[レポート集]

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 『 変わりつつある親の意識 』 

                       OKAMOTO

 〜親の心理が子どもにどう影響を及ぼすか〜

   1.親の心理 (10/30)
   2.子どもへの影響 (10/30)
   3.マイナス思考の現在の告知方法を見直す (10/30)
   4.ろう教育の最初の一歩 (10/31)
   5.実際に、早い時期に多くの正しい情報を得られた親の心理 (11/1)
   6.現実に直面し、今思うこと  (11/2)





 〜誰も教えてくれなかったこと〜

   1.医師・専門家の視点の拡大  (11/3)
   2.親の視点の拡大  (11/4)
   3.ろう児・ろう者の視点から見つめてみよう (11/5)
   4.ろう児は何を求めているか (11/6)
   5.選択肢のある環境作り (11/7)


 〜20世紀後半から21世紀に至る親の意識の変化〜

   20世紀後半から21世紀に至る親の意識の変化 (11/8)
 

  〜親の心理が子どもにどう影響を及ぼすか〜



1.親の心理 

 <医療機関の告知はどんなものが多いか>
 <その告知を受けた親の感想>
 <告知から受ける親の心理的影響>
2.子どもへの影響

 無条件に愛情を注がれる時期に、一番大好きな親から受け入れられないことを直感する。この期間が長ければ長いほど親子の心理に影響を及ぼし、その後の子どもの生きる力、豊かな心の形成に多大な影響を及ぼす。〔ろう〕を否定的に捉えることは〔ろうとしてこの世に生を受けたわが子〕を否定することにつながる。
3.マイナス思考の現在の告知方法を見直す
 親子のつながりを閉ざすこれらの告知方法を改善するきっかけは、「今さらそんなことを言ってもしょうがない」と忘れさることではなく「これから生まれてくる仲間のために改善して欲しい」と経験者が語ることではないだろうか。
4.ろう教育の最初の一歩
 今までの聴親は〔ろう〕を知らないがために不安に陥り、聞こえないことをマイナス思考でしか捉えられていない。しかし、きちんとした情報を与えられ、生き生きとくらしている先輩ろう者を知ることで、心が安定し、論理的に考え、自分の子どもには何が必要かを考えられる。そして、親自らが選択できるようになり、自ら学ぶようになる。親は専門家や教師が考えているほど弱くはないし、情報もいろいろな方法で、いずれは取得することになる。だから、最初に真実を覆い被すことなく、親達を信じて、はじめからすべてを伝えて欲しい。どんな情報も正しく伝え、親の不安を取り除き、選択の出来る環境を作ることが、ろう教育の第一歩だと思う。
5.実際に、早い時期に多くの正しい情報を得られた親の心理
6.現実に直面し、今思うこと

 21世紀に入り親の意識は確かに変化している。ろう教育関係者も変化を迫らせている。しかし我々親が望むろう教育と、専門家の望むろう教育とが、ずれ始めてきている。親はろう児と共に生活し、さらに自立するまでの長期間、継続して接することができる。つまり様々な側面からろう児を捉えることができる重要な実践者の1人であると思っている。過去の過ちや、足らない部分を補いながら、その教訓を生かしてきた。学校などと違い体制に縛られない分、良かれと思ったことはすぐに実践できるメリットもある。なにより子どもの成長は待ってはくれないので、やるしかないのだ。今後もこのような我々の試行錯誤を医療機関、教育機関、そしてなによりも成人ろう者の助言を頂きながら子どもたちの豊かな心、生きる力をはぐくむために何が必要かを、一緒に探りたいと思っている。医療機関、教育機関、親そして本人(成人ろう者)が対等な立場で情報を交換しながら討論できる関係を作り、その中から共通の意識を持ち、協力し合いながら進めていきたいと望んでいる。



  〜誰も教えてくれなかったこと〜 
 

1.医師・専門家の視点の拡大

 医師、専門家は『科学、専門性』と『心』を切り離してしまっているのではないか。これについては、いろいろな分野で問題とされているようだ。医学会からの報告を参考に見てみると、医の原点である一番の目的は救命であるが、その救命には生物学的、量的な命を救う局面と、その人のクオリティー・オブ・ライフ=生命、生活の質を救う面とがあるそうだ。つまり現代医学は患部だけを見つめたり、その細胞を突き詰めDNAにたどり着くといった『科学、専門性』のみに突き進み、人間とは何かという『ホリスティック』(全体論的)な発想からくる『心』の医療が見落とされている現実があるという。これをあてはめれば現状の告知は、聞こえないことをどう捉えるのか、一人の人間としてどうなのかといった全体論が抜けている。内耳という部分だけを『科学、専門性』の観点から述べているに過ぎない。確かにそれも必要だがそれだけで終わっている方法には問題がある。いろいろな角度から見た「ろう」を少なくとも告知する医師、専門家は知っておくべきだと思う。現段階ですべての説明を望むのは無理かもしれないが、例えば告知と同時にろう者を紹介し、ロールモデルに会わせることで未来を展望させるなど、親の気持ちが前向きになるような告知を心がけて欲しいものである。医師、専門家に望むことは、〔ろう〕として暮らしている人々のことをもう少し知って頂きたい。そして同時に親の心理をケアーするカウンセリングなども必要性ではないだろうか。あらゆる視点の拡大のためにも、ろう者に協力を求めたらいかがであろうか。今までの医療に欠けていたものは「癒し」と「患者の知る権利」であったのではないか。その癒しと権利は、実は「手話言語」を除いては成り立たないことに、気づかされる。

