◆今日のコラム◆

2005/05/05

「名物」


「名物に美味いものなし」という諺がある。
この諺のせいで、旅先で土産物屋に入るといつも、疑いの目で品々を見てしまう。
美味いかどうかは、食べてみないと分からないのである。
にもかかわらず「どうせ大したことないだろう」と思い、なかなか土産物を買うことはない。

確かに、美味いものもある。
が、どっちかと言えば「大したことないもの」の方が多い。
どうも、このあたりに「名物に美味いものなし」の問題点があるような気がする。
「美味いものなし」と断定するのが良くないのではないか。
こう無下に否定されては、土産物屋業界も日頃の努力が浮かばれないだろう。
せめて「美味いものもある」ぐらいにすれば良いような気がする。

「名物に美味いものもある」

……。
これはこれで、名物を上から見下した横柄な言い方のような気もする。
しかし、名物につまらないものが多いのも事実。
何かこじつけたような由来からネーミングされたお菓子で、中身は「もみじまんじゅう」「赤福」「ひよこ饅頭」「瓦煎餅」「栗饅頭」などメジャーな銘菓の類似品だというケースは珍しくない。
それから、特産物とは言えないほど、各地に売っている「トチ餅」系の饅頭…。
これらは食べてみても、不味くはない。
でも、特別美味いわけでもなく、感想を訊かれると「普通」と答えざるを得ない。
旅行に行って、普通っぽいものに対する購買意欲はあまり湧かない。

安直過ぎる品が売れないことには、土産物屋業界も薄々気づいていたようで、最近は、なかなか工夫が凝らされるようになっているように思う。
良し悪しはともかく、それなりに工夫の跡が見える品が増えているのである。
そんな中から、美味いものも出てきたし、探せば古くからの名物にも美味いものがある。
最近美味かったのは、東北の銘菓「カモメの玉子」。
最近でこそ代表的な人気商品となったが、あの味わいには、並々ならぬ試行錯誤の跡が見える。

というわけで、この稿を機会に、僕は名物に対する認識を改めたい。
とりあえず、暫定的に、

「名物に美味いものも結構ある」

ぐらいにしておく。




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