「ヘンな夢」


 




夢の話など在りきたりなのだが、


最近ボクは、ヘンな夢をよく見る。


この種の夢は高校以来、あまり見なくなっていたのだが、


再び、最近になってよく見るようになったのである。


その夢を一言でいえば、


「寝ている夢」である。


夢の中で眠っているのである。


しかも、フトンの中で本格的に眠っているのである。


何て脳天気な夢なんだ、と言う方もいるかもしれない。


それについては、反論のしようがない。


事実、夢の中で眠るのは本当に気持ちがよいのである。


別に、最初からそんな夢を見ようと思っているのではない。


ほとんどの夢がそうであるように、


覚醒時の意思とは無関係にそんな夢を見てしまうのである。


この夢は、ただ単に眠っている状態を満喫する夢である。


夢の中で夢を見ているわけではない。


だから、悪夢でもなければ、楽しい夢でもない。


まあ、この上なく内容に乏しい夢と言えなくもない。


ボクの精神構造は、そんなに複雑ではないようである。


ただ、夢の中で寝ているのが気持ち良いというだけである。


 


そんな極楽トンボな夢なのだが、


時々、やっかいな実害をもたらしてくれることがある。


たまに、夢の中で寝ているボクが目を醒ますのである。


目を醒ましたボクは、完全に起きたと思い込んでいる。


それが夢の中だということに全く気づいていない。


ボクは低血圧なので、朝はいつも頭がボ〜ッとしている。


しかし、夢の中で目覚めたボクは、すこぶる快調である。


シャキッとして、てきぱきと、洗顔、朝食、着替えを済ませ、


そのあと、コーヒーを入れたりして、


「やっぱ、早起きすると、時間に余裕が持てるよなぁ。」


などと、ほざいたりして、いたくゴキゲンである。


うまくいき過ぎな朝に、何の疑問も感じていない。


全部、夢の中の出来事だというのに。


しかし、いつかは本当の目覚めがやって来る。


そして、そのときは決まって、どえらい時間である。


起きなければいけない時間を、30分ぐらいは過ぎている。


夢から醒めたボクは、慌てふためいて家中をドタバタする。


あの快適なひとときが夢だったことには、イヤでも気づく。


そして、泣きそうな顔をして叫ぶ。


「なんっちゅう、夢や!!」


 


しかし、これは、まだマシなケースである。


かつて、このテの夢が凶悪な猛威をふるったことがあった。


あれは、高校二年生の頃のことである。


体育祭当日の朝5時か6時あたりの時間帯だったかと思う。


フトンの中でボクは、例の「寝ている夢」を見ていた。


例のごとく、気持ちよく眠っている。


とそのとき、突然、電話が鳴り響いたのである。


起きて電話に出てみると、相手は同級生のSだった。


 


S :「今日の体育祭は、中止やで。」


ボク:「え? なんで?」


S :「学校のグラウンドで、不発弾が見つかったらしい。」


 


このあたりから、ボクの記憶は非常に曖昧になっている。


今までの文脈から推察できると思うが、


この体育祭中止を告げる電話は、夢だったのである。


その後、すぐにボクは目を覚ましたらしい。


そして、プロセスをよく憶えていないのだが、


「体育祭は中止だ」と、連絡網で回してしまったのである。


不発弾処理をするから体育祭は中止だ、と。


ボクは、寝ボケていたのである。


その後、それがデマだということがすぐにバレて、


デマを流したのがボクだということも、すぐにバレた。


そして、ホームルームの時間、クラスの皆に謝罪したのである。


「夢の中で電話がかかってきて……(中略)……ごめんなさい。」


本当に不幸中の幸いであるが、


ボクはこのアホな申し開きで、クラスの許しを得ることができた。


ボクがそういう悪意のあるイタズラをする奴ではないことが、


皆の共通の認識だったからである。


当時のボクの「寝ボケ癖」がかなり有名だったこともあるが。


とはいえ、ボクはその後、生活指導部に呼び出され、


さんざん、怒られたのである。


教師達曰く、


「信じられんことをするなぁ、お前は!」


「今度という今度は、アホ過ぎて………(絶句)」


「そんなことでは、社会で生きて行かれへんぞ!」


「また、お前か!人騒がせなやっちゃ!」


などなど。


当時のボクは、彼らからマークされる存在だった。


アホなトラブルを起こす奴として。


ともあれ、ボクは、彼らにこってり絞られた挙句、


高校生にもなって反省文まで書かされて、


げんなりした顔で生活指導部室を退出したのである。


そして、絞り出すように一言。


「なんっちゅう、夢や!!」


若いボクに、反省の色は少なかった。


 


 

 

End



執筆: 2001/01/21

TOPPAGEへ    エッセイのメニューへ    BBS