思う点は、統計オフィスの仕事が彼にとって直接お金にならないことを承知の上で、自分から積極的に仕事をしていこうとしている点である。彼に以前そのことを尋ねたら「ここでの仕事はボランティアとしてやっている」と冗談混じりに答えていた。実際に、彼は副業で月に百ドル以上を稼いでいるのに引き替え、観光省からの給料は月二十ドルに満たない。一般の企業からの誘いを断ってまでここで働くのは、カンボディアのために何かをしたいという想いでも無ければできないことだろう。

コンピュータにたいする知識の面や、統計データの扱いなどの点でもうちょっとと思う点が無い訳ではないが、彼の統計業務にたいする積極さは他の何物にも代えがたい気がする。

 

b)人数

一人、もしくは二人。観光省には最近になって新たにフンシンペック党から120人のスタッフが入省した。統計オフィスにも現時点で三人のスタッフが配属され、現在のスタッフの数は休んでいる者も含めて十名である。

 

c)カウンターパートの所属先での位置付け

チャンターは Planning & Promotion Dpt. の Statistics Office のチーフである。彼は観光省に入って比較的長く、観光省内での人望もある。彼は政治的には比較的中立であるが、人間関係を見ている限りどちらかと言えば人民党寄りのようである。

 

(C)後任の問題

a)任期延長の有無と交代の必要性

任期の延長は来年の業務の進み具合によるので現時点では何とも言えない。しかし延長するにせよ、一年といった長期の延長は考えていない。もしも業務上必要と考えた場合、三ヶ月あるいは六ヶ月といった期間の延長はあるかもしれない。

交代要員の必要性についてチャンターに尋ねたところ、今後も今と同様に統計業務やコンピュータのトレーニングのためのボランティアを必要としているとの答えだった。私がボランティアではなくコンピュータや統計の専門家を呼んでみてはどうかと尋ねると、短期間だけの専門家よりは長期間に渡って一緒に仕事をしてくれるボランティアの方が良いと話してくれた。これは観光省で活動している UNDP の専門家などが半年ぐらいの期間に渡って活動しても、結果的にそれが観光省の中に根を下ろしていないことからの意見であろう。

自分の個人的な考えでは、今後統計オフィスの仕事が順調に進んだ場合、仕事の内容が現在よりもずっと高度になる可能性があり、その場合専門知識や経験の乏しいボランティアでは対応できないのではないかという危惧がある。私は観光統計の分野ではまったくの素人なので、例えば観光統計上でのカテゴリーの分類の方法などについて適切なアドバイスをあげられないことが多い。何が最善の選択なのかはわからないが、例えば観光統計の分野の専門家と統計オフィス配属のボランティアが一緒になって仕事を進めていければ、今よりもずっとしっかりとした仕事ができるのではないかと考えている。

 

b)交代要員に希望すること

コンピュータと統計に関する知識は必須である。

コンピュータについては現在使用している機種が全てIBM互換機なので、IBM互換機の基本的なハードウェアにたいする知識と、ウィンドウズを使えることが前提条件になる。ハードウェアについては現地のコンピュータショップでも対応可能であるが、現地のスタッフで対応できることには限りがあるので、BIOSの設定やディスクの復旧などは自分で対応できる方が良いと思う。

現在業務で使用しているソフトウェアは MS-EXCEL Ver. 5、 MS-WORD Ver. 6、MS-ACCESS Ver. 2、が主でクメール語の文書作成には WORD PERFECT Ver. 6 を使用することが多い。WORD でもクメール語は使えるのであるが、クメール語との相性では WORD PERFECT の方が使い易いようである。ACCESS はまだほとんど業務には使用していないが、来年以降は内務省からのデータが ACCESS のデータとして来る予定なので、好むと好まざるとに関わらず使うことになるだろう。これらのソフトが一通り使え、データを正しく扱えることが必要となる。

統計に関して希望するのは、基本的な経済統計学を把握していることである。今の時点では基本的なデータが不足していることもありそれ程複雑な統計手法は使っていないが、データが充実してくるにしたがって時系列解析や様々な統計的検定を行なう必要が出てくるであろう。私は統計を心理学で学んだのだが、やはり経済学部で統計を学んだか、実務でこのような業務を担当していた人の方がふさわしいのではないかと思う。また、統計オフィスでは今後様々なアンケート調査を予定しているので、アンケートの企画、作成、実査、分析を行なった経験のある人は、この分野でも有用な示唆を与えることができるであろう。

観光産業の分野については、もちろん観光統計を専門として実務を行なってきたという人であればそれにこした事はないが、統計オフィスでの業務では必ずしも観光分野での経験は必要無いと考えている。観光統計の細かいのノウハウについては UNDP や WORLD TOURISM ORGANIZATION (WTO) に問い合わせることもできるし、観光省にも英文ではあるが観光統計に関する資料があるので、現地に着いてからこの分野のことを勉強することも十分可能である。

