映画の小窓5



 

「ファイト・クラブ」
(タイトルをクリックするとデータが見られます。)












 

ウガー!


ウガガー!


見終わったボクは、いきなりそんな奇声を発しそうになった。


もう、嬉しくて小踊りしそうな勢いである。


何か、こう、アツイものがこみ上げてきたのである。


それは、青春の情熱みたいな純情っぽい感情ではない。


まして、バレーボール部員(20歳童貞)が夕日をバックに、


熱血先輩部員(22歳童貞セッター)から、


「傷だらけなのはお前だけじゃない!」


とか言われて、背中をバシィッと叩かれたときに、


こみ上げてくる感情などとは程遠い。


ボクの胸にこみ上げてきたのは、


心の底に眠っていた無邪気な暴力性みたいな感情である。


子供が遊び友達にチョッカイをかけたくなるとか、


あたたた!と、北斗神拳でやっつけたくなるとか、


通行人にタックルしたくなるとか、


そんな衝動に似た感情である。


見る者は、そんな感情を胸に抱いてニヤリとしてしまう。


それこそが、この映画の狙いなのかもしれない。


 


この映画では、知性と野性が、


時に対置され、時に混在し、時に融合している。


IT企業に勤めるジャックは、クールなヤングエグゼクティヴ。


趣味に合ったシックなマンションに住み、


こだわり抜いて少しずつ揃えた家具やオーディオに囲まれ、


手に入れたステータスに胡座をかいて暮らしている。


生活に不満はないはずだが、プライベートはいつも独り、


そして、不眠症に悩まされる。


一方、何やら怪しげな仕事を持つタイラー(ブラピ)は、


ワイルドで自由、ステータスに捕われないナイスガイ。


廃屋に勝手に住みつき、医療廃棄物置場から盗んだゲル状蛋白質で、


石鹸を作って売ったりする。


勿論、夜はぐっすり眠りにつく。


この二人の関係については、敢えて伏せておくが、


二人の性格は、知性的と野性的、つまり正反対である。


この二人が、或る日突然、運命的な出遭いをし、


ひよんなことから、ファイトクラブ結成に至るのだが、


この先の成り行きは、実際にビデオを見て楽しんで欲しい。


 


とどのつまり、何が言いたいのかというと、


この映画が、挑発的問題作であるということである。


ファイトクラブとは、男達が集まってケンカをするクラブである。


普段は、真面目に働いている、ウェイターや、会社勤め、警察官、


といった、あらゆる階層の一般人が週に一度、


夜の地下室に集まり、素手で殴り合いに興じる。


モノに縛られ、社会に縛られ、カネに縛られた現代の物質文明に、


心のどこかで不満を感じていた男達が、


週に一度、思いきり殴り合うことで心を浄化する。


めちゃくちゃワイルドで刺激的なクラブ活動である。


しかも、


「身近な人間に殴られて来い。」


などという宿題が出たりする。


殴られるためには、相手を怒らせなければならない。


どうやって怒らせようかと考えるだけで、


もう、ゾクゾクするではないか。


背後からモンゴリアンチョップをかますもよし、


いきなり顔に水をぶっかけるもよし、


警察署の窓口でパラパラを踊り狂うもよし、


マジ話のコシを折りまくるもよし、


吸っているタバコを取り上げて踏み消すもよし。


幼き日のイタズラ心を呼び醒まされずにはいられない。


 


後半、ファイトクラブは規模が大きくなり、


破壊行動に出るようになるのだが、


このあたりからのお話も、敢えてしないことにする。


 


とにもかくにも、映画を見終わって、


後ろめたさを微妙に感じながらも、


ウガーと喜んでしまったのである。


スターバックスが破壊されるシーン、


傑作だったなぁ。


 


っと、これで終わろうと思ったのだが、


忘れちゃいけないことが一つ。


この映画、


何箇所かでサブリミナル映像があるらしいのである。


ボクが見つけたのは一つ。(あまり本気で探せなかった。)


始めのあたりで、ジャックが参加していたセミナー会場で、


一瞬チラッと見えた映像。


多分、ペプシマンだと思うんだけど。


何か、ヘンなことを刷り込まれてそうで怖かったりもする。


着メロに合わせてロボットダンスを踊ってしまうとか。


他にも見つけた方は、ぜひ御一報を。


 


 

 

End




執筆: 2001/01/16