映画の小窓12




ファイナル・ファンタジー







2001年/米/106分
監   督 坂口博信
製   作 坂口博信/会田純/クリス・リー
原   作 坂口博信
脚   本 アル・ライナー
撮   影 ジェフ・ヴィンター
音   楽 エリオット・ゴールデンサル
主 題 歌 ラルク・アン・シエル「Spirit dreams inside」
出   演 ミン・ナ/アレック・ボールドウィン/スティーブ・ブシェミ /ヴィング・レイムス/ドナルド・サザーランド/ジェームズ・ウッズ

 

 


この映画の印象を敢えて一言で表すと、

「器用貧乏」

という何とも乱暴かつ失礼な表現になる。

ただし、CGとヴォイスアクターは素晴らしかった。

製作陣に対しては、尊敬の念すら抱いた。

人物の肌のシミまでも表現する精密の極致をゆくディテイル、

滑らかで違和感のないモーションキャプチャー技術、

そして、キャラに命を吹き込んだハリウッド俳優陣のヴォイス。

 

よくぞ、辿り着いた! フルCG映画に挑みし、獅子達よ。

 

と、若者を賛える長老のようなセリフが出そうになるが、

実際、プログラマーは、気の遠くなるような苦難の連続だったろうなと思う。

畑は違うが、コンピュータに関わる者として頭が下がる思いである。

 

ここまで読んで、読者の方々は、ある種の憤りを覚えるかもしれない。

そこまでホメ倒すくせに、「器用貧乏」とはこれ如何に!

と。

そのワケは、単純に興行収入がショボかったからである。

2001年の全米映画興行収入ランキング(ttp://yarusou.com/movrank.htm)では、

何と、73位である。

他のCGをウリにした作品を見てみると、

 

シュレック 2位

ハムナプトラ2 5位

ジュラシックパーク3 8位

グリーンデスティニー 14位

 

と言ったところである。

 

大きく離されている。

 

大敗である。

ヒドイわ! そんなのって、あんまりよ!

である。

全くと言っていいほど報われていない。(合掌)

 

このことについては、色々な意見があるとは思う。

「つまんないんだから、当たり前だ!」

「あんなのは、オタク映画だ!」

とか……。

 

そう、この映画、お話がつまらないのである。

ファイナルファンタジーというカテゴリーが持つ、悪い面が出ちゃったのかな、

と思ったほどである。

「大衆的につまらない」のは、致命的なのである。

例えば、ハリウッドには、話のつまらんヒット作も掃いて捨てるほどある。

けれども、ヒットするためのウリになる要素をきちんと押さえていれば、

ショボいストーリーでも、そこそこはヒットするのである。

ビジュアル、サウンド、キャスト、etc……。

そのうちの一つでも、大衆を捕えるものであれば、ヒットする。

そういうのが、「大衆的に面白い」映画である。

 

ところが、この「ファイナルファンタジー」は、

大衆的にことごとくスベってしまった。

それどころか、マニアックな人達の間にも様々な否定的意見が湧き起こった。

「リアルじゃないじゃん。」

「ストーリー、ダメだよ。」

「設定、軽いのか重いのかわからん。」

「お金の無駄使いをリアルCGで表現した傑作だ。」

「8つの精神体を集めれば地球が救われる?ガイア理論?凡人では到達できない

 スピリチュアルな設定だよ。」

「悪の将軍のウッカリぶりは、脱力モノだよ。」

「ストーリーは、『ナウシカ』の出来損ないだ。」

「これなら、FF8のベタシナリオの方が、まだマシだ。」

みたいな感じの意見があったが、

結局は、大筋でその通りと言わざるを得ない。

 

ダメか良いかなどと言い出せば、主観の問題にしかならないのだが、

どういう主観で見たにせよ、バランスの悪さが浮き出てしまうのだと思う。

キャラの絡み方や設定に奥深さがある様に見えて薄いのも事実である。

 

と、叩くほどにホコリの出る「ファイナルファンタジー」であるが、

ここで、敢えて、ボクの個人的な感想を言わせてもらおう。

 

ボクは、この映画、好きである。

「頑張ったし、ディテイルに味わいがあるし、でも、ウケない。」

みたいな、マイナー性が元々好きなのである。

160億もかけてこだわりまくって作って、コケる。

「勝算なき挑戦」と言えば、格好がいいが、

「男って馬鹿だよなぁ。」とも思わせてくれた。

 

そういう「馬鹿さ加減」がボクは大好きだし、

やはり、冒頭で述べたような、ある種のリスペクトを抱いているのである。

 

でも、ホント、絵はキレイだった……。

ラストとか、特に。


END




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