2.親の視点の拡大


 医師、専門家に限らず、親も視点を拡大する必要があるのではないか。子どもを障害者というより、ひとりの人間として捉え、その人間というものの全体性を見た場合(ホールネス)、発想の転換が図られる。親達も耳だけに捕らわれ言葉の習得を子どもの目標と考えていなかっただろうか。もっと視点を広げてみると、ひとりの人間として人格を完成し、社会の中で真理を見極め、健康で自立した人間が見えてくる。人間が家庭や社会の中で他者と関わりながら人格を形成し、人間性をはぐくみ、豊かな心の成長を遂げるには、言語(母語)、文化、コミュニティーは不可欠なものだ。これらを基盤として成り立っていると言っても過言ではない。ではろう児にとっての言語、文化、コミュニティーはいったいどんなものかをさらに視点を拡大して考えてみたい。
3.ろう児・ろう者の視点から見つめてみよう
  1. 子どもの言語(母語)に関して世界の言語学者の説を引用すれば、子どもに入る情報が個別言語(単語)として一つひとつ確実であれば、その脳内にある言語能力によって、自然言語を生み出していくそうだ。言語(母語)は、教えるものではなく自然に習得できるものであるという。そこから考えると聴覚口話法はいつも曖昧で不透明な個別言語しか入らない。だから能力も生かしきれずに母語さえも持ち得ないセミリンガルになってしまうのは、ある意味当然とも言える。ろう児が人間として本来持っている能力を100%生かし、それが自然言語の文法を備えているものは何かと考えた時、当然のように視覚言語の『日本手話』にたどり着く。
  2. ろう者と一緒にいると、様々な場面で聴者と違うなぁと感じる場面に遭遇する。良い、悪いという次元ではなく、行動様式の違いなのだと気づかされる。これは日本手話という共通言語をもつ人々が、必要に応じて生みだし受け継いできた文化であろう。社会的少数者としての彼等の文化はとても貴重に思う。アイヌ文化を保護するように、『ろう文化』も保護、継承する必要があるのではないか。そう考えると、ろうとしてこの世に生を受けた私達の子ども1人ひとりが、その担い手として重要な役割を担っていることに気づく。
  3. 『日本手話』『ろう文化』を基盤とした文化的集団として確立していれば、目的によって様々な『コミュニティー』を形成することができると思う。例えば全国的な規模で、ろう者への理解を深める活動を目的としたコミュニティーは就職、政治活動、ろう者が関与する学校、福祉機関などの改善を求める字幕や手話通訳の必要性、聴者と同等の情報保障、手話やろうの歴史への社会的認知、欠格条項の改正などがここに含まれるであろう。
  4. ろう児は何を求めているか  言語(母語)、文化を習得していればその文化集団内において、他の人間のすべての文化と同じように個人の基本的欲求は満たされる(モノリンガル、モノカルチャー)。それが確立されることによりバイリンガル、バイカルチュラルへと発展できると考える。さらには、己(ろう者)を知ることで相手(聴者)が見えてくる。、それがきっかけでお互いが精神を高めあうことができる。そこから異文化との真の交流が始まるであろう。そんな大袈裟に言わないまでも、90%は聴親の元に生まれ、幼いときから聴文化にさらされているし、文字の日本語もあちこちにあふれている。子どもたちは、もうとっくにその基盤を持っている。  ろうとして生まれた自分を慈しみ、無条件で愛してくれる親を持ち、聴者の大勢いるこの日本で生きていく。ろう者として誇りを持ちながら、自分らしく生き抜くために『日本手話』『ろう文化』『デフコミュニティー』は欠かせないものであると考える。その基礎を作る場所こそがろう学校の役割ではないだろうか。
  5. 選択肢のある環境作り  今ろう教育界は混沌とし、変わる兆しを見せてはいるが、本人や親が望んでいる方向に進もうとしているだろうか。もう一度、親、本人、教師とで原点に戻って話し合う必要を強く感じている。手話単語さえあればそれで良いのか?手話、手話といって言るが、その手話とはどのような手話なのか?親と教師(専門家)の求めを考える前に、ろう児・ろう者が求めるものは何かを理解することから始めなければ、ろう教育の根本は変わらない。いくら聴者が表面だけを取り繕い手話単語を並べても、いつかはしわ寄せがくるだろう。そのしわ寄せの被害者は、それを押しつけた親でもなく、教師や専門家でもなく、ろう児・ろう者本人であることを肝に銘じておくべきであろう。親として我が子にそんな思いはさせたくないと思うならば、環境作りを急がなければならないだろう。是非、バイリンガル・バイカルチュラル教育を望む親子の選択肢を作るよう要望していくことが、私達の役割ではないだろうか。聴者の教師とろう教師が、一緒になって進めていく教育を実現させるには、まず、ろう者教員を採用する制度確立が必要だと考える。今後も親同士が情報交換をしながら、現場教師と共に子どもの環境作りをめざしていきたいと思っている。
4.ろう児は何を求めているか

