Work At Home 1 - Cross Over -  
in Gallery Moguri rooM  2005/9/7〜9/12



* self report *



0.序

音源をアートの展覧会に出品するというのは、初めてではない。でも、今回のように僕がメインで、というのは全く初めてのことだった。それ故に、テーマの絞り込み・作曲・録音・編集…の全てに初めての要素が多かったし、プレッシャーも初めて感じた種類のものだった。

ただ単に、音をアートとして展示するのではなく、インスタレーションと融合させた空間演出としてのアートを作る・・・。
二人のアーティストがそれぞれ別々のものを作ってきて、それを一緒に展示するという形態を、コラボレーションと言えるかどうか、僕は知らない。ただ、僕は、そういう風にしたくなかった。アートと音楽の要素が融合した一つの作品を作りたいと思った。その方が、よりコラボレーションらしいと思ったし、自然なやり方だと思ったのである。



1.テーマ策定

そういうわけで、今回の制作では、テーマを絞り込む打ち合わせの段階から、コラボレーションを強く意識した展開になった。
ギャラリーめぐりなどをしていて常々感じていたのだが、よくある二人展のようなものでは、二人の持つ要素をただ提出しただけという類いのものがとても多い。それが悪いとは言わないが、今回に限ってはコラボと言う以上、そうしてしまっては、要素が融合せずに完全に分離してしまうので、テーマ設定の段階からして、どうしたものかと頭をひねった。

そこで、浮かんできた概念は、お互いの要素を cross over させる(交差させる)というものだった。
作るという行為は、それぞれの得意分野(アートと音楽)で行う、つまり自身のキャパシティを使って行うものである。でも、そのもととなるコンセプトは、必ずしも自分の中から出てきたものでなくともよいのではないか。 つまり、自分が想ったことを形にするのではなく、相手の「想」を、自分が作る。

ここから、いささか安易と言えなくもないが、お互いの「想」を抽出する作業に入った。
それは、お互いが、その人をその人だと特定し得る「印象」の断片達。
それを、言葉にして、紙に書き出していく。言葉は印象との完全な一致を見ないものであるが、そのような厳密さは敢えて捨象した。

紙に書き出された言葉は、例えば、以下のような他愛のないもの。

<CAPO>
爽やか・穏やか・まどろむ・マイペース・社交的・常温・
風景好き・和・遊び心・お茶目・理数系・コーヒー

<Wakame>
明るい・happy・楽天的・直球・楽しみ上手・猫っ毛・天然
・突然・陰・揺れ・何かしようと言う人・開いている

これらは、一つの作品の中で、どれがどこにという区別なく、様々な断片や要素、例えば、音の或る一つの小片として、或いは、インスタレーションを構成する一要素として、意図的に、或いは無作為に、文字通り cross over して組み入れられていったのである。


2.制作段階

音源を制作するにあたっては、ギターとウクレレと若干の効果音を使用した。

まずは、ギターで、大まかなアウトラインとなるメロディとコード進行を考える。
注意した点は、リフレインを作らないこと。ウクレレを入れるスペースを考えること。

次に、実際の録音作業。
まずは、ギターだけを一気に演奏してライン録音。
そして、別の日に、コンデンサーマイク(AKG C451B)を使用して、ウクレレを録音。
ウクレレは、スペースを埋めたり、象徴的なポイントを作ったりする用途で使用。
また、別の日に、蝉の声(アブラゼミとミンミンゼミ)と雨音・雑踏の音を収音しに出かけて、サンプリング。

そして、編集作業。
録音作業は、合計4日間で終了したが、編集作業の方は、搬入の前日までかかり、最後の方は徹夜になってしまった。
最も難しかったのは、ウクレレの加工。それは、凝ったプラモデルを作るようなもの。部品の一つ一つを磨いて整形し、質感を作り、違和感のないように組み込んでいく。
結局、完全に納得のいくものは出来なかったが、それは常のもの。
現在の自分の力と限られた時間の中で、出来上がったものが、成果物。
というわけで、何とか完成。


3.搬入・インスタレーション作成

実は、この過程も一筋縄ではいかなかったのだが、インスタレーションに関しては、僕の領域ではないのでここには書かない。
スピーカーは、或る方からお借りした、TIME DOMAINというメーカーのもので、小さいながらも素晴らしい音質のもの。いつか個人で購入したいと思っているほどなのだが、最初にセッティングしたときは、スピーカーを直に床に置いたため、低音が床材に響いてしまい、音の空気への伝わり方がいびつなものになってしまった。
そこで、高さ1mぐらいの台を持ってきて、その上にスピーカー載せたところ、実に素晴らしい音の広がり方を示してくれた。音が空気に馴染むとは、このことだと。


4.OPEN〜CLOSE


お客さんの反応としては、癒しの空間だと言う人が多かったのが、嬉しい。
もう一つのコンセプトとして、「リラックス」というのがあったからである。
立って感じる、座って感じる、寝転んで感じる・・・・・・。
感じ方は、身体の姿勢によっても変わってくるはず。
それは、能動性と受動性の違いにも似ている。
どちらが良いとか悪いとかいうものではないと思う。
ただ、その違いを実感できるような展示にしたかった。

知り合いから通りすがりの方まで、たくさんの人々に、目で耳で身体で味わって頂くことができ、本当に感謝している。
一人ではここまで出来なかったと思うし、これほどのお客さんを呼べなかったとも思う。
そして、在廊することにより、様々な出会いが生まれた。

最後に、この企画を持ち掛けてくれた久世わかめさんに、お礼を述べさせて頂きたい。

ありがとうございました!これからもよろしく!





〜 おまけ 〜

長いSelf Reportを呼んで頂き、ありがとうございます。
ご要望に基き、今回の展覧会の音源を収録したCD 「Cross Over」を販売しております。



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