Minor Essay 「コケについて」 コケをコケにするな! と、ボクは言いたい。 それは、単にダジャレで終わるセリフではない。 コケとは苔、そう、あの「コケ」である。 水を貯えたコケの上には、草木の種が落ち、やがて森が生まれる。 太古の昔より最初に上陸し、植物の繁栄の基礎を築いた先駆者でありながら、 今なお、その役割を変えることなくひっそりと生きている。 コケは、長い悠久の時を、その緑の絨毯でもって地球を守ってきたのである。 その姿はまるで、使命を果たすために進化を放棄しているかのようだ…。 …おくゆかしい。 まったくもって、おくゆかしい。 くう〜っ、おくゆかしすぎる。 おくゆかしいぞー!(しつこい) コケ、偉大なり。 …と、コケに想いを馳せると興奮してしまうのだが、 それほど、コケはボクにとって魅力的である。 気がつくと、そこにコケがある。 家から駅までの道端、レンガの継ぎ目、樹木の根元、古い民家の軒…。 ふと足を止めて目を凝らせば、コケはあちこちに息づいている。 それも誰も気に留めないほど、ひっそりと息づいている。 鮮やかな黄緑色のもあれば、深緑や、文字通りモスグリーンのもある。 いろんなコケが、いろんな所に、いろんな佇まいで生えている。 よく見れば、この世はコケのパラダイスなのである。 絨毯のようなコケの群落は美しい。(コケ用語で『マット』とも呼ぶ) しかし、街に住んでいてコケの群落を見つけるのは難しい。 チョロっと無精ヒゲのように生えたコケは、群落とは言えず、美しくない。 やはり、コケの群落を見つけるには樹木の多い林や森に行かねばならない。 で、手っ取り早いのが、寺社仏閣の庭園である。 お寺の庭園は樹木が多く、手入れが行き届いているので、 コケの生育にはもってこいである。 勝手に生えているのもあれば、人の手で植えられたのもある。 コケの群落は、湿った緑の絨毯となって、心を癒してくれる。 ああ、なんて趣深いのだろう。 と、ため息さえ出てしまう。 まあ、一口にコケと言ってもいろんなコケがある。 スギゴケ、ハイゴケ、シノブゴケ、スナゴケ、ゼニゴケ、ギンゴケ…。 その数、数百種類というから決して侮れるものではない。 その中でもボクが最も好きなのが、ホソバオキナゴケである。 ホソバシラガゴケ、山苔、とも言う。 また、丸っこい群落を作ることがあるから、まんじゅう苔とも言う。 このホソバオキナゴケは、キメが細かく、色は鮮やかなグリーン。 群落が増えて絨毯状になると、ビロードのような滑らかな質感と、 大胆なうねりを見せる起伏、それでいて落ち着いた上品な佇まいを醸す…。 マニアにはたまらんコケである。 実際、コケ愛好家には、とっても人気がある。 しかし、こやつ、数が少ないのである。 乱獲されたこともあり、野生の群落を見つけることは難しくなった。 しかも、ホソバオキナゴケは、生育が非常に遅く、 一周り大きくなるのに2年はかかるというシロモノである。 美しいコケの代表がホソバオキナゴケならば、 醜いコケの代表は、ゼニゴケである。 ゼニゴケは汚らしい。 べた〜っとしていて、にゅろ〜っとしていて、色もカビのようで汚い。 そして、生命力が憎たらしいほど強い。 他の美しいコケを駆逐してしまうので、さしずめ、コケ界の侵略者というか、 エイリアンのような存在である。 コケマニアにとって、ゼニゴケは悪の回し者、ショッカーみたいなものである。 同じコケなのに、なぜこれほどまでにゼニゴケは醜く、嫌われるのか。 それは、コケ植物の中でも分類が違うからである。 俗にコケ植物と呼ばれる植物は、蘚苔類と呼ばれ、大きく分けて2種類ある。 一つは蘚(セン)類であり、もう一つは苔(タイ)類である。 蘚類は、茎と葉を持ったコケでスギゴケやヒノキゴケ、ホソバオキナゴケもそこに含まれる。 きれいなコケが多いのはこの蘚類である。 苔類は、茎と葉の区別がつかず、べた〜っとした仮根と、にゅろ〜っとした生殖器官(造卵器・造精器などの配偶子)だけで出来ているような見た目を持つ、あまりキレイとは言えない容姿のコケである。 苔類の代表は、ゼニゴケ、ジャゴケ、ヒメジャゴケなどである。もう、名前からして嫌われている感がある。 そう、蘚類と苔類は著しく、見た目が違うのである。 そりゃ、植物学者なら、蘚類と苔類に差別意識を持つこともないだろう。 科学者にとって、容姿の美醜は主観的な要素であって、何ら価値がないからである。 しかし、学術的視点でコケを見ないボクにとっては、 美醜こそが最重要ポイントである。 ゼニゴケが嫌われるのも然り、である。 まあ、そんなこんなで、いろいろと事情のあるコケ界であるが、 それはさておき、最近ボクは、ついに、 ついに! ついに! コケを入手した。(←実はコレが一番言いたい) 入手したのは、ホソバオキナゴケ、スナゴケ、ハイゴケ、シノブゴケの4種である。 いや、もう、常々、コケを飼いたいと思っていたのである。 コケを育てて、思う存分コケロマン(何それ)を堪能したかったのである。 コケのある生活・・・。 なんて、素晴らしい響きなのだろう。 想像するだけで、ワクワクしてくる。(←バカ?) イイんです! 人に後ろ指差されようと、理解を示されなくとも、 コケを愛するボクの気持ちは、 いささかも変わらない!(言い切ったり) もう一度、言う。 コケをコケにするな! …やはりダジャレが言いたいだけなのか。 End 執筆: 2003/12/29 |
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