◆今日のコラム◆

2005/04/20

「ハチャトリアン」


よく、意味とは別に、その語感だけで笑ってしまう言葉や人名がある。
僕にとっては、この「ハチャトリアン」がその一つである。
ハチャトリアンといえば、「剣の舞」で有名なロシアの作曲家である。
しかし、ハチャトリアンと聞くと、僕は「ハチャメチャ」という言葉を連想してしまい、そこからなぜか、白いタイツに赤いちょうちんブルマー、ハジケた髪型に茶色い口髭のロシア人のおっさんが、剣を振り回して踊り狂っている様子が、頭に浮かんでしまう。
別に、正当な根拠はない。
ただ、ハチャトリアンの「ハチャ」と「剣の舞」が頭の中でくっついて、そこに余計な要素が入り込んだだけなのである。
とにかく、僕にとってのハチャトリアンは、剣を振り回すハジケたおっさんなのである。
「剣の舞」といえば、いつだったか、カナダのフィギュアスケート選手ストイコが、この曲にのせて華麗な滑りを披露していたのを鮮烈に覚えている。
ストイコという選手は、背が低く手足が短いので、フィギュアスケーター向きの体型ではないのだが、その鍛え上げた強靭な肉体と華麗なステップワークで、誰も真似できないようなパフォーマンスを実現していた。
「剣の舞」の矢継ぎ早に剣を突き込んでいくような旋律に合わせて、彼はコロコロとリンク上を転がるように速く細かいステップを見せてくれた。
それは、僕の思い描くハチャトリアン像にかなり近くて、かなりハジケたものだったのだが、いつも僅差で、ロシアの超ハンサムな貴公子みたいな選手に優勝をさらわれてしまうのだった。

成績の面ではハジケきれない、そんなストイコを僕は好きだった。

胸を張れ!お前こそが、真のハチャトリアンだ!

と、何度心の中で叫んだことか。
こうなってくると、ハチャトリアンという言葉が、チャンピオンみたいな意味を帯びてきさえし始める。真のチャンピオン、真のハチャトリアン、世界ヘビー級ハチャトリアン…。

ともあれ、実際のハチャトリアンがどんな人だったのか、僕は一切知らない。





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