長編投稿集

このコーナーに掲載している新聞記事はすべて当該新聞社の掲載許可を受けたものです。
快諾くださった記者・新聞社のみなさま心から感謝申し上げます。


「ろう学校 手話で授業を」
〜ほとんどの教員、口話指導しかできず〜

34家族が人権救済申し立て

2003年5月28日 東京新聞 朝刊
転記禁止

 ろう学校で手話による授業が認められないのは、憲法で保障された教育を受ける権利の侵害だとして、聴覚障害の子どもをもつ全国の34家族が27日、日弁連に人権救済を申し立てた。
 聴覚障害者の多くは、独自の文法を持つ「日本手話」を日常使用しているが、ろう学校で採用されているのは、教員の口の動きから言葉を読み取る「聴覚口話法」。手話と書記日本語による「バイリンガル教育」は世界的な潮流とされ、家族らはバイリンガル教育を認めてほしいと訴えている。
 申し立てたのは、17−2歳の聴覚障害児や生徒、家族ら107人。ろう学校の卒業生や教員ら267人も賛同者として名前を連ねている。
 申立書によると、口話による授業では児童や生徒が教員の話している内容を理解するだけで時間がかかる。このため、授業の進行が遅れ、学力の伸び悩みや大学進学率の低下、心身発達の阻害などにつながっているという。
 背景には文部科学省が聴覚障害児教育の目標に日本語習得を掲げ、口話による指導を基本としていることがあり、ろう学校には日本手話ができる教員がほとんどいないのが実態だ、としている。
 申し立て後、記者会見した「全国ろう児をもつ親の会」代表の岡本みどりさん(45)は「聴覚障害の娘と口話では全然通じなかったが、私が4年前から手話を学んだことで簡単に会話が成立するようになった。海外では当たり前のバイリンガル教育を認めてほしい」と訴えた。
 さらに、愛知県岡崎ろう学校に通う羽柴美友さん(12)は「新しく赴任した先生は手話ができないので、私たちが勉強で間違えたことがあっても、きちんと説明してくれません」と手話で不満を述べた。
 文科省の担当者は「中身を把握していないのでコメントを差し控えたい」としている。

社会部 浜口記者
【新聞社から訂正のお知らせ】
 『手話と口話法による「バイリンガル教育」』と掲載しましたが、『手話と書記日本語による「バイリンガル教育」』の誤りです。HP掲載内容は変更修正済みです。


コメント:
 日本手話が英語やフランス語と比べてもなんの遜色もない独立した言語であることは周知のところとなっています。こうした言語を教師が教育言語として使用するレベルまで習得するためにはどれだけの勉強が必要でしょうか。日本人が海外に言って英語で教育するためには、高度な言語力が必要です。しかし、ろう学校の教師が手話を学ぶ仕組みは現状一切ありません。手話単語を少し知っていただけで、教育ができるでしょうか?声を出している教師の手話は手話ではなく日本語であることは誰でもわかります。日本語と手話の文法は違うのですから同時に表現できるはずがありません。文法を全く知らないのに、それで「その言語で教えている」と言えるでしょうか?
 今回の記事「ほとんどの教員、口話指導しかできず」は日ごろ親たちが強く感じていることです。そしてなにより、ろう児たちが強く強く感じていることです。メディアを通してこの声なきろう児たちの思いをこれからもどうか伝えつづけてください。


も ど る

ろう児に「手話で教育」訴え

   全国親の会代表・岡本さん、

      教諭前に講演会 /鹿児島

「ろう児に『手話で教育』訴え 全国親の会代表・岡本さん、教諭前に講演会/鹿児島」

2003年4月2日 毎日新聞

◇ハートピアかごしま
 全国ろう児をもつ親の会代表の岡本みどりさん(45)=東京都国分寺市=の講演会が鹿児島市小野1のハートピアかごしまであった。岡本さんは、熊本や宮崎からも駆けつけたろう学校教諭やろう児の親ら56人を前に、「ろうの子どもたちが100%分かる手話で教育を」と訴えた。

 ろう者塾経営者らでつくる「For dear―F」企画が主催した。岡本さんの中学2年生の娘、翠(みどり)子さんはろう児で、就学時には普通学校を選んだ。コミュニケーションの手段は、相手の口の動きから言葉を読み取り、声を発して伝える聴覚口話法。すべてを理解できないいらだちから、いつも眉間(みけん)にしわを寄せていた。

 小学4年生の7月から手話教育のフリースクール「龍の子学園」(東京都)に通うようになり、翠子さんは変わった。100%理解できる手話を習得すると、「あいまいだった世界が、はっきりくっきり分かる」ようになり、自信が芽生えたのだ。半年後には翠子さんの希望で、ろう学校に転校。
翌年、岡本さんは親の会を設立した。

 「ろう学校では『聴者が多い社会に出て困らないように』と手話をタブー視する風潮がある」と岡本さん。授業を聴覚口話法で進めるため、内容を理解する前に、言葉が分からずにつまずく子どもが多いという。

 岡本さんは、ろう者にとっての手話を「聴者の日本語」、書き言葉を「聴者の外国語」に例えた上、「完全に理解できる母語があって初めて、外国語が身につく。手話を第1言語とし、書き言葉を第2言語とする『バイリンガル教育』の充実を」と訴えた。

 講演を聞いた指宿市西方、看護師、鳥越美香子さん(34)は3歳のろう児の母。「『手話やジェスチャーを使うと声が出なくなる』と言われ、避けていた。しかし、うまくコミュニケーションがとれず、最近はジェスチャーを使うようになった。通じることを喜びつつも、不安が残っていたが、
『手話でいこう』と決めました」と話した。

 主催者の一人、県立鹿児島聾(ろう)学校教諭、岩崎ゆみさん(31)は、県内にろう教育の情報が少ないことに触れ、「大勢の人が来てくれたが、それだけ情報を欲していたということなのでしょう」と話していた。
【高橋咲子 記者】(毎日新聞)


も ど る


ろう児をもつ親の会 「手話教育の機会が必要」
         鹿児島で講演会

「ろう児をもつ親の会『手話教育の機会が必要』鹿児島で講演会」
2003年3月30日 南日本新聞

 聴覚障害児教育について学ぶ講演会が29日、鹿児島であり全国ろう児をもつ親の会(東京都大田区)の岡本みどり代表が「手話と書記日本語を学ぶバイリンガル教育を保障すべきだ」と訴えた。

 障害者と健常者の交流の場をつくるため、昨年12月に発足した「For deaf−F プロジェクト」(沢田りえ代表、鹿児島市)が主催し、約60人が参加した。

 岡本さんは「日本のろう教育で用いる相手の口の動きで言葉を読みとる聴覚口話法は、会話を不完全にしか理解できないため、家族や友人とのコミュニケーションにも限界がある」と指摘。「手話で説明すれば、文法や計算式も理解できる。ろう児の母語として手話を学び、手話で教育する機会が必要」と強調した。

 また、手話を用いたバイリンガル教育でろう児の学力が飛躍的に伸びたスウェーデンの事例や、4年前に始まった東京都新宿区のろう児のフリースクール「龍の子学園」の紹介をした。

 都城市の主婦小川和子さん(29)は「聴覚障害がある5歳の長男と意志疎通するためにも、手話を一緒に学べる教室があったら通いたい」と話した。 

【社会部 小川麻希 記者】


も ど る

※無断転載禁止 Copyright(c)2000 全国ろう児をもつ親の会