映画の小窓 1

 

Knockin’ On Heaven’s Door
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この映画のポップセンスは、スゴイ。

ポップカルチャー好きには、たまらん映画だと思う。

ポップでシュールで、チープ。

2週間後の逃れられない死を前にして、人は何をするか?

という誰でも思いつきそうなテーマに、

「バカやって笑うしかないやん!」という答えを本気で返した、

そんな感じの映画である。

前にパトカー、後ろにギャング、という絶体絶命のシーン。

前か後ろにつっこんで玉砕するか、はたまた警察に投降するか、

その選択を切実に迫られるような雰囲気をつくっておいて、

主人公の二人は、横の麦畑に車で逃げ出す。

道なき麦穂の中をバカ笑いしながらドライブする二人の、

シュールさ、可笑しさ、哀しさ……。

なんちゅう、センス!

初めからデッドエンドが分かりきっているだけに、

浜辺のラストシーンに至っては、

絶妙!としか言いようがない。

あの名曲は、まさに奥の手だったのね。

先に逝った相棒の傍で独り座り込む男の後姿が、

強烈に印象に残った。

しかし、デッドエンドでも爽やかなのはナゼだろう。

これは、そのポップセンスゆえなのである。

ボクは、基本的にデッドエンドが嫌いである。

特に、死をレトリックの如く扱うフランス映画のデッドエンドは、

ヘドが出るほど嫌いである。

しかし、この作品のデッドエンドは嫌いではない。

むしろ、すがすがしいほどである。

ポップな撮り方をしているがゆえに、

悲壮感がほどよい程度に抑えられているからである。

もちろん、主人公がやるべきことをやった、という、

達成感、つまり脚本から来る効果もある。

それに、あのボブディランの名曲も忘れてはならない。

この新しいドイツ映画は、

感動モノみたいな宣伝のされ方をしているが、

ナンセンスすれすれのセンスを散りばめた、

ポップな映画だと、ボクは思う。

重い作品だと思って見ると、

この映画の良さは見えてこないんじゃないかと思う。

人間のふざけた部分を重いシチュエーションの中に放りこむ、

これは、勇気のいることだと思う。

相当なセンスが要求される。

失敗すれば、駄作にしかならないからである。

しかしまあ、この映画、面白くないとか、ガッカリしたとか、

完成度が低いとか言う人が、絶対にいると思う。

嗜好は人それぞれだから、とやかく言うつもりはないが、

遊び心を持って見れば……、ねえ。


執筆: 2000/11/18


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