◆今日のコラム◆

2005/04/18

「鼻毛」


毛の類いには不要論がつきまとうものだが、
その中でも、鼻毛はその代表格ではないだろうか。
一本だけヒョロッと伸びた鼻毛。
複数本がボーボーに伸びた鼻毛。
本人だけでなく、気づいた周りの人にまで波風を立ててしまう。
かなり厄介な存在だと言える。

何故、こうまで鼻毛が問題なのか。
おそらく、鼻毛が顔の美観を著しく損ねるからである。
しかし、どれほど2枚目でも、鼻毛一本でスットコドッコイの3枚目に凋落するというのは、少し納得がいかない気もする。
場合によっては、鼻毛一本が人生を狂わせることだってあるかもしれない。
いや、鼻毛一本で戦争が起こることさえあるかもしれない。(あるか!)
例えば、ヒゲや眉毛が濃いとか、まつ毛が長いからといって、スットコドッコイに見えることはそうない。ギャランドゥにせよ、見えなければ何ということはない。
しかし、鼻毛は根本的に持っている力が違う。
おそらくは、普段、鼻の穴という外から見えない場所に生息しているから、露出した時にインパクトを伴ってしまうのだと思う。
本当のところは分からないが、多くの人は、本来、鼻毛は鼻腔の内部でひっそりと慎ましく暮らすものだという思い込みがある。
そういうものとして、人々の顔全体のイメージは安定している。
ところが、時々ハジケた鼻毛の反乱分子が外界に脱走してしまうために、顔の秩序が崩壊てしまう。
これは、顔面にとって由々しきことであり、石油ショックならぬ「鼻毛ショック」とでも言うべき事態である。
この鼻毛ショックは、鼻毛価格の高騰をもたらし、鼻毛関連企業に大打撃を与え、消費者は鼻毛切りバサミを買いにスーパーに殺到し……。
いや、まて。鼻毛ショックはおかしい。反乱分子が脱走するのだから、「鼻毛革命」と呼ぶ方がふさわしい。鼻毛革命によって、鼻毛達は顔面における市民権を得て、自由・平等・博愛の精神に基づいた新しい民主主義の秩序を築くのである。その暁に、鼻毛達は、
誰はばかることなく大手を振って、大挙して顔面上に進出し……という夢も儚く、人の手によって反乱分子達は、無惨にも切り取られてしまう。時には、狡猾な引き抜きに合うこともある。人の世は、保守と革新のせめぎあいの歴史なのである……。
……妄想終了。

ともあれ、この顔面における秩序崩壊が、人の心にもの凄い違和感を与えるのだと思う。



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