また言葉の面では英会話と英文の作成の能力も必要となる。ある程度の年齢以上のカンボディア人は英語よりもフランス語の方が堪能であるが、若い世代はほとんどが英語しか使えず、また観光省内での外国人の共通語は英語になりつつある。スタッフとの日常会話はクメール語で問題無いが、他の外国人専門家との話し合いでは英語ができないことには話しにならない。また、様々な英文のレポートや資料を読む機会も多く、観光省にたいするレポートの作成も私達は英語で行なっている。カンボディアの省庁の公式文書はクメール語しか使えないことになったのだが、現実的には二年間の期間で正式なクメール語の文書を作成できるようになるのは難しいであろう。この点も現地に着いてから勉強することも可能ではあるが、英会話も英文を読むこともまるで経験が無いという人にとってはかなりの重荷になるに違いない。

いろいろと難しい条件を出したが、ある程度のことは本人の努力次第で何とかなるとは思う。実際に自分がそうであった。来た当初は一枚のレターを英文で書くのに丸一日かかったり、観光統計の作成とはどのようにすれば良いのかまるでわからないという状態であった。その点で私は幸運であったと思う。当時は統計らしい統計も無く、観光省の仕事もほとんど開店休業状態だったのでゆっくり時間をかけて準備をすることができたからである。

しかし、今はゆっくりではあるが着実に仕事が動きはじめ、次に来る人は着いた当初からすぐに仕事に入ることを要求されるであろう。また私が行なってきた以上の仕事を求められることも予想される。この点で私の次に来る人は私以上に大変だとは思うが、最初は焦らず、ゆっくりと時間をかけて観光省内の人間関係を固め、この国のシステムやカンボディア人の考え方を理解することが肝心である。この最初のステップをおろそかにするとその後の仕事につながっていかないからである。健闘を祈ります。

 

一般状況

(A)余暇活動

a)余暇の過し方

本を読む、音楽を聴く、手紙を書く、カラオケで唄う、街をぶらぶらと散歩する、市場を冷やかして回る、ビリヤードをする、飲みに行く、卓球をする。ソフトボールをする。

気軽に旅行に行けない私はだいたいこのようなことをしているわけです。

 

b)任国の人との交際のあり方

まず、受け入れること。約束を守らないのも、逆恨みするのも、間違いをした時に、にやにや笑うのも、この国の歴史が作り上げたものであるから、まず受け入れたうえでどうしてそうなったのかを考えないことには何も始まらないように思う。

 

c)生活上の創意工夫について

残念ながらここに書くべきような事はほとんど何も無い。私は今ホームステイをしているので、食事は家の人と一緒にとっていて自分で調理をすることはない。もしも日本食を食べたいと思えばスーパーで買うこともできるし、高い金を出せば日本食レストランで日本食を食べることもできる。洗濯はたらいに水をはって足で踏んで洗っている。

電気は近くの発電機からもらっているので、最近はほとんど停電することが無い。停電した時のために部屋には自動車用バッテリーとインバータ/コンバータがあるが、これはカンボディアでは一般的である。

物が無ければいろいろと自分で工夫して作らなければならないが、ここでは必要な物はほとんど何でも手に入るので自ら作り出す余地はあまり無いのである。一人暮らしを始めたらあるいは多少変わるのかもしれないが、今の生活では創意工夫と呼べるものはこれといって無いのが現状である。

 

(B)コミュニケーション

a)公私における外国語の習熟度について

今、自分の言葉は非常に不安定な状態にある。スタッフとの日常会話は主にクメール語を使い、コンピュータ関係のこととか統計に関する突っ込んだ話しは英語で行ない、観光省の自分達のオフィスの中では日本語で話をしている。観光省に提出するレターやレポートは英語である。正直に言って日本語以外はどれも中途半端な状態のままである。

特にクメール語の読み書きについては、着いた当初の方がよっぽどできたとさえ思う。そういう訳だから、未だにクメール語の新聞は読めないし、クメール語で書類を書くには程遠い状態である。

今の自分の考えではクメール語できちんと読み書きをできるようになるよりは、英語をもう少しまともに使えるようになりたいと思っている。これはあるいはJOCVの方針に反することかもしれないが、残りの期間と仕事のこととを考えると英語が自由に使えるようになった方が効率が良いと考えているからである。

クメール語については普通の日常会話はある程度わかるようになったが、自分がしゃべるとなかなか相手に伝わらないことが多い。これは有気音と無気音の区別や日本人にとって曖昧な母音の区別がしっかりとできていないからである。話をしていて間違えるたびに正しいクメール語を教えてくれるのだが、何度練習しても正しく発音できない単語というのがまだまだ多い。これはまあクメール人と一杯おしゃべりをして、ゆっくり時間をかけてマスターするよりないと思っている。