| 「自分が死ぬ夢」 物心ついた頃から、いやつく前からか、 ボクは様々な悪夢を見てきた。 まあ、誰しも悪夢を見ることはあるだろうから、 何も特別なことではないとは思う。 夢は、実に不思議なものである。 幸せな夢もあれば、悪夢もあり、エロティックな夢、奇怪な夢など、 覚醒時には予想のつかない内容でありながら、 夢の中では、起こっていることに疑いを持たず、 さも必然のように感じてしまう。 夢とは、心理状態や潜在意識を映し出す鏡のようなものなのだろうか。 現実の世界で不安が多ければ、それだけ悪夢もよく見るということなのだろうか。 心理学を勉強したわけではないので、そのへんの真偽のほどは分からないが、 とにかく、夢が人の意識の中の何かを反映したものだということは言えそうである。 人の記憶情報は、睡眠中に脳内で整理されるというから、 案外、夢もそういうプロセスの一端を担っているのかもしれない。 それはさておき、悪夢に話を戻すと、 最近、最凶最悪の悪夢を見た。 「自分が死ぬ夢」である。 いや、もっと正確に言うと、「自分が死ぬ瞬間の夢」である。 今までに、「熊に襲われる夢」や「包丁を持った老婆に追われる夢」など、 幾多の怖い夢を見てきたが、これほど恐ろしい夢は見たことがなかった。 今、思い出すと、その内容の脈絡のなさに辟易してしまうのだが、 大体の内容はこうである。 舞台は、何故か宇宙船。 それもホワイトベースとヤマトを混ぜ合わせたような巨大な宇宙船である。 何故かボクはその船のクルーで、システムのオペレーターのような仕事をしている。 同僚のクルー達は、何故か、現実世界でのボクの友人や知人である。 それほど仲の良い間柄でない知人が多いのが救いかもしれない。 場面は、非常に切迫した局面からいきなり始まる。 宇宙を航行する我が艦は、敵の攻撃を受けている。 多勢に無勢なので、我が艦は、あちこちで次々と被弾していく。 「右舷後部、サブオービター破損!切り離します!」 「左舷前部、小砲基部被弾!17番隔壁でエリアを遮断します!」 みたいな、クルー達の報告が怒号となって飛び交う中、 ボクも必死で、艦内の破損状況を把握する作業に追われている。 そうこうしている内に、ボクのいる管制本部の近くに敵のレーザーが着弾する。 慌ててボクは、手元の端末を使って近くの隔壁を下ろしたのだが、 それと同時に、今度は別の方向からレーザーを受け、近くに被弾する。 この時点で、はっきり言って絶望的である。 ここからが、さすが夢というか、強引な展開になる。 何を血迷ったか、一人の同僚が管制本部と宇宙空間を隔てるドアを開けたのである。 宇宙服も着ていないボクらの視界に、宇宙空間がダイレクトにさらされる。 この時点では、まだ何か防御システムが働いているのか、誰も死ななかった。 が、管制本部のシステムは次々と制御不能になり、このまま敵の攻撃を受け続ければ、 全滅は必至だと誰の脳裏にも浮かぶ状況である。 もう、全員パニック状態である。 銃で自分の頭を撃って死ぬ者や、ドアの向こうの宇宙空間へ身を躍らせる者など、 次々と同僚達が死んでいく中、ボクはどうしていいか分からず、 壁にもたれかかって震えている。 やがて、本部内の空間を宇宙から守る防御システムも、効きが薄くなってきて、 徐々に、自分の肌が焼け付くような感覚が起こってくる。 ああ、ついにこのまま死ぬんだな。 死にたくない! と、思う内に、頭がぼ〜っとしてきて、いよいよ意識が途切れる、 自分の命が潰えようというその瞬間、 まさに「死ぬ」という現象の起こる瞬間、 目が覚めたのである。 目覚めたとき、ボクはこの「死ぬ瞬間」の感覚をはっきり覚えていた。 よく、死後の世界はあるのか、とか、死んだ後、自分の葬式を上から見ている、 というような話があるが、ボクは夢の中で死ぬ寸前、 はっきり、「死んだら終わり」だと思った。 意識は消滅する。 その先はないと。 極楽浄土、黄泉の国といった淡い期待など跡形もなく吹っ飛ばす感覚だったのだ。 しかし、その感覚は、夢の中では怖くなかったのである。 意識が薄らいでいく中で、死にたくないという思いながらも、 「死と同時に意識は消滅して、何を思うこともできなくなる」と感じるだけで、 不思議とそこに恐怖も苦痛もなかったのである。 それでは、どこで恐怖を感じたのかと言うと、 目が覚めた直後である。 動悸が起こり、冷や汗が流れるほど、恐ろしくなったのである。 おそらく、夢の中では、意識が遠くなっていく状態だったので、 恐怖感があまりなかったのかもしれない。 それが、目覚めて、意識がはっきりしている状態で、 死ぬ寸前に「死んだら何もない」を許諾してしまう感覚を思い出したせいで、 この世のどんなホラー映画よりも恐ろしい気分になったのだと思う。 その時の恐怖感が、今も続いているのかといえば、そうでもない。 ま、普段、「死とは何か」なんて問題にしていない、 いや問題にしないようにしているからである。 人間、生きている時間が大切なわけで、やりたいことがある内は、 「死」そのものについて問題にすることは優先順位から外れるのである。 ともあれ、何故そんな夢を見たのかについては、よく分からない。 それなりに分析することもできそうだが、 きっとそれがどうしたと言うことになりそうなので、 放っておくことにする。 それにしても、「自分が死ぬ瞬間の夢」とは奇妙な夢である。 初めてのことだったし、これからそう見るとも思えないので、 書き記しておこうというぐらいの気持ちでこの稿を書いている。 変な夢を見たらそのことを書いてみる、というのも一興である。 END 執筆: 2003/05/18 |
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