 言語(母語)、文化を習得していればその文化集団内において、他の人間のすべての文化と同じように個人の基本的欲求は満たされる(モノリンガル、モノカルチャー)。それが確立されることによりバイリンガル、バイカルチュラルへと発展できると考える。さらには、己(ろう者)を知ることで相手(聴者)が見えてくる。、それがきっかけでお互いが精神を高めあうことができる。そこから異文化との真の交流が始まるであろう。そんな大袈裟に言わないまでも、90%は聴親の元に生まれ、幼いときから聴文化にさらされているし、文字の日本語もあちこちにあふれている。子どもたちは、もうとっくにその基盤を持っている。  ろうとして生まれた自分を慈しみ、無条件で愛してくれる親を持ち、聴者の大勢いるこの日本で生きていく。ろう者として誇りを持ちながら、自分らしく生き抜くために『日本手話』『ろう文化』『デフコミュニティー』は欠かせないものであると考える。その基礎を作る場所こそがろう学校の役割ではないだろうか。
5.選択肢のある環境作り
 今ろう教育界は混沌とし、変わる兆しを見せてはいるが、本人や親が望んでいる方向に進もうとしているだろうか。もう一度、親、本人、教師とで原点に戻って話し合う必要を強く感じている。手話単語さえあればそれで良いのか?手話、手話といって言るが、その手話とはどのような手話なのか?親と教師(専門家)の求めを考える前に、ろう児・ろう者が求めるものは何かを理解することから始めなければ、ろう教育の根本は変わらない。いくら聴者が表面だけを取り繕い手話単語を並べても、いつかはしわ寄せがくるだろう。そのしわ寄せの被害者は、それを押しつけた親でもなく、教師や専門家でもなく、ろう児・ろう者本人であることを肝に銘じておくべきであろう。親として我が子にそんな思いはさせたくないと思うならば、環境作りを急がなければならないだろう。是非、バイリンガル・バイカルチュラル教育を望む親子の選択肢を作るよう要望していくことが、私達の役割ではないだろうか。聴者の教師とろう教師が、一緒になって進めていく教育を実現させるには、まず、ろう者教員を採用する制度確立が必要だと考える。今後も親同士が情報交換をしながら、現場教師と共に子どもの環境作りをめざしていきたいと思っている。





20世紀後半から21世紀に至る親の意識の変化




20世紀後半の親の意識

21世紀の親の意識
【認識】→ 聴覚障害児と捉える

 病理学的な視点から障害児とみる身体的欠損を補足することが教育と考える情報源はろう学校のみ
【認識】→ 社会的少数者ろう児と捉える

 社会学的な視点から一人の子どもとみる第一言語が違う子どもに合わせることが教育と考える(特別のニーズが必要な子)インターネットなどから、グローバルな情報を得られる環境
【希望する教育方法】

 聴者に近づける教育聞こえていなくても、音声を聞かせ、そこから言語を習得させる(片言でも構わない)聴者社会に自分をあわせる教育学力は付かなくてもしゃべった方がよい自分自身とは何者かを考える以前に、聴者社会との融合(混ざる)を教えるすべて聴者の考えで教育
【希望する教育方法】

 人間としての教育100%分かる自然言語(日本手話)により言語を習得し言語能力を高めるその言語を使って書記言語を教育聴者と同じ学力を付ける自分自身を確立させた後、聴者社会との共存・共栄の方法を考える力を養うろう者の考えと聴者の考えで教育
補聴器、聴覚利用はあくまで補助(選択)・ろう者学(手話言語学、聾史学、聾教育史、芸術)の教育の必要性
【目標】

言語獲得
【目標】

 人格の形成学力の向上人間として、社会の一員としての自覚
【教育結果】
  • 低言語力(セミリンガル)
  • 低学力 
  • 社会的、金銭的不利益の受容
  • 家族の断絶、崩壊
  • アイデンティティーの喪失
  • 人格のゆがみ、崩壊
  • 共通言語が持てない
【教育結果】
  • 自然な言語習得それを基盤にバイリンガル、バイカルチャーを学習する→聴者と同じ学力
  • 言語的少数者としての社会的認識を広める(真の姿をアピールする必要)
  • 家族の団結、団らん
  • アイデンティティーの確立
  • 自然な人格形成(共通言語をもつ他者との関わりの中で、自然に育つもの)

































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